毎年の研究開発投資によって蓄積された知的財産を評価するにはどのような方法がありますか。 | |
陳腐化を考慮した累積的効果として定式化することができます。 |
研究開発投資を行うことによって得られた知見はやがて製品として体化され上市されることにより、収益として実現されます。しかし、技術には様々形成プロセスと発展段階があり、製品化される以前のものや、製品化技術とは異なる分野のものであってもそれぞれが知的財産的側面を持つと考えられます。
研究開発型の企業が技術を梃子にして高い収益力を実現する事象を説明するため、財務諸表に表された研究開発費と利益との関連性を見ようとする研究が行われることがあります。
その際、留意すべき一点目として、研究開発投資で得られた知識はフローではなく企業の中で蓄積されるストックである点が挙げられます。
留意すべき二点目は、知識は常に陳腐化リスクにさらされている点です。これらの点を考慮すると、研究投資による知識ストックTは次のように定式化されます。
(但しR(n)は当年よりn年前の研究開発投資、dは年間の知識の陳腐化率)
技術知識ストックTと利益Pとの間に比例関係T∝Pがあれば、研究開発投資は利益率を高めるということがいえそうです。
実際、マクロ的には研究開発費と利益との間には一定の相関関係が観察されるようです。(もちろん、企業による研究開発の効率性には差がありますから、相関係数は1にはなりません。)ここから長期的に利益を高めるには継続的な研究投資が重要であるという一つの結論が得られます。
しかし、ここで重要なもう一つの留意点があります。
それは、企業は利益状況によって研究開発投資を増減させるという点です。その結果、知識ストックがインプットとなり利益を増大させる関係は、理論的には決して間違ってはないと思われるにも関わらず、予測式とはなりにくいという難点があります。