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Brand Strategy journal ブランド戦略通信

実践!ブランド戦略

第8回: 経済産業省のブランド評価モデルとは−その4−

Q 経済産業省ブランド価値評価モデルにある「ED(エクスパンション・ドライバー)」とは何でしょう
A ブランドの拡張力に着目したファクターです。
図1

ED(エクスパンション・ドライバー)は、ステータスの高いブランドは認知度も高く、本来の業種または本来の市場にとどまらずに、類似業種、異業種、海外等他の地域へ進出する拡張力を持つことに着目したファクターです。

EDは企業全体の海外売上高成長率と非本業セグメント売上高成長率の平均をとることによって算出します。(図1参照)

なぜ異なる2つの成長率を平均するのか報告書では触れていないので理解できませんが、そういう初歩的なことよりも、問題はそもそも海外売上高の成長率はブランド力を表しているか、また本業以外の売上成長率はブランド力を表しているか、という点にあると思います。

たとえば魚沼産コシヒカリのように、米という単一商品のブランドで、もっぱら国内向けに作られている、しかも高いブランド力を持っているというような、本業一筋、地域限定のブランドの価値は、この計算方法では非常に小さく評価されてしまいます。しかし、この結果が妥当かどうか大いに疑問です。

何をもって本業とするか、も問題です。報告書では公表財務諸表で最大規模のセグメントを本業とする、としています。しかし、連結財務諸表のセグメント別売上の大きさだけでその会社の本業が判断できるとはとても思えません。たとえば、キヤノンの売上構成は事務機76%、カメラ17%、光学機器他8%となっていますが、これだけで事務機が本業、カメラと光学機器が多角化事業と断定することは難しいと考えられます。

これまで数回に分けて経産省モデルの3つのドライバーを一つ一つ検証してきました。その結果、モデルの計算式がいかにブランド本来の考え方とかけ離れたものであるか、ご理解いただけたかと思います。

このような結果となったのは、以前にも述べたように、財務諸表に現れた結果だけでブランド力を評価することを最初から前提にしてしまったことにあります。そのため、無理を重ねてしまったものと思われます。

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