商品にもよるが、ブランド認知という点ではウェブサイトは既存メディアにまだ及ばない場合が少なくない。一方、ブランドイメージを形成し、好感度やブランドプレミアムを強化するという役割では非常に優れている。時間やスペースの制限が小さく、表現が多様で、既存のメディアでは得られない深いブランド体験が得られるという点でウェブサイトは他のメディアを大きく上回る。
ブランド論における基本概念
(1)ブランドイメージとはブランド連想の体系
【図1】スターバックスから何を連想しますか
ブランドイメージの元になるのはその人のブランドに関する知識である。その知識は散漫にあるのではなくて、意識しているかどうかは別として一定の体系に基づいている。ブランドの要素、たとえばブランドネームやロゴを見ることによって、そのブランドに関する記憶の体系が連想として呼び出され、全体としてその人のブランドイメージとなる。
ブランドに関する連想には製品そのもの、製品が五感に訴える感覚、製法や原材料、品質利用者や利用状況のイメージ、場所、グッズ、企業イメージなどさまざまなものがある。
スターバックスコーヒーでは製品はラテやフラペチーノが挙げられるだろう。五感に訴える感覚として、コーヒーそのものの味覚や風味のほか、同社を特徴付けるものとして店内に入ったときに感じるローストされた豆の香りがある。製法、品質には独特のこだわりがある。利用状況として、通勤途上で買って手に持つ人のイメージや、ファッショナブルなその人のイメージがある。シアトルのイメージや、急成長した企業のイメージもある。(図1)
このように、ブランドの連想に強さと好ましさを伴った広がりを持つブランドはプレミアム価値を生む良いブランドである。
(2)機能的ベネフィットと心理的ベネフィット
ベネフィット(便益)とは、製品を利用することで消費者が得る有形、無形の価値のことである。ブランドがもたらすベネフィットには、機能的なものと心理的なものがある。
機能的ベネフィットは製品特性と密接に結びついた便益のことである。たとえばパソコンでは速度や容量などが該当する。
心理的ベネフィットは製品を使用することに伴う好ましい感情から得られる便益である。パソコンのように機能性中心のような製品でも心理的ベネフィットはある。たとえばソニーの「バイオ」が「持つことの喜び」を味わえる製品として受け入れられたことは好例である。
一般に、優れたブランドは機能的ベネフィットだけでなく心理的ベネフィットが強化されている。
(3)ブランド連想を形成するのはブランド体験
ブランド連想は消費者がブランドのさまざまな側面を体験することによって強化される。
ブランド体験にはその人自身の使用経験によるもののほか、様々なメディアを通じて得た情報も貴重なブランド体験となる。
ウェブブランディングにおける方法論
(1)リッチな表現がブランド体験を促す
ウェブサイトは映像媒体的な表現と紙媒体的な表現のどちらもが使え、しかもインタラクティブな要素を取り入れることができる、非常に表現方法の豊かなメディアだ。
製品の購入検討者には紙媒体のカタログ的な情報を閲覧してもらうこともできるし、動きのある画面を用いたスペシャルサイトでブランド独自の世界を伝えることもできる。
既に自社製品を購入した人に対するサポート情報の提供、会員向けサイトを通じたその人たちだけの情報の提供も可能である。
コミュニティを作ってユーザー同士がコミュニケーションを行い、製品の上手な使い方や製品を使ったライフスタイル情報を交換することもできる。
ウェブサイトはブランド体験を促進する最適なメディアだ。
(2)体験の質と量(アクセス)は比例しない
リッチな表現を通じて豊かな体験が可能といっても、そうしたコンテンツにアクセスが集まるとは限らない。一般的に言ってカタログ情報の方が体験型のスペシャルコンテンツよりアクセスは多い。いかにしてリッチなコンテンツに誘導するかに工夫を凝らす必要がある場合が多い。
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