話し手 |
全日本空輸株式会社 IR推進室 主席部員
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好感度や購入意欲向上に高い効果
【図1】企業情報
「企業好感度が20.6%アップ」「個人で製品・サービスを購入したい人が27.3%増加」——。これはいずれも全日本空輸(以下ANA)の企業情報サイト(【図1】)の閲覧による効果である(数値は、閲覧したユーザーの評価から閲覧していないユーザーの評価を引いたもの)。調査対象250社の平均は好感度が6.6%、製品・サービスの購入意欲が5.1%であり、その効果は際立って高く、企業情報サイトがブランド力向上に大いに貢献している様子がうかがえる。航空チケットのインターネット販売などコマーシャルサイトを展開するANAにとって、販売促進の一助になっていることも読み取れる。
高評価の要因はいくつか考えられる。まずは、トップページ下の目立つところに配置された、“ユーザーの声による改善点紹介コンテンツ”である。これは、ユーザーの意見をフィードバックさせて業務やWebサイトの内容を改善した結果を紹介するものだ。「お客様からはメールや電話、手紙を通じて半年で3万件も意見が寄せられる。ANAでは行動指針で『お客様の声に徹底してこだわる』という目標を掲げており、それら一つひとつに対してCS推進会議の場で協議し、誠実に回答している。その一部をWebサイト上で紹介している」と、全日本空輸株式会社IR推進室主席部員の浅井道浩氏は話す。
ユーザーの声は改善点の源泉が宿る、いわば、宝の山である。こうした宝に丁寧に対応することは実サービスでのCS向上につながるとともに、その姿勢も高く評価される。その結果、ブランド力が向上すると言う一石二鳥の役割をこのコンテンツは果たしている。
CSR・環境情報にも注力
【図2】CSR・環境活動
【表1】全日本空輸HPの歴史
一方、「CSR・環境活動」もキーコンテンツだ。「2005年度からCSRに本格的に取り組むためにCSR推進委員会が社内組織として発足した。その活動を環境情報も含めてWebサイト上でひとまとまりで紹介するページを『CSR・環境情報』として、05年末に設けた(【表1】)」(浅井氏)。CSRや環境活動のトピックスの紹介やレポートの掲載といったオーソドックスな内容のほか、ANAが03年から毎年開催している国際環境絵本コンクールの情報提供にも注力する。ページでは大賞を受賞した絵本の内容を掲載したり、受賞者のインタビューを載せるなど、様々な工夫を凝らす。結果的に、子供から大人まで楽しめるような情報訴求力の高いものに仕上がっている。また、環境活動では、植林や珊瑚礁の保護などの取り組みも積極的にPRする。
このコンテンツは、従来の「環境と安全」という見出しを、最近のキーワードである「CSR」に改めた形だが、その際、安全はあえて「安全・運行情報」という独立させた項目として残した。「昨今、安全は一般の方からの注目が高い。また、安全については社内でも非常にこだわっている部分である」(浅井氏)というのがその理由だ。
そのほか、「会社情報」や「グループ理念」、「機体工場見学」などのコンテンツも、コンパクトな文章と内容でわかりやすくまとめられているのもポイントである。また色使いもコーポレートカラーであるブルーを基調に、シンプルに仕上げている。こうした各々のコンテンツやページのイメージが総合力となって、好感度アップや製品・サービス意欲の向上につながっていると思われる。
企業情報のプレゼンス向上が課題
【図3】ANA 全日空—投資家情報
2002年7月以来Webサイト全体の大規模なリニューアルは実施されてなく、今後もその予定は立っていない。しかし、「現状に決して満足しているわけではない」と浅井氏は言う。「アクセシビリティの向上が課題。例えば、現時点ではIR情報サイト(【図3】)が企業情報サイトに含まれていないが、リンクを張り動線を確保するかどうかが検討事項。コマーシャルサイトにおける位置付けも、現在はトップページ下に『企業情報』という小さいボタンがあるだけで、認知率が低いので、この扱いの大きさも検討しなければならない。コマーシャルサイトのトップページで認知率の向上が図れないのであれば、独立した本格的な『企業情報サイト』を開設することも視野に入れる必要がある」。
IR情報サイトのブラッシュアップにも積極的に取り組む。06年4月には個人投資家向けページを新たに設けるなど大幅なリニューアルを実施した。「株主、機関投資家、個人投資家の各ステークホルダーがいち早く必要な情報にアクセスできるように改善した。今後もより使い勝手のよいコンテンツを目指す」(浅井氏)。
動線の確保や内容の充実を通じて企業情報サイトのプレゼンスが上がれば、更なるブランド力のアップ、インターネットチケット販売への誘導を図れることになる。これからも、ANAの取り組みに注目したい。
全日本空輸のWebサイト構築のポイント |
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