外資系のサプライヤーが日本メーカーを後回しにするのはなぜでしょう。 | |
数量や支払サイトなどの取引条件が悪いことが挙げられます。 |
世界的なスマートフォン市場拡大の中で、クアルコム社が半導体の供給を選別し、サムスンなど大口ユーザーの供給を優先した結果、そのあおりで日系メーカーの製品出荷が大幅に遅れるという出来事がありました。
かつて、日系メーカーが市場を席巻していた時代にはあまり顕在化しなかった問題ですが、今日ではグローバルな競争環境のもと、サプライチェーンもグローバルな視点で構築する必要が高まっています。
日本メーカーとそのサプライヤーとの関係は水平的なものというより垂直的なもの、よりありていにいえばサプライヤーをいわゆる「下請け扱い」する関係が観察されます。そこに外資系メーカーが参加したとき、その関係は日系企業との取引がきわめて条件が悪いという形で顕在化します。
これは単純な取引数量の多寡の問題にとどまりません。根が深い問題の一つに「売掛金問題」があります。半導体メーカーに納入する装置の支払いは、日本では検収後9ヶ月と長いのに対し、海外では検収月に90%で残りは翌月(出所:菊地正典「半導体工場のすべて」ダイヤモンド社)と大きな隔たりがあります。これでは、たとえ他の取引条件が同一でも、日系メーカーへの供給はできれば避けたい、とくにまとまった数量の供給は大きな経営リスクと考えて尻込みする外資系企業がいても不思議はないでしょう。
もっとも、既に競争力が大きく低下してしまった現状では、取引条件の改善にもおいそれとは乗り出せないのが多くのメーカーに共通する状況ではないかと推察されます。したがって、本来は各社の自主的な取り組みに委ねるべき問題ですが、取引の適正化の観点から何らかの規制が行われる方が、むしろ問題解決が進展する可能性が高いように思われます。
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