ブランドの金額評価は必要か
金額評価が必要とする見解は以下の根拠を挙げています。
- 金額で表されてこそマネジメントの対象となる。
- 社標使用料を徴収する根拠となる。
- トップマネジメントに対する強いインパクトがある。
もっとも、これらの根拠は必ずしも説得的とは言い切れません。たとえば、金額で表されなくてもマネジメントの対象となるものとして社員のモチベーションなどが挙げられます。
むしろ、算定の過程で用いられた前提条件が、その企業のマネジメントに対してどのような示唆をもたらすかが重要となります。
経済産業省のブランド価値評価モデル(参考) 概要
経済産業省のブランド価値評価モデルは以下のようなモデルです。
- 使用データは公表財務諸表を中心とする客観的財務データのみ
- 認知度などの定性要因を指数化するマーケティング・アプローチでブランドを金銭的に評価することは、測定の信頼性を欠くと判断
- ブランド価値の評価は連結ベースで行う
- 企業集団内の全てのブランド価値を連結財務諸表をベースとして算定
- コーポレー・ブランドの価値と製品ブランドの価値の切り分けはせず
- ブランド価値の構成要素は3つ
- プレステージ・ドライバー(PD) → 価格プレミアム
ブランド価値を有する製品の方がノン・ブランド製品よりも高い価値で販売できる。
- ロイヤルティ・ドライバー(LD) → ロイヤルティ
ブランド価値を有することで、顧客に反復・継続して購入してもらえる。
- エクスパンション・ドライバー(ED) → ブランドの拡張力
ステイタスの高いブランドは、本来の業種や市場に留まらずに、類似業種や異業種、海外市場に進出する。
- プレステージ・ドライバー(PD) → 価格プレミアム
経産省モデルの問題点
経済産業省モデルに対しては批判が強く、現状では企業での適用事例はあまりないようです。
主な問題点は以下の通りですが、これらの問題を生んでいる根本的な原因は財務諸表上に計上された数値のみで計算するという前提条件にあると考えられます。
- PD
- 広告宣伝費とブランド価値が比例するという仮定は疑問
- 価格プレミアムを評価している主張するが、式は原価率を評価
- LD
- 売上原価の安定性と顧客ロイヤルティは全く別物
- ED
- 海外売上高比率と本業以外売上比率がブランド力とが比例するとする仮定は無理