平成14年6月、経済産業省企業法制研究会は「ブランド価値評価研究会報告書」を発表しました。取りまとめの中心的な役割を果たしたのは委員長の広瀬義州・早稲田大学教授でした。報告書の目玉はブランド価値を金銭で評価するために提唱された新しいモデルです。
このモデルは、ブランド価値をバランスシートに計上したり、グループ企業からブランド使用料を徴収したりする場合に、標準的な評価方法を提供することを目指したものです。
モデル構築にあたっては、財務諸表で入手できる数字だけで算出できることを目指しました(実は、この制約条件に縛られすぎたことが本モデルの様々な問題点の根底にあると考えられます。)モデルの構成は図1の通りです。
ここで、PD(プレステージ・ドライバー)は、ブランドの信頼性によって同業他社よりも高い価格で製品等を販売できることに着目したファクターであり、価格優位性を表しています。
LD(ロイヤルティ・ドライバー)は、ロイヤルティの高い顧客がいることによって長期にわたり安定した販売量が期待できることに注目したファクターです。
ED(エクステンション・ドライバー)は、ステータスの高いブランドは、本来の市場にとどまらず、類似分野、異業種、海外に進出するなどのブランド拡張力に着目したファクターです。
割引率(r)は、将来のキャッシュフローを現在価値に割引計算するために用いられるものです。以上のことをまとめたモデルの全体は図2の通りです。
一見すると大変複雑な式に見えますが、次回からそれぞれの項目の意味を検討し、その問題点を探っていきたいと思います。
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