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Brand Strategy journal ブランド戦略通信

実践!ブランド戦略

第109回 CSRの採算

Q CSRに取り組むことは企業の収益アップに貢献しますか。
A 収益のフローを改善する効果を立証するのは困難でしょう。

企業倫理、環境管理、社会貢献などに対する投資は企業価値の向上に資する、という主張が行われることがあります。このような主張はとても魅力的で、CSRを推進したいと考える人たちにとって、そうであれば経営者に主体的な行動を促すドライバーになるという願望があります。

CSRは企業のレピュテーションという見えざるバランスシートを改善する効果は大いにあると思います。それが長期的に経営にプラスであるということも概念的には理解できます。しかし、企業市民として責任ある行動を取ったからといって収益性が向上するかというと、それを証明するのはきわめて困難と考えられます。

責任ある行動を取ることは批判的な報道を和らげ市民活動団体の過剰な攻撃のターゲットとなる可能性を下げるというリスク管理的な効果は非常に高いと考えられます。CSRに取り組む企業は収益性が高いという相関関係を示す研究結果は少なくないようです。しかし、更に進んで収益を向上させる明確な因果関係を立証するのは容易ではありません。

たとえば「働きやすい職場」を実現した企業の収益性が高いとしても、それは収益性が高いことが原因で、職場環境はその結果であるという可能性は否定できません。

そもそもCSRに対する支出は裁量経費といえる範囲にとどまり、それが主要な競争戦略の一部を構成するものでない限り、収益を左右する可能性は低いといえます。

CSRへの取り組みを収益向上と関連付けて捉えるより、企業のあり方、理念に基づいて捉えるほうがその本来的な姿に近いものと考えられます。

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