豆腐にナショナルブランドがないのはなぜでしょう。 | |
分野調整法により大企業の参入が制限されているからです。 |
飲食業界では「商売と屏風は広げ過ぎると倒れる」という格言があります。豆腐業界では「豆腐屋と『できもの』は大きくなるとつぶれる」といわれているそうです。ことほどさように、豆腐は日本人の日常に深く定着したポピュラーな食品であるにも関わらず、大企業が全国規模で展開するナショナルブランドがありません。
これは、分野調整法(分調法、正式には「中小企業の事業活動の機会の確保のための大企業者の事業活動の調整に関する法律」)によって大企業の参入が制限されているからです。
この法律は、中小企業が多い業界に大企業が参入し、あるいは既に参入していても業容を拡大しようとした場合に、中小企業がクレームすることによって大企業の動きを事実上、ストップできるという法律です。これにはかつて、森永乳業が豆腐業界に参入しようとしたが、この法律によって阻止され、同社はやむなく米国に販路を求めたという先例があります。
では、どのような業界でこの法律に該当するかというと、法律では「相当数の中小企業の経営に悪影響を及ぼすおそれがあるとき」というだけで、具体的には記されていません(適用除外業種はあります)。別途省令などで定められているわけでもありません(自分たちの業界に参入するとこの法律の対象にする、と表明している業界はあります)。解釈の仕方次第で、実に広範囲に規制がかかる可能性があります。
しかし、じつは分野調整法の適用例は非常に限られています。これは、水面下で事業化を検討したが、本法に抵触する可能性を懸念して断念したため、表面化しなかったケースが多いからと考えられます。先行事例としていまだに何十年も前の森永乳業が取り上げられるのはこの点も関係しているようです。
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