製品の不適切な使い方に起因する社会問題に対する対応はどのようにしたらよいでしょう。 | |
製品市場の健全な発展を維持するための継続的な啓蒙活動が重要と考えられます。 |
一つのたとえ話として、包丁を凶器として用いた傷害事件において、非難されるべきはあくまで包丁で人を切りつけた人であって、包丁を作った職人や販売店ではないという言い方がされることがあります。
しかし、世の中はそのような道理だけで片付くとは限りません。職人やお店に非難が向かうようなことは可能性としてはゼロではありません。その結果、非常に危険性の高い刃物だけが規制されるにとどまらず、あらゆる刃物の製造、販売が禁止されるという潜在的なリスクを事業者は抱えています。
同様のリスクを抱えたる製品・サービスは数多くあります。
たとえば自動車メーカーは交通事故によって非難の矢面に立たされる可能性があります。酒造メーカーはアルコール中毒、青少年の飲酒といった社会的問題の非難の矛先が向かわないとは限りません。たばこにも同様の問題があります。
これに対して、責任あるメーカーは交通安全教育、青少年に対する啓蒙、喫煙のマナー向上など、さまざまな社会活動に取り組んでいます。これらは一義的には社会貢献活動ですが、本業に関係があり、利用者を啓蒙して責任ある行動を促し、市場の健全性の維持を図るものです。利用者啓蒙活動の意義として、製品の社会性を高め、社会的問題から生じる事業リスクを低減させることを挙げることができます。
こうした活動は直接収益を生むものではありません。またリスクは顕在化しないままのことが少なくありません。そのため費用対効果の検証はきわめて困難です。むしろ、裁量的経費の中でどのように行うかといった企業姿勢が求められるテーマと考えられます。
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