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Brand Strategy journal ブランド戦略通信

実践!ブランド戦略

第88回:Googleブック検索和解

Q Googleブック検索和解についてどのように考えますか。
A 出版社はもっと著作権者の権利を守る努力をすべきです。

書籍をスキャンして全文検索サービスを提供するGoogleブック検索に対して米国の作家団体や出版社などが起こした集団訴訟では和解案が提示されましたが、その内容は広範囲なスキャンをGoogle社に認めるという、Google社にとって非常に都合の良いものでした。しかも、著作権に関する国際的合意であるベルヌ条約によって、和解案の効力は日本を含む全世界に及ぶとされました。その結果、日本の全ての著作物がGoogleによってスキャンされ、インターネット上で配布される可能性が生じました。

和解案では著作者にいくつかの選択肢が用意されており、それに沿って和解に参加すれば最も手続きを簡単に済ませることがました。しかし、もし異議を申し立てようと思うと、米国の裁判所で手続きをする必要があり、恐らく大半はベストセラー作家に程遠い個人で占められるであろう日本の著作者にとって非常にハードルの高いこととなります。

ここはぜひともその道のプロである人にサポートを受けたいところですが、あいにく日本の出版社も中小企業が多く、能力には限界があります。そこで、更にその上位の業界団体の役割に期待したいところですが、伝えられるところによると、日本の出版社の代表的な業界団体は早々にGoogle社との対応は個々の著作者に委ねることにしたということです。

出版社の中には著作者のために一括して対応したところや、当初Google社が設定した期日(後に延長されることになる)までに著作者に対応方法を記述したお知らせを配布したところもありました。しかし、対応に遅れを取ったところや説明が不十分ところも少なからずあったようです。

映像や音楽配信では、自社のビジネスに跳ね返ってくるという事情はもちろんありますが、権利者の権利にはかなりの配慮が見られます。これに対し、出版業界の動きは非常に鈍いものに見えます。

Googleブック検索和解は、外交ルートを通じた働きかけもあり、集団訴訟の範囲から日本やEUが実質的に除外されることになりました。ここに至るまで、著作者団体の熱心な活動は伝えられてきました。しかし、業界の健全な発展のため、出版業界も重要なステークホルダーである著作者の権利を守ろうとする努力を積み重ねていく必要性は大きいと思われます。

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