いわゆる再生案件においてブランド価値はどのように扱われるべきでしょうか。 | |
現状でのキャッシュフローにとどまらず、ブランド再生の可能性や難易度、必要追加コストなどを総合的に判断すべきです。 |
企業が経営不振となり、再生が必要になった場合、最終的には営業の一部または全部を譲渡するなどの形でスポンサー企業に再生の支援をしてもらうことがあります。
とくに、再生案件がブランドを所有している場合、支援者側としてはいかに再生の可能性を見極め、買収価格を設定すべきでしょうか。
おそらく、多くの場合、ブランドの母体となる経営が揺らいでいるために、企業の収益力が著しく損なわれ、全体としてはキャッシュフローを生み出していない状況にあると思います。そこで、不振企業からブランドを分離し、ブランドが超過収益力を生み出す余地を残しているかどうかを検討することが必要となることがあります。
こうしたケースにおいて、再生の難易度を大きく左右する一つの要因として、どれだけロイヤルティが高いユーザーをそのブランドが維持しているか、が挙げられます(図)。
たとえ同じだけのユーザーがいたとしても、ロイヤルティの低いユーザーがいる大半を占めるブランドでは、母体企業が再生案件となったというだけでユーザーが速やかに離れていく事態も予想されます。
一方、熱烈なロイヤルユーザーがいるブランドでは、ユーザーは容易に離れないでしょうし、それ以上に自分にとって大切なブランドを積極的に支持してくれるかもしれません。
このような状態は、顧客の支持を回復し、再生に向けて顧客層を拡大すべきブランドにとって強力な援軍となります。
このように、そのブランドのロイヤルティのピラミッドがどのような構成になっているのかは、ブランドの持続性を決めると同時に、そのブランドを再生させるために求められる追加投資の規模を規定し、ひいてはそのブランドの再生可能性を大きく左右することになります。
印刷する