模倣が困難な知的資本を構築するためには何が重要でしょうか。 | |
特定企業の特性に依存させることが考えられます。 |
知的資本の一つの特徴として、非競合性、すなわち特定の企業による独占的利用ではなく、複数の企業が同時に利用することが可能であるということがあります。
有形固定資産であれば利用できるのは原則として所有者のみです。しかし、知的資本の場合、必ずしもそうとは限りません。たとえば、ソフトウエアはある一社による利用がただちに別の会社による利用を妨げるというものではありません。
しかし、熟練の社員が多数存在して初めて有効に機能するとか、複数の企業や多数の個人との協力関係という関係性の中でこそ価値が最大化されるとか、一定の条件を備えた企業でしかそのソフトウエアから利益を引き出せないということになると、総体として模倣困難はビジネスモデルとなります。
このように、知的資本は特定のコンテクストを有する企業が持って初めて価値を持つということがあります。あるいは別の言い方をすれば、自社というコンテクストへの依存性が高い知的資本を形成することが、外部への事業障壁となり、高い収益性を保証する競争力の源泉となるといえます。
技術やノウハウといった知的資産を外部から導入することは競争戦略上、非常に重要になることがしばしばあります。このような取引を行うにあたっては、当該技術・ノウハウ単体があればそれを収益化する道筋が見えるのか、それとも当該技術・ノウハウを収益化するために必要不可欠なコンテクストごと買収するといった行為が必要なのかを見極めることが、M&Aを決断すべき立場にあるトップマネジメントに求められるといえます。
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