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マイクロソフト マーケティング本部
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情報の山の“道先案内”を強化
【図1】トップページ
30万ページ——。聞けば気の遠くなるような膨大な数。その正体は、マイクロソフトの国内向けWebサイトが抱えるページ数である。膨大な数の製品群と各種サービス、そしてそれらを効果的に薦めるための体験レポートや使用シーン紹介などが、渾然一体となり構築されている、まさにマイクロソフト関連の情報の宝庫なのだ。
しかし、情報が膨れ上がるのと反比例するようにひとつの問題が生じてくる。それは、訪問したユーザーにとって、探し物が見つかりづらくなるというデメリットである。「膨大な情報の山の中で、お客様が目的とするところにいかにスムーズに行き着けるかを最も重視している」とマイクロソフトマーケティング本部マーケティングコミュニケーション部の松倉泉部長は、サイト構築のポイントを解説する。
各製品サイトのリニューアルは、それぞれ個別のタイミングで進めているが、トップページのリニューアルは、1年〜1年半のサイクルで実施している。前回は昨年10月に一新。マイクロソフトでは、リニューアルごとにバージョン番号を付けており、前回はバージョン12にあたるという。
トップページのリニューアルの方向性を決めるのは、同社が世界各国で独自に実施しているアンケートを中心としたサーベイである。その結果は米国本社が中心となってトラフィックやログなども含めて分析。使いやすくするためにはどうすればいいか知恵を搾り、ワールドワイドでコンセンサスを得ながら、リニューアルのデザインを決める。あとはそのデザインを各国のマイクロソフト現地法人がアジャストするためにローカライズし、最終的に全世界同時にトップページを新生する。
昨年10月、そうした手順が踏まれ、Webサイトの玄関は新調された。最大のポイントは、目的情報にいかにスムーズにユーザーを誘導するか、ナビゲーションの改良・強化である。
【図2】『自宅で利用される方へ』
「従来は、最初に製品別に振り分ける『製品カット』が主流。この製品カットも非常に重要なので今も残しているが、もうひとつ『オーディエンスカット』も導入した。今までは製品のページに行ったあとに、企業向け、個人向けという具合に分けていったが、今回は最初から『自宅で利用される方へ』、『仕事で利用される方へ』、『法人、企業の方へ』といったように、オーディエンスの利用状況で振り分けるような仕掛けを作った。この仕掛けにより、例えばWindows関連の情報を取りにきた自宅利用者に、他にもこんな製品があってそれを組み合わせることによって家庭ではこんなに可能性が広がる、といったプラスアルファの有益な情報を提供できるようになった」(松倉氏)。
この、使用シーンをファーストコンタクトで提供するメリットは大きい。結果的に、自宅利用者は今まで知らなかった自分に役立ちそうな製品情報を具体的なイメージの中で知ることができるだけでなく、どの製品が自分にとって必要なのか全くイメージが沸かないユーザーもまた効果的に誘導することができる。そして、それは同時にマイクロソフトにとっては新たな販売機会を増やすことを意味するわけだ。
進化型ナビの答えは“パーソナライズ”
こうしたリニューアルの努力もあり、「Web Equity 2004」の消費者によるサイト評価調査で、「欲しい情報が得られる」と回答したユーザーは39.7%と4割近くに上り、249社中、ヨドバシカメラ、ビックカメラといった量販店のWebサイトに続いて3位にランキングされた。量販店のサイトは製品の実勢価格などが載っているために情報取得という部分では高評価につながりやすいことを考慮すると、マイクロソフトの健闘ぶりがより引き立ってくる。
だが、松倉氏はこの好結果を額面どおりには受け取らない。「色々なものを探された結果として欲しい情報は40%近いお客様が得られていると思うが、本当にその過程が簡単だったかという容易性を高めるための改善の余地がある」と、より一層のユーザビリティの向上に厳しい目を向ける。
そのひとつの答えがナビゲーション機能をより進化させた「パーソナライズ」という手法である。「オーディエンスカットを取り入れたわけだが、同じ自宅利用者といっても興味分野もレベルも違うはず。10人いたら10通りのニーズがあり、最終的にはその個々人のニーズに合った情報をどうやって提供していくか。その方向性のひとつとして、今後はサイトのパーソナライズ機能も検討していく」(松倉氏)。
つまり、ユーザーのプロファイルに合わせてWebサイトに表示する情報を変えていくということである。それにはまずはユーザーのプロファイルを取得しなければならない。さらに、単に一方的にパーソナライズするだけではなく、それを元に継続的なリレーションシップも確保していくという。「お客様の情報は日々変わっていくので、変更点をいかに知ってそれに合致した情報に変えていくかということが重要。お客様が必要としている情報だけでなく、潜在的にあるニーズを知って、プラスアルファのレコメンデーションも加えていく」。例えば、新製品を出しても、その製品に切り替えるタイミングはユーザーによって千差万別。その切り替えの時期を見計らってユーザーごとに再度製品情報を提供するなど、ニーズにタイムリーに対応していくわけだ。
【図3】パーソナライズの例
実際、パーソナライズについては、マイクロソフトUK(英国)のWebサイトが実験的に進めている。デベロッパーが、自社で扱っている製品に関する簡単なアンケートに答えると、以後はその製品に関連する情報を中心に提供していくという仕組みで、いわばパーソナライズのファーストステップだ。「企業のユーザーは、余計なものを見ず、寄り道せずに必要な情報を得たいという方がほとんど。こうしたオンビジネスにパーソナライズは向いている」と、マーケティング本部マーケティングコミュニケーション部の浜野努シニアマーケティングスペシャリストは話す。逆に個人ユーザーは、自分の欲しい情報を探してサイト内を循環する傾向がみられる。そうなると、同じパーソナライズでも程度を考える必要があるだろう。
企業ブログへの挑戦
【図4】ブログサイト
ユーザーとのコミュニケーション強化の一環として、ブログの活用にも取り組んでいる。国内Webサイトではすでに10個のマイクロソフト社員によるブログが立ち上がっており、更新頻度も高く、ユーザーによるコメントの書き込みも数多く見られる。そこには、ブログは個人と個人のコミュニケーションを担い、企業としてコントロールするのが難しいツールだが、コミュニティ機能の可能性を広げるため、あえてチャレンジしようという姿勢がうかがえる。
「日本ではオンラインで語り合うという文化が成熟していない。そのせいか、従来から存在したニュースグループ(電子掲示板)もうまく機能していなかった。一方で、米国Webサイトでは数千のニュースグループが立ち上がっていて、オンラインのコミュニティというものが発展し、そこで開発者などが情報交換をする文化ができ上がっていた。今はそれがブログに移行している状況」。と浜野氏は日米の違いを説明する。
確かに、今年は国内においてもブログ元年と言われ、一般的にブームが到来しつつある。しかし、これが企業のコミュニティ機能のひとつとして定着するかどうかはまた別の話だ。「通常では聞けない話や情報を得ることができる、というところにおいては魅力がある。日本でも、今後はそういった個人に落としこんだような形になっていくと思う」と浜野氏は期待感も示す。こうした可能性も含め、企業ブログの先陣を切るマイクロソフトの趨勢は注目されるところだ。
以上見てきたように、Webサイトの価値増大に向けた取り組みを積極的に進めるマイクロソフトだが、ここまで力を入れる理由は、同社にとってWebサイトがユーザーに対して直接的に情報を発信できる唯一の場であり、コミュニケーションの場であるからに他ならない。同社のWebサイトの価値は、今後もますます高まっていくに違いあるまい。
マイクロソフトによるWeb価値増大のための改良ポイント |
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