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Brand Strategy journal ブランド戦略通信

実践!ブランド戦略

第77回:不況が加速する広告メディアの地殻変動

Q 不況を契機として各メディアの地位に変化は生じると思いますか。
A 既存のマスメディアが凋落し、インターネットとの位置付けが高まる可能性があると考えられます。

不景気により各社が広告予算を絞り、メディア市場の縮小が顕在化しています。

新聞や雑誌は不景気になる以前から長期低落傾向が明確だったのですが、テレビ広告は長期にわたりメディアの王様としてのポジションを保持してきました。しかし、不況を契機として広告主が大幅予算カットを打ち出す中で、金額が大きいが故に大きな削減効果が見込めそうなテレビCMに大きなメスが入っています。

テレビが抱える構造的問題のひとつに、中心的な視聴者が高年齢化していることがあります。そのため視聴率を取るためには中高年に支持される番組制作を行うことが重要となっています。一方、広告主となる企業側は主要な購買層である若年層をターゲットとしたいと考えます。広告費は視聴率を基に請求しますから、このギャップは広告効果の検証の際に次第に顕在化するものと考えられます。

また、地上波デジタルへの移行も大きな懸念材料となります。かつて、レコードからカセットへ、カセットからCDへと音楽のメディアが移行する時期に高年齢者層が振り落とされ、それが演歌というジャンルが衰退する一つの契機となりました。地デジへの移行のためのハードウエア買い替えに伴い、何らかの変化が起こる可能性はゼロではないでしょう。

一方、インターネットはあいにく広告メディアとしてまだまだ予算が小さくそもそも削る余地が小さいということもありますが、広告効果の検証が比較的行いやすいこと、予算にスケーラビリティがある(段階的に増減させやすい)こと、モバイルも含めると若年層をカバーすること、エリア展開に放送のような規制がなく自由度が高いことなどのメリットがあります。テレビ予算を削ったものの何らかのプロモーションは必要であることから不況下でもテレビほど顕著に予算が削られず、一定の需要が続く可能性が高いと予想されます。全体的に予算が縮小する時代にはあまり顕在化しませんが底流での変化は不況で加速され、次の好況時には地殻変動が顕在化する可能性はかなり高いのではないでしょうか。

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