ペルソナとはどのような特徴を持った技法でしょうか。 | |
単なる分析手段ではなく、クリエイティブ性を兼ね備えたコミュニケーション技法であると考えます。 |
「ペルソナ」とはもともと「パーソナリティ」と語源を同じくする言葉です。日本語で「性格」と訳される言葉にはパーソナリティのほかに「キャラクター」という言葉がありますが、キャラクターはその人が自然に持つ性質を現すのに対し、パーソナリティは元来「仮面」という言葉から来たものであり、ある社会的な規範をまとった性格、というような意味合いを持ちます。
マーケティング用語におけるペルソナも、特定の人物の性格を現すのではなく、ターゲットとなる複数の人の性格を併せ持つような仮想の人物像を表したものです。このような人物を一人、ないしは複数設定することによって、無限の可能性を論じるのではなく、最も重要な対象者にフォーカスした施策を具体的に設定することができ、その結果、よりユーザー視点に立った製品開発につなげることができます。
ペルソナの設定にはまずターゲットが誰で、どのような特徴を持つのかを明確化することから始まります。その根拠は定量的なデータであることが望ましいのですが、時にはグループインタビューから得られた定性的な情報や、各種統計資料などから得られる2次的なデータだけで済ませることもあります。
ここで、ユーザー像というと、たとえば10代が70%、そのうち男性が50%、などと示すのが科学的なあり方といえます。しかし、ペルソナではあえて典型的なユーザーを「A男くん。小学5年生。趣味は夜空を望遠鏡で眺めること。将来の夢は宇宙飛行士になること。」などと示します。こうした抽象化は科学的データで得たユーザー属性だけで必ずしも説明がつくとは限りません。むしろ、ペルソナの設定自体は科学をベースとしながらもかなりクリエイティブな領域に入るものといえるでしょう。しかし、そうすることで関係者間のコミュニケーションの有力なツールとなります。
問題は小学生高学年というだけでは5年生か6年生か特定できない、男の子と女の子は半々でいるはずだ、だから今回提示されたこのペルソナ以外にも色々あるはずだ、全部洗い出せ、という類の議論を延々と続けることで、これはペルソナを採用する元来の趣旨に反するものとなります。ペルソナを効果的なものとする上で最も重要なことの一つは、プロジェクトの途中でペルソナ採用の是非を議論するのではなく、ペルソナをプロジェクトをスタートするときからの一つのコミュニケーション上の約束事として進めることであると考えられます。
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