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Brand Strategy journal ブランド戦略通信

実践!ブランド戦略

第34回:下位企業がブランド力で優位に立つには

Q 当社は規模の大きなトップ企業にブランド力で及びません。対抗するにはどのような戦略があるでしょう。
A イノベーションによって新たな市場を創造し、その中でオンリーワンとなることができれば理想的です。

トップ企業にあらゆる商品ラインナップで対抗しようとしても、どうしても経営資源の差がものを言って、結果としてどの商品ラインでも負けてしまう、ということはしばしば起きます。例えばかつての日産は、ことごとくトヨタと競合するような車を出していたため、どれも劣勢に立たされていたように思います。

このように、既存の市場でトップを追撃しようとすると大きな困難に直面しますが、技術革新などで新しい市場を自ら切り開いた場合には、たとえその分野がニッチであってもその市場に限っては高いブランド力を確立することができます。

この点で、ソニーはまさにお手本となるべき企業であったと思います。テープレコーダーに始まり、ウオークマンやAIBOなど、業界に先駆けて世の中に送り出した製品群は新しいライフスタイル、新しい市場を生み出しました。また、同社は社内公募制、米国でのADRの発行、執行役員制度など、製品分野にとどまらず、マネジメントの分野でも新しい試みを他社に先駆けて行ってきました。その結果、(今はともかくかつては)ソニーよりも規模の大きな企業がひしめくエレクトロニクス業界にあって、世界に冠たる素晴らしいブランドイメージを築いてきました。

もっとも、最近の同社はデジタルオーディオ分野でアップルコンピュータのiPodの後塵を拝しています。この新しい市場はアップルが他社に先んじて開拓し、その結果iPodが圧倒的なNo1ブランドとなっています。すでに他社が築いてしまった市場でシェアを逆転すべく多くの経営資源を投入して逆転を狙う行動は、かつてのソニーらしくない普通の大企業という印象を受けます。今やソニーはすっかりアップルにお株を奪われてしまったようですが、再び革新的な商品で世の中の新しいライフスタイルを提案してくれることを期待したいと思います。

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