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第16回:企業・機関の事件・事故に対する消費者の意識調査(2)

企業などが起した事件・事故の意識調査、前回に引き続き今回は企業の信頼回復に向けた取り組みを、消費者がどのように見ているのかを探っていきます。

信頼回復には情報公開が重要

まず、「事件・事故を起した企業の信頼回復にとって有効であると思う対応は?」という質問の結果から見ていきましょう。

1位は「情報を公開する」(93%)、2位は「被害を蒙った人に対する補償を、誠意を持って行う」(81%)、3位は「その後の経緯を継続的に公表する」(80%)という結果になりました。消費者は、事件・事故に対し、「何が起きたのか」「なぜ起きたのか」「今後はどうするつもりなのか」といった情報が適切に開示されていくことが重要であると考えているようです。そして、4位「事件・事故の温床となった組織を改革する」(71%)、5位「行政や業界とともに安全のための基準の策定や見直しを行う」(65%)、6位「事件・事故の対象となった商品の販売を中止する」(63%)、7位「第三者の声を反映できる仕組みを作る」(63%)、8位「謝罪を行う」(61%)、9位「事件・事故の対象となった商品の改良品を開発する」(41%)、10位「責任者の処分を行う」(37%)と続きます。

男女別では男性よりも女性の方が「被害を蒙った人への補償を、誠意を持って行う」「その後の経緯を継続的に公表する」「謝罪を行う」をより重視しているようです。

また、年代別では、20代が「謝罪を行う」「事件・事故の対象となった商品の改良品を開発する」を挙げた人の比率が他年代よりも高く、50代以上では「補償」「経緯を継続的に公表」「組織改革」「販売中止」「第三者の声」などの項目について高い比率となっています。また、30代は他年代と比較し各項目ともに数値が低く、企業が事件・事故を起こした時の信頼回復の難しさをより切実に感じている世代と言えるかもしれません。全体で最も数値の高かった「情報公開」については、男女・年代による差は見られませんでした。

  総合 男性 女性
:


-

20代 30代 40代 50代
以上
n 200 100 100 Pt 35 82 45 38
情報を公開する 93 93 92 1 91 93 93 92
被害を被った人に対する補償を誠意を持って行う 81 75 86 -11 86 78 76 87
その後の経緯を継続的に公表する 80 75 84 -9 86 74 78 87
事件・事故の温床となった組織を改革する 71 72 70 2 77 61 78 79
行政や業界とともに安全のための基準の策定や見直しを行う 65 63 67 -4 71 63 58 71
事件・事故の対象となった商品の販売を中止する 63 59 66 -7 66 56 62 74
第三者の声を反映できる仕組みを作る 63 60 65 -5 63 60 49 84
謝罪を行う 61 56 66 -10 77 63 51 53
事件・事故の対象となった商品の改良品を開発する 41 38 44 -6 49 38 42 39
責任者の処分を行う 37 36 37 -1 40 33 38 39
【表1】事件・事故を起こした後、企業の信頼回復にとって有効であると思う対応

※回答者の割合(%)、複数回答

※薄緑色は比率の高かった属性

※薄茶色は比率の低かった属性

事件・事故後の対応が評価できるのは、松下電器、不二家、雪印乳業

さて、最後の質問は「事件・事故後の対応が評価できる企業や機関」です。

評価できるとする人が最も多かったのは「松下電器(FF式石油暖房機の一酸化炭素中毒事故)」(67%)で、他企業・機関を大きく引き離しました。同社は新聞広告やテレビコマーシャルを使った大々的な告知活動と徹底した製品回収を行い、その真摯な対応が多くの消費者に支持されたようです。松下電器は男女・各世代を通じて支持されましたが、年代が上がるにつれて「評価できる」と回答する比率が上がっていくのが特徴的であると言えるでしょう。

不二家・雪印乳業も比較的多くの人から評価されました。「不二家(消費期限切れの原材料を使用)」(39%)は第三者が構成する信頼回復委員会で調査をし、報告書を外部に公表しただけでなく、「外部から不二家の発展を見守る会」を設置して、一時的ではなく継続的な改革を行おうという姿勢が評価されたものと思われます。「雪印乳業(食中毒事件)」(35%)は老舗ブランドを根底から揺るがした事件でしたが、その後、全従業員による行動基準の見直しや、役員間の情報共有の強化という態度に好感を持った人が多かったのでしょう。事件・事故の反省を生かそうという姿勢がよくわかる対応だったといえます。

以下「日本製紙(古紙配合率偽造)」(19%)、「関西テレビ(あるある大事典問題)」(11%)、「JAL(整備ミス)」(10%)、「三菱ふそうトラック・バス(リコール隠し)」(9%)、「ニチアス(耐火材偽装)」(8%)、「NHK(番組制作費の詐取)」(6%)、「社会保険庁(消えた年金)」(3%)という結果になりました。各社とも20%以下と低い数値で、消費者の理解を得られているとは言いがたい結果になりました。特に最も低かった社会保険庁については3%と殆ど評価されておらず、対応策として取った長官の給与返納も、社会保険事務所所長の民間登用も、信頼回復にはほとんど寄与していないことが伺えます。この評価の背景には、次々と発覚した同機関のずさんな業務運営が消費者の記憶に根強く残っていることも関係しているのでしょう。また、男女差を見ると、全般的に女性の数値が低くなっているのが特徴的です。前回ご報告した「許せない事件・事故ランキング」においても、女性の方が男性よりも事件・事故に対して厳しい見方をする、という結果でしたが、信頼回復へのハードルも女性のほうが高いようです。

  総合 男性 女性
:


-

20代 30代 40代 50代
以上
n 200 100 100 Pt 35 82 45 38
松下電器(FF式石油暖房機の一酸化炭素中毒事故) 67 70 64 6 60 61 76 76
不二家(消費期限切れの原材料を使用) 39 40 37 3 54 34 33 39
雪印乳業(食中毒事件) 35 33 36 -3 40 39 22 34
日本製紙(古紙配合率偽装) 19 14 23 -9 26 21 11 16
関西テレビ(あるある大事典問題) 11 14 8 6 6 7 9 26
JAL(整備ミス) 10 11 8 3 11 11 4 11
三菱ふそうトラック・バス(リコール隠し) 9 12 6 6 11 11 4 8
ニチアス(耐火材偽装) 8 11 4 7 20 5 4 5
NHK(番組制作費の詐取) 6 7 5 2 11 5 2 8
社会保険庁(消えた年金) 3 3 2 1 0 1 2 8
【表2】事件・事故後の対応が評価できる企業や機関

※回答者の割合(%)、複数回答

※薄緑色は比率の高かった属性

※薄茶色は比率の低かった属性

さて、2回にわたり、企業・機関の事件・事故に対する消費者の意識を探ってきました。

1口に事件と言ってもその内容によって消費者の受け止め方は様々ですが、いったん起こってしまうと企業の対応が消費者に評価されるようになるのは、なかなか大変なようです。

調査概要と結果

サンプル数 200(男女同数)
調査期間 2008年2月29日(金)〜3月1日(土)
調査対象 全国のインターネットユーザー(20歳以上/男女)から回答を得た
設問 Q1.以下のうち、あなたが許せないと思う事件・事故を選んでください(MA) /Q2企業の起こした事件・事故の公表について、以下のうちやむを得ないと思う状況を選んで下さい(MA)/Q3企業の事故・事件が発覚したとき、企業が取るべきだと思う行動は以下のうちのどれですか (MA)/Q4事件・事故を起こした後、企業の信頼回復にとって有効であると思う対応は以下のうちのどれですか (MA)/Q5事件・事故後の対応が評価できる企業や機関を以下よりお選び下さい(MA)
参考
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