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Brand Strategy journal ブランド戦略通信

実践!ブランド戦略

第127回:専門家集団のブランド力

Q 監査法人を始めとする専門家集団のブランド力の源泉はどこにありますか。
A 高度な職業倫理に基づくと考えられます。

上場企業において不正経理事件が起きると、経営者の責任が問われるだけでなく、担当した監査法人の責任が問われることがあります。

そうした場合の監査法人の言い分としてしばしば聞かれるものは「我々は捜査機関ではなく、その会社が本気で隠そうとしたことを暴くことはできない。」、そして、「監査は適正に行われたので問題はない。」というものです。

これには「だったら監査など意味がないのではないか」と言いたくなる向きもあるかもしれませんが、実際には「適正に」(この場合は「形式的な」ではなく「みっちり」の意味)行った結果、指摘事項が見つかることがあります。とりわけ重大な指摘事項が見つかった場合、「このままでは適正意見を出すことができない」といった警告を企業に対して発することになります。企業はそれを受けて「そうは言ってもそこを何とか」と言って通してもらおうとするところもあれば、言い分を認めてくれない監査法人をチェンジしてしまうという荒っぽいことをするところもあります。それに対する監査法人の対応もさまざまですが、結果的に、監査法人の中には事故に巻き込まれることが比較的多いところと少ないところがあります。

では、「当法人は不正経理を見逃さず厳正に指摘します」ということは監査法人のセールスポイントになるでしょうか。むしろ、企業には敬遠されることの方が多いのではないかと考えられます。投資家にとっても知る人ぞ知る存在で、株価にプラスかというと、それも関係なさそうに見えます。それでも「みっちり」やろうとする姿勢に違いがあるのはなぜか。根底には監査制度に立脚した自分たちの使命に対する職業的倫理観があるように思います。監査法人に限らず、専門家集団と言われる人たちのブランド力は、こうした部分に立脚するからこそ価値があると考えられます。

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