ブランド戦略通信 │トライベック・ブランド戦略研究所

IT企業のブランド戦略

第9回:ブランド拡張−ソニーのブランド戦略

「ブランド拡張」とは既存ブランドのブランドエクイティを活用し、新しい市場の進出することをいう。

ソニーは多くの製品分野でこのブランド拡張を成し遂げてきたが、その原動力は同社が数多く保有する強い製品ブランドにある。その背景には同社が電機メーカーの中でもとりわけ製品ブランドを大切にし、育成に取り組んできたことがある。

一つの象徴的な表れがネーミングである。ソニー製品のネーミングには優れたものが少なくない。

たとえばプレイステーション。働くためのコンピュータがワークステーションなら遊ぶためのコンピュータがプレイステーション、という名前の由来も洒落ているが、何より音韻がよい。母音の【ei】が繰り返され、韻を踏んでいる。サイバーショットもそうだ。こちらの方は子音の【s】が頭韻となっている。おまけにSonyの【s】とも共通だ。これらは決して偶然ではない。グローバルな市場まで視野に入れ、緻密に計算されている。

このように、製品を生み出した当初からそのブランドをいかにカテゴリーを代表するものに育て上げるか、ということを意識し、マーケティングでも製品ブランドをしっかり訴求している。

こうした姿勢は同社のウェブサイトにも端的に現れている。

同社の製品情報サイトであるSony Driveを見ると、VAIOなどのブランド別と、コンピュータなどのカテゴリー別との2種類の切り口で製品分類行われている。そして、最初に訪問したときはブランド別の分類の方が先に目に入るようになっており、しかも違和感がない。他の電機メーカー、とりわけ生活家電のメーカーのサイトでは、分類方法としてはあくまで洗濯機、冷蔵庫などのカテゴリー別が主、製品ブランドは従の位置付けにあることが多い。

拡張を繰り返しつつ大きく変貌を遂げたブランドの代表例がウォークマンだ。初代ウォークマンはカセットテープのモデルとして発売された。その後、CDプレーヤー、MDプレーヤーと記録メディアの変遷を追って製品が拡大し、今日ではiPodと並ぶ携帯用デジタルオーディオプレーヤーの代名詞となっている。初代ウォークマンがあまりぱっとしなブランドだったら、下手をすると世代ごとに異なるブランド名を採用することになっていたかもしれない。そして、それぞれが各世代のピークアウトとともに消え去ったかもしれない。ブランドを上手に拡張しつつ、市場の変化を的確に捉えて常に新鮮さを保つ好例といえよう。

※本コラムは、2006年11月〜2007年4月にかけて「japan.internet.com」に掲載された内容に加筆・修正したものです。

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