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Brand Strategy journal ブランド戦略通信

実践!ブランド戦略

第23回:ブランドの戦略的買収

Q ブランドを戦略的に買収するとはどういうことでしょう。
A 戦略的に潜在能力を引き出し、相乗効果によってブランド価値を高めることを前提とした買収です。

企業のM&Aにおける買収価格の考え方のひとつに、現在保有している資産価値や収益力を基準にする方法があります。このような考え方に基づいて行動する買い手のことを「財務的買い手」(Financial Buyer)といいます。

財務的買い手は、ブランドを買収しようとする場合、そのブランドのキャッシュフローの見通しに基づいて価値を算定します。さらに、そのブランドを持っている企業ごと買収する場合には、その企業のキャッシュフローの中にブランド価値は含まれているので、ブランド価値部分を別途評価する必要はないと考えます。

これに対して、自社の経営資源との相乗効果を考え、ターゲット企業との潜在的な能力を積極的に引き出し、そこから見込まれる将来の期待収益に基づいて買収価格を算定する買い手がいます。このようなスタンスに立つ買い手のことを「戦略的買い手」(Strategic Buyer)といいます。

戦略的買い手がブランドを買収しようとする場合には、買収対象のブランドと自社の経営資源をどのようにマッチングさせれば相乗効果が得られるかを検討します。また、自社ブランドに新たなブランドが加わることによるレバレッジ効果を検討します。

誰が見ても客観的な価格が一つ存在し、それに基づいて計算された価格が妥当なものであるとする財務的買い手の考え方は、一見正しいように思えます。しかし、実は必ずしもそうとは限りません。

たとえば、宝飾品やアパレルなどの高級ブランドは、それにふさわしい一流百貨店でしか買えないように流通をコントロールすれば本来の価値を引き出すことができますが、ディスカウントストアに大量に出回るとなれば、やはりブランドとしてのありがたみは低下せざるを得ないでしょう。

このように、買収したブランドへの関与の仕方次第でブランドの将来価値を左右することができるため、戦略的買い手は財務的買い手より柔軟にブランドの買収価格を決めることができるといえます。

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