海外進出にあたってブランド構築にどのように取り組むべきですか。 | |
先行投資はリスクがある反面レバレッジ効果が期待できるが、マネジメントレベルでの判断となります。 |
国内で知名度の高いブランドであっても進出先ではほとんど知名度がないという状況は良くあります。このような場合には新たなブランド構築を行いながらの進出となります。
初期段階におけるブランド構築費用をどの水準に設定するかは当該企業の戦略およびそれに基づく事業計画に依存します。本来、戦略立案には市場環境および事業環境を努めて客観的に観察した上での考察が求められますが、現実には企業に刷り込まれた思考パターンが色濃く反映されます。
たとえば、EVAなどの指標に基づいて経済性を評価し、常に収支合い償う形で、あるいは一定以上の投資収益率を達成しながらそれに見合った水準でブランド投資を行うことが制約条件となっている企業があります。このような制約を設けるに至る背景には合理的判断があったと見られますが、問題は強力な先行投資型の競合企業が存在する場合の事業展開のあり方です。
一つのパターンとして、外資系企業が積極的にブランドに対する先行投資を進め、日系企業が慎重に動く間に彼我のブランド力に大きな差ができてしまった、というケースがあります。こうなってしまうと、市場の揺籃期にはさほど事業規模には大きな差がないように見えても、市場が確立した段階で既に巻き返しが非常に困難な状況になっています。この場合、先行投資にはレバレッジ効果があり、外資系企業はそれを戦略的に実現し、日系企業はそれができなかった、ということがいえます。
このような結果を生んだ原因は外形的には社内ルールが市場環境に適合しなかったということですが、根本的には事業環境に即した戦略思考が行われなかった点にあります。経済性の追求は事業の基本要件ですが、あるべき事業経済性実現のプロセスは自社だけでなく市場や競合の動向によって組み立てられるものです。投下資本収益性を一定水準以上に保つことは企業の尊重されるべき命題ですが、それをルール化し運用することといかに戦略的に実現するかということとの間に立ってマネジメントが果たすべき役割はきわめて大きいものと考えられます。
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