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Brand Strategy journal ブランド戦略通信

実践!ブランド戦略

第7回: 経済産業省のブランド評価モデルとは−その3−

Q 経済産業省ブランド価値評価モデルにある「LD(ロイヤルティ・ドライバー)」とは何でしょう。
A ロイヤルティの高い顧客によって安定した販売量が確保できることに着目したファクターです。

LD(ロイヤルティ・ドライバー)は、リピーターまたはロイヤルティの高い顧客が存在することによって、長期間にわたり一定の安定した販売量を確保できることに着目したファクターであり、ブランド価値の強度を示します。

安定性の指標としては売上原価の安定性を指標化しています。(図1)

定義式の分子には売上原価の過去5期平均とその標準偏差の差を取っていますが、標準偏差が小さいすなわち変動が小さいほど、平均から標準偏差を引いた値は大きくなります。その結果、ブランド価値としては大きな値が算出される、という結果が得られます。(なお、分母に平均値を取っているのはデータを相対化するためです。)

さて、問題は売上原価の安定性が本当に消費者のロイヤルティを表しているかどうか?という点です。

前回も触れましたが、売上原価はブランドの強さよりもむしろ為替や原材料価格、あるいはこれらを含む生産コストによって大きく左右されると考えられます。ですから、売上原価の安定性をブランド力の一つのファクターとするのには問題があります。

むしろ、「長期間にわたり一定の安定した販売量を確保できることに着目したファクター」というのであれば、販売数量の安定性を用いた方が素直です。

あるいは、消費者調査の結果を用いることも考えられます。報告書では、「統計上有意性を得られる人数の消費者に対して調査を行い、これを比較可能性のあるデータとして数値化し、また会計情報として捕捉することは事実上不可能」としています。しかし、たとえば上場企業に限るなど、ある程度対象企業を絞ることにより、有効な調査を行うことは十分可能です。顧客のロイヤルティを知りたいのであれば、なにも会計情報でなくても、直接尋ねたり購買行動を調べることにより、十分有益な情報が得られるでしょう。

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