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Brand Strategy journal ブランド戦略通信

Webマスターに聞く!

シリーズ3 第1回:株式会社NTTドコモ

話し手
株式会社NTTドコモ
広報部広報部門 Web担当課長

部(ささべ) 彰氏
顔写真

統一感はユーザビリティのために

【図1】NTTドコモ トップページ

【図1】NTTドコモ トップページ
【図2】NTTドコモ北海道トップページ

【図2】NTTドコモ北海道トップページ

「お客様から見たらどうなのか。常にその視点で物事を考えている」。NTTドコモのWebサイトを統轄する広報部広報部門Web担当課長の部彰氏は、サイト作りの基軸をそう表現する。2005年7月のリニューアルの際も、それ以降も、その点を外さないことを心がける(【図1】)。

そのために取り組んでいることの一つが、NTTドコモと北海道から九州までの地域会社8社がそれぞれ運営するWebサイトのデザイン、ナビゲーションの統一である。従来異なるデザインや内容で展開されていた9社のトップページ。今ではちょっと見ただけでは違いがわからないほど、統一感が確保されている(【図2】)。「お客様は携帯電話を持って移動される。例えば東京在住の方が九州に出張に行って、NTTドコモの九州の情報を探したときに、情報の見せ方や内容が違っていれば、奇異に感じるし、使い勝手は悪くなる。そこを均一化することで、ユーザビリティは確実に向上する」。トップページだけでなく、全体のほとんどの階層で統一性は保たれている。一部の営業キャンペーンやドコモショップ情報はエリアごとに事情が異なるので、各社各様に提供しているが、それは全体から見れば微々たるものだ。ブランディングという観点でWebサイトの統一感を図ろうとする企業は増えているが、NTTドコモではむしろユーザーの使い勝手というポイントに重点を置き、同一化を加速させているわけだ。

また、リニューアルに際しては、ユーザー動線を強く意識したユーザーシナリオを描き、ユーザビリティを向上させることを目標にサイト全体を見直した。一般的には、各コンテンツホルダーの利害が絡むため、サイト構成の大規模な変更は調整に多大な時間を要する。しかし、NTTドコモでは、コンテンツやシステムも含めてWebサイトの9割を広報部で運営している。従ってリニューアルにあたっても比較的スムーズにことが運ぶ。「そういう意味では運営はしやすい。ただし、直営なので物量は非常に多い」と部氏は現状を語る。

更新頻度は400件/月

ユーザー動線で特に目新しいものが、メインPRエリア下に設置されたインデックスである。「新発売の機種が見たい」、「自分に合った料金プランを選びたい」など、ユーザーニーズという切り口で項目を並べ、より直感的に目的の情報にたどり着けるような仕掛けを構築している。「トライで始めた企画だが、実はここから入るお客様が非常に多い。ややもすると画像や大きな文字を使う傾向にある中、こうしたテキストリンクもお客様の希望に合致すればちゃんとアクセスがあるということを証明できた」と、部氏は効果を指摘する。ネットユーザーは元々テキスト情報を読むということが習慣化されている。これはテキストリンクの可能性を示唆するような結果といえる。

【図3】報道発表と同時に立ち上がる製品ページ

【図3】報道発表と同時に立ち上がる製品ページ

さらにユーザーニーズに応えるために、常に新鮮で価値のある情報の提供にも積極的に取り組む。更新頻度は1日約10件、月間では約300〜400件にも及ぶ。また新製品では、ニュースリリースが出される同じタイミングで製品ページも立ち上げるという同時性を実現させている(【図3】)。「ポータルサイトに新製品のニュースだけあって製品ページへのリンクがないというのは機会損失なので、そこは歯を食いしばってでも間に合わせる。おかげですごいアクセスがくる」。ユーザーの期待にこたえる情報を常にアップデートすることでNTTドコモの価値を確実に高めているわけだ。

Webサイトが変われば組織も変わる

Webサイトの運営を担う広報部Web担当は8名の体制である。製品、サービス、料金、お客様サポート、企業情報、トップページのお知らせ関連、iモードサイト、システムの8分野をそれぞれが担当。さらに、各人がもう1〜2分野を補佐役として担う。つまり1分野に原則として「正」、「副」の2人の担当が付くという独特な体制で日々の運営を回している。「お客様のアクセスログを見ても、製品からサービスに行くなど、横から横へ動く。だから担当以外のコンテンツも知らないとうまく誘導できない。そういう意味で、この体制は有効に機能している。それに、仮に「正」の人事異動があっても、「副」がカバーできる」と、部氏メリットを挙げる。

また組織面では、Webサイトが社内のコミュニケーションや意識の統一を図る「推進役」になっていると、部氏は指摘する。「Webサイトで何かをやるときは、それに関わる組織同士が連携して、同じ思想の下で動かないと実現しない。だから、一人のお客様に対応するのに、色んな組織が絡んでくる。手を結ぼうとすると結構苦労があるけど、うまくいったとき、リアルの会社の裏側のところで、コミュニケーションが円滑になったり、考え方が一つにまとまっていたりする。そのメリットって実は大きいのかなと思っている」。

セルフサポートのドコモショップ

全社一丸となりユーザー本位のページを作る。そして、究極的に目指すのは「Web版ドコモショップ」である。リアル店舗で情報が知りたければカタログを手にする。相談したければ窓口でコンサルティングを受ける。さらに、製品が欲しくなれば、注文する。それらは、今やNTTドコモのWebサイトで全てできる。「ただ、Webサイトは無人店舗。お客様自身が目的のところを探す必要がある。そうなると、目的を分かりやすくすること、目的に行き着いたときにちゃんと問題が処理できること。そういうセルフサポートをかなえるという発想がますます重要になる。最近はそんな風に思っている」と、部氏は話す。

【図4】トップページを入口に展開するアンケート

【図4】トップページを入口に展開するアンケート

ユーザーの声を直に聞く試みもはじめている。05年10月にトップページにアンケートの入口を設置したところ、1ヶ月で2500件もの返答が寄せられた(【図4】)。「ネットなので怖い意見も来るのかなと思ったが、割と好意的なものが多かった。聞いてくれたことがうれしいというお客様もいた。06年は1年かけてそれらの意見の中で改善できることから取り組んでいる」。実際に、ヘッダー部分に「大中小」のボタンを付けたのはユーザーの指摘があったから。さらに、「今自分の持っている端末と新製品を比べたい」という声に答え、製品のスペックを比べられる比較コンテンツも用意する予定である。

今後は、社内の他の組織が運営するサイトとの連携強化が課題だ。ユーザー動線を意識していくと、ユーザーはコーポレートサイトだけでなく社内の他部門が運営するサイトを跨って利用していく場合がある(例えば、料金の情報を調べてオンラインで手続きするというように)。会社としてもこのユーザーの行動は期待するものである。お客様の課題解決と共に社内のビジネスニーズを満たすために社内の各部門との連携を更に深めていきたいと考えている。

NTTドコモのWebサイト構築のポイント
  • NTTドコモ9社のページデザインを統一し、ユーザビリティの向上を図る
  • ユーザー動線を意識したユーザーシナリオに基づき、Webサイトを全面改訂
  • ユーザーニーズを切り口としインデックスを構築
  • 更新頻度400件/月、ニュースリリース発表と同時に新製品ページ開設など、常に新鮮な情報の提供を推進
  • アンケートでユーザーの声を拾い、Webサイトの改善・新規コンテンツ企画に積極活用
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