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Brand Strategy journal ブランド戦略通信

実践!ブランド戦略

第48回:ブランドの過剰露出

Q あまり目に付きすぎるとかえってブランドの価値が下がるといいますが、本当に露出を抑えるのはよいのでしょうか。
A 希少価値を訴求できるものには当てはまりますが、大量生産を前提としたものには該当しないことが多いでしょう。

アパレル関係のブランド品では、何かをきっかけにブームになって、先を争って同じものを皆が購入しようとした結果、気がつくと自分の周囲の人がそろって自分と同じものを身につけていた、ということがあります。そうすると、今度は急速に熱が冷めて、他の人が持っているからという理由で敬遠する人が増えます。このようにして、一時ブームになりながら、その後低迷するブランドは少なくありません。

そこで、ほどほどに露出しつつ、あまり過剰に露出することは控える、という管理が必要になることがあります。

このような管理が重要になるものとして、一つには希少性が価値を生むような製品があります。たとえば、ある土地でしか採れない厳選された天然の素材を使い、技能を認定された数少ない職人が手間隙かけて丁寧に作った、ということが一つの売り文句の製品であれば、やたらと生産を増やせない(はずだ)という連想が働き、希少価値を生み、所有する喜びを生みます。その期待を裏切るように大量に製品が出回るのはすでに持っている人にとって面白くない状況になります。

しかし、自動車や家電製品のような大量生産を前提とした製品では、供給を絞り、高価格を維持しようとしても、競争相手がいれば希少性をコントロールすることは非常に困難です。また、高品質の製品を手頃な価格で提供できる背景には優れた技術があるという場合が少なくありません。このような製品分野では、その分野のパイオニアであるとか、売上No1であるといったイメージは好ましいものになりますので、むしろ売れるときに売る方がよい選択になると考えられます。

この場合、いずれ普及率が高くなって売れなくなる製品については、普及を遅らせて価格を維持しようとする選択はあまり一般的ではないと思います。むしろ、技術革新などで新たな製品ジャンルを開拓した方がブランド価値を高める結果につながるでしょう。

【榛沢明浩】

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