話し手 |
松下電器産業 ナショナルマーケティング本部コミュニケーショングループWEBチーム チームリーダー 恩地善之助氏 |
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松下電器産業 ナショナルマーケティング本部コミュニケーショングループ WEBチーム 主事) 細江栄次氏 |
ソフト重視からハード重視へ
【図1】リニューアル前のナショナルトップページ
【図2】現在のナショナルトップページ
2004年10月、ナショナルのWebサイトのトップページが大きく変貌した。2001年6月から4年4ヶ月続けてきた「Nタウン」を前面に出したデザインを改め、商品のプロモーションを重視したデザインにモデルチェンジしたのだ。 NタウンはWeb上の仮想の街で、それを描いたイラストMAPの上に、家電を使った料理法を教える「お料理スタジオ」、掃除や洗濯などの家事のノウハウを伝授する「家事カレッジ」などのコンテンツを建物のアイコンとともに配置。そうした商品周りの“生活情報”を主に提供し、それがナショナルサイトの「顔」の役目を長年にわたり果たしてきた。しかし、新トップページでは、ページ中央にCMや広告のイメージを活用した商品の告知欄を大きく設け、その周辺も商品のビジュアルで埋めて、Nタウンはその中の一コンテンツとしてひとつ下の階層に繰り下げた。いわば、「ソフト重視路線」から「ハード重視路線」に見せ方をガラリと変えたのだ。 この大胆なリニューアルは、あるひとつの調査結果が発端となっている。それは、リニューアルから遡ること8ヶ月の2月に実施したナショナルサイトに関するユーザー調査だ。その調査において、トップページを訪れたユーザーの行動を追ってみると、ページの左隅に配置された、トップページへのジャンプを連想させる“National”というロゴをクリックするパターンが数多く見られた。これは、このページがトップページとして認識されていないことの表れ。「やはり、お客様は商品情報を求めてナショナルサイトに来るわけで、そこで、Nタウンのような体裁だと、違和感を覚えるケースが少なくない。我々としては、従来どうりソフト情報をメインコンテンツとして訴求していきたかった。しかしお客様にとっては、ハードを前面に出したほうが分かりやすいと判断し、リニューアルに踏み切った」と、ナショナルマーケティング本部コミュニケーショングループWEBチーム主事の細江栄次氏は経緯を吐露する。 そして、ページの見せ方の変更に引き続き、2005年4月には中身のリニューアルにも着手した。商品関連では、前年4月に連結子会社化した松下電工のコンテンツをトップページに配置。さらに、松下電工の商品が仲間入りしたこともあり、商品ジャンルだけで120種類にも及んでいる幅広い商品群の中から目当てのものを見つけやすいよう、検索機能も強化。商品一覧、50音順商品一覧、商品名を入力しての検索に加え、新発売の商品を月別にまとめた新商品一覧も用意するなど、実に手厚くサポートしている。
コミュニティ機能を大幅拡充
【図3】MY Nタウン
一方で、商品情報以外にも大きく手を加えた部分がある。それが、コミュニティ関連コンテンツである。ナショナルサイトでは、2002年12月にコミュニティコンテンツ「会員の広場」をスタートさせるなど、早くから双方向マーケティングに取り組んできているが、この4月からは、名称も新たに「MY Nタウン」として大幅に拡充。気軽に楽しめるものから、多少時間をかけるものまで、バラエティに富んだコンテンツを揃え、ユーザー登録を済ませた会員約4万人の好感度アップにつなげている。
【図4】おしゃべり広場
追加したコンテンツのひとつは、「おしゃべり広場」。ユーザーがテーマをリクエストしたり、お題に対して投稿するいわゆる掲示板である。テーマは寄せられたものの中からナショナル側が選別・設定し、それに対する投稿も誹謗中傷などを排除するために一度チェックして公表できるものだけを掲載している。「スタート当初は、家電関連のテーマで果たしてリクエストがきたり、投稿があるのか心配だったが、いざフタを開けてみると、意外と多く、驚いている」(ナショナルマーケティング本部コミュニケーショングループWEBチームの恩地善之助チームリーダー)と、まずは上々の立ち上がりといった様子だ。ユーザーは、投稿に対してその場で3段階評価することもでき、その投票結果は人気ランキングにリアルタイムで反映される。こうしたちょっとした仕掛けも、参加意識、ライブ感を高める小道具として有効に機能している。 もうひとつは、「MY家電メモ」。自分が購入した家電を登録すると、その商品の取扱説明書や消耗品をチェックできるほか、購入日や購入店舗、購入した理由(記念日等)など、忘れがちなことをメモとして残すことが可能になる。また、ナショナル側にとっては、どのようなプロフィールのユーザーがどういった商品を購入しているのか、購入履歴を把握できるので、マーケティングデータとして活用できる。
【図5】ポイント制によるプレゼント応募ページ
さらに、ユーザーへのインセンティブとして、ポイント制を導入。投稿、投票、アンケートへの回答などの能動的な行為に対して、その難度に応じて50〜3000ポイントを付与している。ポイントは、サイト内で毎月実施しているプレゼントの応募時に必要となり、同じ商品に対して何口でも応募可能。アクティブに動くほどポイントが貯まり、その見返りを受けられる確率が高くなるという仕組みだ。 投稿された写真に対して読者などが投票、月間入賞作品を決定し副賞としてプレゼントを提供する「撮って送って!」、あるテーマに対するユーザー意識を探る「ワンクリック世論調査」、美容に関するアンケート調査などが充実した「キレイライフ」など、既存コンテンツもユーザー参加型で完成度は高い。新旧合わせた布陣はコミュニティ機能としては非常に強力で、同業他社を圧倒的にリードしているといっても過言ではない。
購入後のアフターケアを展開
さて、今後のナショナルサイトの課題だが、「大きな狙いとしては、買った後の情報提供、アフターケアに注力したい」と、恩地氏は意欲を語る。昨年10月から今年4月にかけての大きなリニューアルで、商品情報の提供と、ナショナルファン育成の素地は出来上がった。それに購入後のサポートが加われば、まさに鬼に金棒。「ナショナルというのは買った後も面倒を見てくれるということで、次に買うならまたナショナル商品という好循環が生まれる」(恩地氏)。昔は街の電気店がこうしたアフターケアの役回りを担っていたが、今はそうしたことが少なくなってきているという事情も背景にはあるようだ。 具体策はまだ明確には見えていないが、例えば、ユーザーが「MY家電メモ」に登録した掃除機や洗濯機などについて、消耗品の取替え時期をメールで通知するなど、ユーザーから集めた個別の商品情報と連動させる形で、アフターケアを展開していく構図を描く。 また、メールマガジンの強化も今後の課題に上げる。現在月2回発行するメールマガジンの読者数が40万人と非常に多いが、この数をより一層増やすためにも次の一手は不可欠。まだ導入には至っていない、HTMLメールの採用や性別、年齢別など属性に合わせたターゲティングメールの配信などを検討しているそうだ。 2005年度、2006年度の2年間、松下電器産業と松下電工は、両社の技術を掛け合わせて新商品を開発するなど、コラボレーションを推進する期間と位置付けている。これは当然サイトにも関係してくる話。主に20代の女性に向けて美容関連の情報を発信してきた松下電工のサイトと、30代以上の主婦向けに生活関連情報を提供してきたナショナルサイトがひとつになることによるシナジー効果をどれだけ発揮できるか。特にコミュニティ関連コンテンツの掲示板や投稿、アンケート調査などで世代を超えた融合が進めば、さらにマーケティングツールとしての価値が高まる。松下電器産業のWebサイト価値を、パナソニックサイトとともに車の両輪として支えるナショナルサイト。今年から来年にかけての動きには注目しておいたほうが良さそうだ。
松下電器産業による、Web価値増大のための改良ポイント |
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