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Brand Strategy journal ブランド戦略通信

ゼロからわかるウェブブランディング

第4回:ウェブブランディングにおける「ブランド認知」-実証編-

ブランド論における「ブランド認知」の測定方法

(1)再認と再生

認知の度合いには再認と再生がある。

再認とは、ブランド名を示したらそのブランドを知っていると認識できる状態である。これに対して再生とは、製品カテゴリーなどのヒントを与えることによってブランド名を自力で思い出すことができる状態である。もちろん後者の方がハードルが高い。

再認を表す指標は「知っている人の割合」によって得られる「再認率(助成知名率)」である。一方、再生を表す指標は「当該ブランドを思い出せた人の割合」によって得られる「再生率(純粋知名率)」である。

(2)グレーブヤードモデル

【図1】グレーブヤードモデル

【図1】グレーブヤードモデル

一般に、再生率は購買意欲と結びつきが強い。多くのブランドで再認率と再生率が右上がりの関係にある中で、もし相対的に再生率が高いブランドがあれば、そのブランドには強い購入意向を持った層がいるということを示唆している。逆に、再認率は高いが再生率は低い、つまり知っている人はそこそこいるが思い出してもらえないブランドは購入意向率に結びつきにくい。こうしたブランドは認知の墓場(グレーブヤード)にいるといわれることがある(図1)。

(3)測定上の問題

認知度を知るうえで有力な方法として情報の受け手に対するアンケート調査がある。そもそもなぜ認知度を調べるかというと、ブランド認知の現状を把握するということもあるが、広告効果を知りたいということが動機として大きい。

しかし、相当な費用をかけて大規模に行わない限り、広告と認知度のひもづけが困難であるという難点がある。

情報の受け手を調査する代わりに、情報の送り手側で取れる指標で代用できれば簡便である。

マスメディアの場合には視聴率、発行部数などの指標を用いる。広告料金はこうした指標によって決まっているから、これと認知度が比例関係にあると見なすことができれば費用に見合った効果を推定してよい。ところが、接触度と認知度が一直線の右肩上がりの関係になるという保証はない。

本当に認知度が高まったかどうかは最終的には情報の受け手側のデータを取らなければならない。

ウェブブランディングにおける方法

ウエブブランディングで用いられるアクセスログは情報の送り手側の指標という点ではマスメディアの視聴率や発行部数と本質的な違いはない。

ただし、テレビの視聴率はサンプル調査であるがアクセスログは全数調査だから精度は高い。また、アクセスログ解析は行動解析が可能なため、より本来の指標に迫る分析が可能である。

たとえば、アクセスの時期が早く、発売前に製品ページを見た人ならウェブで製品認知したと推定できる。検索語に一般キーワードではなく自社製品のブランド名が多く用いられていれば、その製品は認知度とりわけ再生率が高いということがわかる。

企業ウェブサイトとコーポレートブランド

企業ウェブサイトはコーポレートブランドの下に運営されている。一方、日々の収益に責任を持つ事業部門では、その事業部が持つプロダクトブランドのブランディングに注力することが多い。かつて、プロダクトブランドの上にかかるコーポレートブランドの傘は、プロダクトの品質を保証するエンドーサー(保証付き)ブランドとしての役割が中心だった。しかし、今はユーザーが往来する動線となって、リアルな存在感を持っている。これがプロダクトブランドのハブとして、クロスメディアを絡めてプロダクトブランドの認知を短期間に高めることができるようになりつつある。ただし、それがうまく機能するためには、コーポレートサイトが良好な状態を維持していることが前提となっている。ウェブブランディングの重要性のアップとともに、コーポレートブランドへの投資の重要性が増していると考えられる。

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