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Brand Strategy journal ブランド戦略通信

Webマスターに聞く!

シリーズ3 第5回:ライオン株式会社

話し手
ライオン株式会社 広報部ウェブ広報担当部長 新井 竜次氏
顔写真

リニューアルでPVが倍に

1996年4月、ライオンはシステム部が中心となりWebサイトを誕生させた。それ以来、各事業部は個別にページ作りに励んだが、全体を統括する部署は存在しなかった。2004年に広報部とシステム部がプロジェクトチームを結成しまとめる動きを見せたが、正式な組織でないため、大きな進展には至らなかった。06年4月、広報部の中に初のWeb広報専門部署を立ち上げる。Webサイト開設からちょうど10年が経っていた(【図1】)。 「本格的な統括部署がなかったため、古い旅館を建て増したような状況。とにかく他社に大きく遅れを取っていた。ヒューリスティック調査(ユーザビリティの専門家によるユーザーインターフェース調査)などの結果も芳しくなかった。だから極力コストをかけずに、直せるものから直していこうと。それが一番の基本方針になった」と、広報部ウェブ広報担当部長の新井竜次氏は胸の内を明かす。

まず、着手したのが、製品情報ページである(【図2】)。「日用品メーカーのホームページにおいて、ユーザーのサイト利用目的の第一は、製品に関する情報収集。また利用の際に最もユーザーニーズが高いのが、情報の探しやすさやサーチ機能。この前提のもと、アクセスログを解析したところ、(1)PV、ユニークユーザー数、平均滞在時間で競合他社との格差が大きい(2)サイト内では『製品情報』へのアクセス割合が最大(3)競合に比べ、内容の整理が不十分で使いづらい構造(4)ブランドサイトと製品情報の役割分担が不明確(5)製品情報サイト全体のアートディレクションが不統一、などの事実や問題点が判明。そこで製品情報に関するすべてのページをフルリニューアルした」。 リニューアルページでは、「カテゴリーから選ぶ」、「製品名から探す」、「新製品を見る」の3つのアプローチを提供し、各製品にはデザインが統一された製品詳細ページとブランドサイトへのリンクを設けた。使い勝手は確実に向上し、調和、統一感も生まれた。「結果的にPVは倍になった。Webサイトにとって使いやすさがいかに大事か、再認識した」と、新井氏はその効果を語る。

コンテンツの整理を本格始動

また、Webサイト開設当初からの老舗コンテンツである「生活情報」も見直した。「生活情報」は情報を長年付け足してきたため、構造が複雑になり、使い勝手の面でやや不具合がでてきていた。そこで、新たに「lifeOn(ライフオン)」という生活情報サイトを立ち上げ、旧コンテンツの吸収を試みた(【図3】)。現在は、グローバルナビゲーションの「生活情報」をクリックするとlifeOnのトップに誘導される仕組みになり、構造は非常にシンプル化した。 一方で問題も生じた。リニューアル前の「生活情報」は歴史があるがゆえに、特にSEO対策を施さなくても、その言葉で検索をすると、常に検索結果ページのトップに表示されていた。しかし、lifeOnに一本化した結果、検索結果の上位に表示されなくなった。Webサイトで古いコンテンツを新しく再生するときに時折生じる問題だが、今後に課題を残す結果となった。 ライオンでは、「ライオンキッズ子供ページ」と「ライオン オーラルタウン」の2つのコンテンツの中身が重複しているなど、他にも交通整理が必要な部分がある。しかし、まだ誕生したばかりのWeb広報で全てを再構築するのは、マンパワー的にもコスト的にも実質的に難しいものがある。新井氏は、「現時点では、情報整理は事業部に任せたい。従って、事業部をどう指導していくかということが我々の最大の仕事」と割り切る。現在は、社内で定期的に勉強会を開いたり、関連部署と個別にコンタクトを取るなどの手法で意識の改善に取り組む。

目標はWebサイトのマスメディア化

Webサイトの再構築が緒に就いたばかりのライオンだが、ユーザーの評価は高い。弊社が独自に企業の情報発信力を調査した「BtoCランキング」(詳しくはこちら)では全社中8位。特に「使いやすさランキング」で堂々の1位を獲得している。トップページでは全ブランド名がテキストで一覧でき、ワンクリックでブランドサイトに飛べる実にシンプルな仕組みである。初心者でも簡単に知りたい情報に最短距離でアクセスできる。確かにフラッシュなどによる動きはなく静的なイメージが強いが、それでもユーザーの好評価につながっていることは興味深い。

今後は、お客様相談室との連携を視野に入れる。「企業とユーザーをつなぐインターフェースとしてお客様相談室のページは、使い方によっては活用可能。経営や商品開発にも直結できる。だから、ここは早急に手直ししたいと考えている」。 また、コンテンツ制作では、広告制作部とのコラボレーションを模索する。「発信内容が一方的にならないように、また『歯周病』など他社と競合するテーマでも差別化が図れるように、ユーザーコミュニケーションに長けた部署のバックアップを受けたい」。 大きな目標は、Webサイトにテレビと同程度かそれ以上のメディアパワーを持たせることである。「リーチで見ると、うちのサイトでもテレビスポットCMの70〜80%くらいまでは達している。このパワーをより押し上げて、将来的には完全なマスメディアとして活用していきたい」と、新井氏は構想を描く。 一歩一歩、改善に向かっていくWebサイトの姿を長い目で見守っていきたい。

ライオンのWebサイト構築のポイント
  • 利用頻度の高い製品情報ページを「使いやすさ」、「デザインの統一」を図るためにフルリニューアル
  • 製品情報トップで、「カテゴリーから選ぶ」、「製品名から探す」、「新製品を見る」の3項目を設け、製品ごとに詳細情報ページとブランドサイトへのリンクを設けた結果、PV数が倍増
  • 新しい生活情報サイトを立ち上げ、老舗の人気コンテンツを吸収合併
  • コンテンツ内容の重複の改善は、勉強会などで指導しながら各事業部主体で推進
  • お客様相談室や広告制作部とのコラボレーションなど独自のアイディアも計画
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