日本メーカーは技術では負けていないのに競争力に結び付かないのはなぜでしょう。 | |
技術の様々な側面の中で特定の部分だけに注目した議論には注意が必要です。 |
海外メーカーとの競争に敗れた日本メーカーについて、技術では勝っていたが経営で負けた、などという言い方をされることがよくあります。
「より微細に作る」「より均質に作る」といった要素技術の比較では、確かに日本メーカーに優れた部分が多いようです。
では、より低コストで生産する、より早くマーケットに送り出す、といった技術ではどうでしょうか。
かつて、世界を席巻した日本の半導体は次第にシェアを失っていきましたが、それは世界のコンピューター市場が汎用機、オフコンからパソコンへとダウンサイジングしてゆく時期と重なっています。
日本が得意とする大型コンピューター向けのDRAMは、数十年の動作保証が求められる高品質・高価格品の世界でした。しかし、5年もすれば買い替えが行われるパソコン向けにはそこまでの高品質は必要ありません。そこそこの性能、品質でより低価格の製品が求められるようになったのです。しかし、低コスト化技術は高級品用技術をそのまま簡略化するようなものではありません。スループットを最大化するための回路設計、生産技術の見直し、生産管理方法など、従来の技術の延長とは異なる技術体系が求められ、その実現の過程で技術革新というべき技術水準が達成されます。これは単に固定費を削減するとか、仕入れコストを削減するということで達成されるものと質的に異なります。
これまで、ビジネスモデルの優劣という中に、どちらかといえば他社との提携、水平分業体制といった技術以外の要因というニュアンスが込めて論じられているようなものを見受けることが多かったように感じます。日本メーカーの技術力といったときに、それは要素技術、あるいは従来は有効だった技術領域に偏った議論がなされていないか、冷静に考える必要があります。
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