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Brand Strategy journal ブランド戦略通信

Webマスターに聞く!

シリーズ2 第1回:キリンビール株式会社

話し手
キリンビール株式会社酒類営業本部
営業開発部ネットコミュニケーション担当

永田 薫氏
本社1Fショールーム

本社1Fショールーム

最大の目玉は“CSR”

2005年8月、キリンビールの企業情報サイトは03年以来のリニューアルを断行した(【図1】)。

「社会から信頼される企業を目指して、CSR関連情報を企業情報としてまとめ、情報の見直し、整理、拡充を図り、露出を強化した」と、Webサイト全体の管理を担う、キリンビール営業開発部ネットコミュニケーション担当の永田薫氏は説明する。

キリンビールWebサイトの歩み

【表1】キリンビールWebサイトの歩み

キリンビールでは、05年3月に、キリングループのCSRを統括・推進するとともに、全てのステークホルダーとの双方向コミュニケーションを一元化して強化していくためにCSR・コミュニケーション本部を発足させる組織改変を実施(【表1】)。企業情報サイトのコンテンツホルダーは、この新組織となった。その結果、CSR情報を統合的に発信できる体制が整い、早速具現化したわけだ。

コミュニケーション重視型の環境情報

CSR情報の中でも特に注力するのが、「環境への取り組み」である(【図2】)。キリンビールが取り組む様々な環境保全活動を「廃棄物ゼロ」や「水の恵みを守る活動」など、項目に分けて紹介。「しかも、ただ、ステートメント的に訴求するのではなく、お客様とのコミュニケーションを重視する」(永田氏)。例えば、同社の環境活動のシンボルキャラクターであるエコジローを活用したクイズや絵本、ゲーム、ムービーなどを用意。お客様は家族で楽しみながら環境への取り組みを理解できる。

05年6月には、「水の恵みを守る活動」の一環で「クリック募金」を導入。画面上のエコジローをクリックすると1回に付き1円をキリンビールが水源保全活動を進める(社)国土緑化推進機構に寄付する仕組みだ。これは、サイトを通じてキリンビールの環境保全への活動を知り、共感したお客様のクリックで積み上がった募金で実際にビールづくりにとって大切な水源を保全できる、というお客様と企業、関係団体が一体となった取り組みである。

今回の調査では、キリンビールの「環境情報」を「良いコンテンツ」と評価したユーザーは、全体の28.3%と、平均の12.4%の倍以上に上り、競合他社を抑え業界トップ。力を入れているコンテンツの評価が高いという理想的な結果を得ている。

酒類事業主管で地域密着型サイトを実現

Webサイト全体を見渡すと、さらにもう一つの特徴が浮かび上がる。地域密着型の情報が非常に充実している点である。まず、全体のトップページで、「新着情報」、「ニュースリリース」とともに、「お近くのキリン情報」という地域情報のコンテンツが前面に押し出されている(【図3】)。扱いの大きさは競合他社では群を抜いており、このコンテンツに対する力の入れようや自信のほどがうかがえる。さらに、内容を見ると、都道府県ごとにイベントや飲食店情報、タウン情報が並ぶ。地域によって情報量に差はあるが、大都市圏を中心に情報の充実ぶりには目を見張るものがある。また地域ごとにエリア情報を盛り込んだメールマガジンを定期的に配信するなど、情報発信力は頭一つ抜けている。

2000年にWebサイトの主管業務は、広報部から酒類事業の中に発足した社内横断的な組織「eビジネス推進プロジェクト」に移管されたが、これによって酒類事業を中心に全社一丸となってWebサイト活用を推進する体制が整った。さらに04年1月に同プロジェクトから営業開発部に移管。Webサイトは地域ごとの需要を喚起させる営業支援ツールとして位置付けられることがより鮮明になった。酒類事業という同社の中核事業でWebサイト活用に積極的に取り組んだ意義は大きく、地域に密着した情報発信力を支える大きな背景となっている。

各地域の営業組織は地元の消費者に有用な情報を次々とアップする。アクセスした消費者は、地域に根ざした高付加価値情報に満足しキリンビールへのロイヤルティを高め、リピーターとして何度も利用するようになる。こうして営業とWebサイトを連動させてのファンの拡大に、キリンビールは一定の成功を収めている。「中核事業の下でスピードを上げてネットに取り組めたことが大きい。営業と連携した取り組みが軌道に乗るまでには苦労したが、ようやく実を結び始めている」と、永田氏も感慨深げだ。

キリングループのブランド価値の向上に向けて

今後の課題は、ネットを通じたキリングループのブランド価値の向上である。

取り組み課題の一つとして、Webサイト全体における情報構造の見直しを永田氏は挙げる。キリンビールは、スポンサーを務めるサッカー日本代表の応援サイト「KIRIN WORLD CHALLENGE 2006」や、ビールの専門知識が学べる「キリンビール大学」などのキラーコンテンツを持つ。この吸引力のあるコンテンツから、どのように他のコンテンツに誘導するか、その導線の確保が課題だ。

さらに、キリンビバレッジなどグループ企業も含めた情報構造の見直しも課題として挙げる。「もう直近のリニューアルから3年も経つ。企業ブランド価値の向上、グループシナジーの創出、各事業との連携強化を検討し、最適なリニューアルの方向性を探りたい」(永田氏)。

キリンビールのWebサイト構築のポイント
  • 企業情報サイトはCSRを目玉に情報発信
  • 特に「環境への取り組み」を積極的に訴求
  • 環境情報はコミュニケーション重視で発信
  • Webサイトを営業支援ツールと位置付け地域密着型情報発信を実現
  • 営業とWebサイトの連動で地域のファン拡大に成功
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