情報価値とは
Webサイト価値測定(Web Equity)では、企業の売上を拡大するのに貢献している価値「売上価値」のほかに、企業活動の中で情報発信することによってブランド価値や企業価値を高める価値「情報価値」も測定している(昨年まではこの価値のことを「潜在価値」と呼んでいたが、その内容をわかりやすくするために、今年から「情報価値」と呼ぶことにした)。
「情報価値」は、売上への貢献は必ずしも顕在化していないが、商品や企業に関しての情報を発信することで、その企業価値やブランド価値を高めることに貢献している。
その価値を金額換算するにあたっては、「Webサイトで発信される情報を、他のメディアで代替した場合、いくらぐらいのコストがかかるか」というアプローチ(コストアプローチ=再構築費用法)で算出した。
また、測定に当たっては、発信される情報の受け手が不特定多数であるのか、特定の人であるのか、あるいは特定の中でも企業の商品やサービスを購入した顧客であるか、という側面から、「広報宣伝価値」、「販売促進価値」、「顧客満足価値」の3つに分類して価値を算出した。
また、これらの価値は、それぞれが「サイトを見て情報を得る」という行動と、「情報を得て何らかの行動をとる」という2つの側面から消費者側のアクションに大別することが出来る。そこで、それぞれの行動から「PV(ページビュー)価値」と「行動価値」という2つの価値を算出し、それらを合計して価値を算出するという方法をとった。
PV価値
「PV価値」とは、Webサイトの各ページがどれだけの情報を伝えたのかを価値換算し合計したものである。PV価値の算出に当たっては、メディアとしての特性が最も似ている雑誌広告の料金に置き換えて算出した。つまりある商品のページを10万人が見た(10万PV)とした場合、それは10万部発行している同分野の雑誌に広告を出稿する場合のコストに置き換えた。その具体的な算出式は以下のようになる。
PV価値(年間) = 月間PV × 12 × 関連ページの比率 ×関連ページの単価 × 評価指数
月間PVについては、ビデオリサーチインタラクティブによるインターネット視聴率調査から、2003年10月から2004年3月までの半年間における月平均の該当企業の推定PVを採用した。ただし、このインターネット視聴率調査は、家庭内ユーザーを対象にしているため、企業ユーザーからのアクセスは含まれていない。
また、同じPVであっても、そのページの質によって効果は異なってくる。そこで消費者に各社のページを実際に見てもらってイメージ、再訪問意欲、商品購入意欲などの点から評価をしてもらい、その結果から「評価指数」(最低が1で最高が2)を算定してPVにかけた。
行動価値
「行動価値」とは、サイト上でアクセス者が行った様々な行動(アクション)を価値換算したものである。価値算出にあたっては、各行動をした人の人数と各行動の単価の2つから算出した。したがって、基本的な算出式は以下のようになる。
行動価値 = Σ(各サイト上での行動数 × 各サイト上での行動の単価 × 定数 )
ここで、各行動の単価は、同等の行動を別の方法で行った場合にかかる最低の金額とした。例えばメールマガジンの購読であればハガキ郵送代の50円など。ただしこの行動数については、すべて消費者調査から算出したため、企業が把握している数値とは異なっている。例えばメルマガは発送数ではなく、消費者が読んでいる「購読数」が算出の対象になっている。
算出の対象とした消費者の「行動」は以下の通り。
- 会員登録
- メールマガジンの購読数
- インターネットでのアンケート応募数
- インターネットでのキャンペーン応募数
- ソフトやドライバーのダウンロード数
- 商品取扱説明書のダウンロード数
- Webサイトに関する問い合わせ数
- 商品に関する問い合わせ数
- 資料請求や見積もりの依頼数
なお、インターネットの”活性化人口”は、消費者調査(郵送調査)の結果と、有力企業へのメルマガ会員数(開封数)などのヒアリングの結果、インターネット視聴率の結果と消費者調査(インターネット調査)などの結果をもとに、今回の調査では3000万人に相当すると推定。これをもとに、上記の式の定数を策定した。
情報価値ランキング
さて、Web Equity2004で、最も「情報価値」が大きいと算出されたのはマイクロソフト(http://www.microsoft.com/japan/)で245億円だった。同社のサイトは 広報宣伝価値(87億円)と、顧客満足価値(92億円)のそれぞれのランキングでも1位になっている。
同社のサイトは製品情報以外に、OSやソフトなどのアップデートとしての活用がされているほか、サポートサービス(自分で調べる無償のサービスと、電話やメールによる有償サービスなどがある)、ブログやテクニカルチャットなどのコミュニティなどがある。中でも「マイクロソフト コミュニティブログ」(http://www.microsoft.com/japan/communities/blogs/default.mspx)はマイクロソフト社員によるマイクロソフトの製品やテクノロジに関するブログ。
話題のブログに対して、さまざまな懸念から取り組むことに二の足を踏んでいる企業が多い中で、マイクロソフトは積極的に取り組んでいる。
2位はソニー(http://www.sony.co.jp)で188億円。「広報宣伝価値」では2位、「顧客満足価値」では4位といずれも高い価値となった。
3位はカタログ通信販売大手の千趣会で170億円と算出された。なかでも「販売促進価値」は、他の情報価値と比べて1.5倍以上の価値になっている。
4位はデルで143億円。「広報宣伝価値」より、ターゲットを絞った「販売促進価値」そして「顧客満足価値」の方が高いのが特徴。
5位は通信販売大手のニッセンで129億円。同社は「販売促進価値」が他の情報価値と比べて高い。
その他の企業は、IT産業では松下やキヤノンなどが上位に、自動車産業ではトヨタ、ホンダなどが上位にランクインしている。
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