話し手 |
松下電器産業株式会社
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話し手 |
コミュニケーショングループ WEBチーム
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Webサイトはマーケティング活動のブリッジ役
「Webサイトの役割はブリッジ。宣伝や広報、販促などリアルでお客様に伝えきれない部分を、Webサイトが埋めていく。」——。売上価値ランキングで5位に入ったパナソニックのWebサイト(【図1】)を手がける、松下電器産業パナソニックマーケティング本部コミュニケーショングループの二宮英樹チームリーダーは、明確に言い切る。例えば、テレビCMは発信力は絶大だが、15秒、30秒と枠が限られている。店頭の販促は実際に商品に接触させられるが、足を運ばなければならないという制約がつく。Webサイトはその各媒体の“弱み”の部分を、効果的に補うブリッジツールと位置付けている。
そうした民生パナソニック商品のWebサイトの制作や運営を一手に担うのがパナソニックマーケティング本部WEBチームだ。以前は、テレビ、ビデオ、オーディオ等の各事業部が個別にWebサイトを立ち上げて運営する、分散状態が続いていた。しかし、2001年4月、民生パナソニック商品全てのマーケティング機能を統合するパナソニックマーケティング本部が発足。宣伝・広報・販促・Web等のコミュニケーション活動部隊も一つにまとめられ、テレビやビデオ等の黒物家電のWebサイト関連業務の全てを傘下のWEBチームで引き受けることになった。この体制の再構築により、パナソニックのWebサイトは、1つのチームが宣伝や広報、販促と横軸で連携を取りながら制作・運営できる、理想的なフォーメーションで作られるようになった。
サブブランドで展開する充実の体験型コンテンツ
制作や運営を一元化する一方で、主力製品の個性を前面に出す方針を打ち出した。テレビのVIERA、DVDレコーダーのDIGA、デジタルカメラのLUMIX、オーディオのD-snapなど、重点ブランドについては独立したサイトを設ける「サブブランド戦略」を採用している。それぞれ「viera.jp」、「diga.jp」、「d-snap.jp」など独自ドメインを設定し、独立色を強めるとともに、テレビCMや新聞、雑誌広告から誘導する際にアドレスが覚えやすく、打ちやすいというメリットも折り込んだ。
また、メールマガジンは、「VIERA通信」、「DIGA通信」、「LUMIX通信」とブランドごとに用意。対象ユーザーに合わせて、VIERAとDIGAは一般ユーザーを想定したイメージ重視のHTMLメール、LUMIXはカメラファン向けに詳細な機能情報がぎっしり詰まったテキストメールと使い分けている。
さらに、各ブランドで、完成度の高い「体験型コンテンツ」を用意しているのも大きな特徴である。例えば、VIERAでは、「ビエラ高画質ミュージアム」で画質の良さが視覚的に体感でき、「設置シミュレーション」では、デジタルカメラで撮影した自分の部屋をアップロードして画面にはめ込み、37〜103インチのVIERAを実際に設置したイメージを確認することが可能だ(【図2】)。DIGAの「私のおすすめ活用術」では、リモコンをクリックしながら番組の録画予約や再生などをバーチャル体験することができ、LUMIXの「デジタル一眼レフカメラL1アナログ&デジタル操作体験」では、バーチャル操作が楽しめる。
「2年くらい前から力を入れている。いずれも店頭やテレビではわからないこと。それをあえて、リモコンのボタンを押すなどハードルを設けることで、より理解を深めてもらっている。また、VIERAの大画面を部屋に入れてみてその大きさを実感してもらうなど、サイトを通じ感動体験を目指し提供している」と、二宮氏は説明する。体験型コンテンツは楽しんでいるうちに不思議と、「ほしいな」、「買ってみようかな」という気持ちになる。購買に結びつける上での効果が高いコンテンツといえよう。
アンケートで各ページの評価を集め即座に対応
ブログやスペシャルサイトも不定期ながら、各ブランド独自のタイミングで開設している。2006年、LUMIXでは、F1ジャーナリストがLUMIXの一眼レフで撮影した世界各地のF1グランプリの様子を日記風にリポートした。VIERAでは、同年9月に開催された「吉田拓郎&かぐや姫 Concert in つま恋2006(パナソニック後援)」に合わせてスペシャルサイトを開設。開催前、当日、開催後と、関連情報を提供しつつ、VIERAのサウンドの魅力を伝えるなどPRにも努めた。このスペシャルサイトはファンがブログで紹介し、口コミで認知が広まるなど、Web2.0的な展開も見せた。「ブログはコンテンツ強化につながると判断したときに開設し、終われば引っ込める。リアル性やコミュニケーション性を打ち出したいときのツールとして使っている」と、二宮氏はその役割を話す。
一方で、コンテンツの反響や評価をアンケートを通じて常時探る。パナソニックのページにアクセスすると一目瞭然だが、トップページの一番下にはトップページの評価を聞くアンケート、VIERAやDIGA、D-snapには、それぞれのページの評価を聞くアンケートを設置(【図3】)。きめ細かくユーザーの意見を拾っているのだ。「私どもははページをリニューアルした後作りっぱなしでそのまま放置することはない。お客様の声を聞いたり、ログを解析しながら、コンテンツの上下を入れ替えたり、置く場所を変えるなど、地道な作業を繰り返している。私どもの創業者の松下幸之助は、『朝令暮改』ではなく、朝やったことを昼に変える『朝令昼改』を奨励していたが、まさにそれを心がけて運営している」。
アンケートでは特にプレゼントを用意していない。バイアスがかかることを嫌っているのだ。それでも、毎回分析に足るだけの母数は集まるという。二宮氏とともにWebサイト制作・運営に当たる中岡幸夫氏は、「お客様の生の声が聞ける。耳に心地いい意見だけではなく、厳しいものも当然あるが、そのほうが逆に課題が浮き彫りになり、次に生かせる」と、アンケートの効果を指摘する。自分たちの意見に耳を傾け、それを即座に反映してくれる。だから、またよりよいサイト作りのアドバイスをしたくなる。ユーザーを巻き込んだ好循環によりWebサイトはブラッシュアップされていくわけである。
ビフォアマーケティングで発売時の垂直立ち上げを実現
今後の注力ポイントの1つは、Webサイトを活用した「ビフォアマーケティング」である。「今は製品のライフサイクルが非常に短くなっている。だから、発売時にコミュニケーションパワーを最大にすることが必要。我々はこれを『垂直立ち上げ』と呼んでいるが、それを実行しているのがWebサイトである」と、二宮氏は語る。
製品はメディア向けに発表されてから、発売されるまで約1ヶ月間空白期間が生まれる。その間、話題がしぼんでしまっては元も子もない。Webサイトがブリッジ役を果たし、いかに興味ある情報でユーザーの関心を引きつけておくかが勝負の分かれ目となる。従って、パナソニックのWebサイトでは、製品発表と同時に製品ページを立ち上げる。しかも、それはただスペックなど基本的な情報を載せるだけではない。コンテンツが充実した本格的なブランドサイトを用意し、ユーザーが知りたい情報の大半が提供される状態まで持っていくのだ。
また、06年3月に技術発表し、7月に発売したデジタル一眼カメラ「LUMIX L1」では“発表前”のティザー的な取り組みにも挑戦した。「6月にLUMIXで何かが起こることを予感させるためにWebサイト上でバラをデザインしたバナーを置いてカウントダウンを始めた。すると、ブログや掲示板などでユーザーが反応し、『技術発表されたものが製品化されるのでは』などと、口コミで一気に広まった」と、中岡氏は話す。
今後も、CGMを念頭に置いた活動も視野に入れつつ、広報、宣伝と連携させながらマーケティング力を最大限発揮していく。常にユーザーの動きを念頭に置いたチャレンジは、大いに参考になるところであり、今後も注目していきたい。
パナソニックのWebサイト構築のポイント |
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