食中毒、品質偽装、報道内容の捏造といった事件や事故が相次ぎ、企業や官庁への信頼が揺らいでいます。最近ではこうしたニュースが頻発しているため、「どうしてそんなことが起きたのか?」「信じられない」と思うより、「またか」と思う人も多いのではないでしょうか?
では、消費者はこうした事件、事故に対してどのように思っているのでしょう。今回は20代以上の男女100人ずつ、計200人にアンケートを取りました。今回は第一弾として、「許せないと思う事件・事故」「公表時、やむを得ない状況と思うもの」「事件、事故が発覚した時に取るべき行動」について聞いた結果を報告します。
また、次回は「信頼回復へ有効である対応」「事件・事故後の対応が評価できる企業、機関」についてご報告します。
許せないのは「人体への影響」、特に女性が事件・事故に対して厳しい態度
まず、対象者には、企業・機関の不祥事に関わる10項目のうち「許せないと思うもの」を選んでもらいました。1位になったのは「製品の危険性を知りながら販売を継続し、犠牲者を出した」(86%)。2位が「食品の安全性への配慮を怠り、食中毒を招いた」(82%)、3位が「建物の耐震性能を偽った」(80%)という結果になりました。人体への影響の大きいものに対しては、より「許せない」気持ちが高いようです。
次いで、「個人情報を流失した」(78%)、「質の低い材料を使用した製品を、高い材料を使用したものとして販売した(品質偽装)」(76%)、「遊園地の遊具の点検義務を怠り、事故を招いた」(76%)、「報道機関が報道内容を捏造し、企業や個人に損害を与えた」(76%)。「建築資材の防火性能、耐火性能を偽った」(69%)、「食品の表示が法で定められた基準と異なっていた」(60%)、「リサイクル商品でない物を、リサイクル商品として販売した」(39%)という結果になりました。
また、男女差を見てみると、女性の方が男性よりも全ての項目において回答者の割合が多いのが特徴でしょう。女性は事件・事故に対して、かなり厳しい視点を持っている事がわかります。特に「建築資材の防火性能、耐火性能を偽った」が10%、「遊園地の遊具の点検義務を怠り、事故を招いた」が8%も高くなっています。火事など、もしかしたら起こりうるかもしれない危機的状況に対して、男性よりもシビアであるようです。
では次に、年代別に見てみると、20代、30代、40代、50代以上という区分けで各項目の比率を出してみたのですが、「許せない事件・事故ランキング」では、50代以上の人の比率がどれも高いのが特徴です。そして、それとは反対に、いま社会で一番活躍しているであろう、30代、40代の比率が押しなべて低いのも印象的ですね。組織の難しさを実感している世代は事件・事故に対し、内部の事情を考慮する傾向があるのかもしれません。
そしてこの年代別で面白い結果となったのが、20代の比率です。特に「個人情報の流失」については、他の世代よりも高く、個人情報について敏感であることがうかがえます。
総合 | 男性 | 女性 | 差 : 男 性 女 性 |
20代 | 30代 | 40代 | 50代 以上 |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
n | 200 | 100 | 100 | P t | 35 | 82 | 45 | 385 |
製品の危険性を知りながら販売を継続し犠牲者を出した | 86 | 85 | 86 | -1.0 | 80 | 84 | 84 | 95 |
食品の安全性への配慮を怠り食中毒を招いた | 82 | 79 | 85 | -6.0 | 83 | 82 | 80 | 84 |
建物の耐震性能を偽った | 80 | 79 | 81 | -2.0 | 89 | 78 | 73 | 84 |
個人情報を流出した | 78 | 76 | 80 | -4.0 | 91 | 70 | 78 | 84 |
品質の低い材料を使用した製品を、高い材料を使用したものとして販売した(品質偽装) | 76 | 73 | 79 | -6.0 | 77 | 73 | 71 | 87 |
遊園地の遊具の点検義務を怠り事故を招いた | 76 | 72 | 80 | -8.0 | 80 | 76 | 71 | 79 |
報道機関が報道内容を捏造し、企業や個人に損害を与えた | 76 | 73 | 78 | -5.0 | 77 | 78 | 62 | 84 |
建築資材の防火性能・耐火性能を偽った | 69 | 64 | 74 | -10.0 | 71 | 67 | 60 | 82 |
食品の表示が法で定められた基準と異なっていた | 60 | 56 | 63 | -7.0 | 43 | 62 | 56 | 74 |
リサイクル商品でないものを、リサイクル商品として販売した | 39 | 38 | 40 | -2.0 | 43 | 38 | 24 | 55 |
【表1】許せないと思う事件・事故
※回答者の割合(%)、複数回答
※薄緑色は比率の高かった属性
※薄茶色は比率の低かった属性
消費者自身も、商品を「使う」側の責任を考えている
次に、「企業の起した事件・事故について、やむを得ないという状況を選んでくださいと聞いてみました。
1位は「消費者が使用上の注意を守らず、危険な使用方法で製品を使用した」(57%)、2位は「消費者が製品の経年劣化を無視して、長期間使用を続けた」(52%)と、消費者側の責任を問う項目にポイントが集まりました。何か事故が起きたからといって全て企業側の責任にするのではなく、「だれが悪いのか」と公平な視点で判断する、冷静な消費者の存在がうかがえます。3位は「材料の利用基準を関係役所に照会したところ、問題ないとの回答を得たため対応を誤った」(41%)、以下は「環境配慮型製品やリサイクル製品ではなくなるが、製品の品質はアップした」(32%)、「海外の生産委託先による毒物混入を事故後に初めて知った」(31%)、「関係役所に報告し指示を仰ごうとしたが放置された」(30%)、「事故の回避義務が自社にないため対応が遅れた」(17%)、「関係者に迷惑がかかると考え事実の公表を控えた」(15%)、「部品メーカーが製品メーカーに事故の公表を止められた」(14%)「部品メーカーが製品メーカーから一方的に責任を押し付ける公表をされた」(14%)という結果になりました。消費者側の責任についてはしっかり配慮しているが、企業側の事情などについては、厳しいといえるでしょう。
また、男女比でいうと、こちらは男性の方が、「やむを得ない」と考える傾向にあるようです。特に「関係役所に報告し指示を仰ごうとしたが放置された」「環境配慮型製品やリサイクル製品ではなくなるが、製品の品質はアップした」に関しては、それぞれ男性の方が16%、10%も多く回答しています。
また、年代でも意識の差が明らかになりました。20代は「部品メーカーが製品メーカーから一方的に責任を押し付ける公表をされた」に対し、2割強が「やむを得ない」と考えている一方、50代以上は1割未満。また、「環境配慮型製品やリサイクル製品ではなくなるが、製品の品質はアップした」を、「やむを得ない」と思っている人は、40代が2割弱、50代以上が4割強であるところが、目立った差でしょうか。各世代、関心のあるジャンルのことには厳しい判断基準を持っているようです。
ただし、総じて他の質問に比べ回答率が低く、事件・事故に対して「やむを得ない」をいう意識は低いようです。
総合 | 男性 | 女性 | 差 : 男 性 女 性 |
20代 | 30代 | 40代 | 50代 以上 |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
n | 200 | 100 | 100 | Pt | 35 | 82 | 45 | 38 |
消費者が使用上の注意を守らず、危険な使用方法で製品を使用した | 57 | 55 | 58 | -3.0 | 54 | 59 | 60 | 50 |
消費者が製品の経年劣化を無視して、長期間使用を続けた | 52 | 52 | 52 | 0.0 | 51 | 52 | 49 | 55 |
材料の利用基準を関係役所に照会したところ、問題ないとの回答を得たため対応を誤った | 41 | 39 | 42 | -3.0 | 43 | 38 | 42 | 42 |
環境配慮型製品やリサイクル製品ではなくなるが、製品の品質はアップした | 32 | 37 | 27 | 10.0 | 37 | 32 | 18 | 45 |
海外の生産委託先による毒物混入を事故後に初めて知った | 31 | 30 | 32 | -2.0 | 43 | 33 | 29 | 18 |
関係役所に報告し、指示を仰ごうとしたが放置された | 30 | 38 | 22 | 16.0 | 37 | 22 | 31 | 39 |
事故の回避義務が自社にないため対応が遅れた | 17 | 19 | 15 | 4.0 | 11 | 17 | 24 | 13 |
関係者に迷惑がかかると考え、事実の公表を控えた | 15 | 15 | 14 | 1.0 | 14 | 12 | 18 | 16 |
部品メーカーが製品メーカーに事故の公表を止められた | 14 | 17 | 11 | 6.0 | 23 | 11 | 18 | 8 |
部品メーカーが製品メーカーから、一方的に責任を押し付ける公表をされた | 14 | 13 | 15 | -2.0 | 14 | 13 | 18 | 11 |
【表2】企業の起こした事件・事故の公表について、やむを得ないと思う状況
※回答者の割合(%)、複数回答
※薄緑色は比率の高かった属性
※薄茶色は比率の低かった属性
大切なのは情報公開と原因究明
「企業の事件・事故が発覚したとき、企業が取るべきだと思う行動は以下のうちどれですか」と聞いたところ、1位は「商品の回収や使用禁止を呼びかける」(96%)。2位は「原因究明に努める」(86%)、3位は「速やかに関係省庁に報告し指示を仰ぐ」(77%)でした。まずは、危険や間違いを伝え、それからなぜ起きたか、そして第3者の判断も仰ぐ、ということでしょうか。
また、消費者の心理が反映しているのが4位の「被害を蒙った人たちの見舞いを行う」(75%)。そして、「経営者が状況を説明する」(68%)、「現場責任者が状況を説明する」(67%)と、状況の説明の必要性が明確に浮かび上がりました。次いで、「事件・事故の対象になった商品や物の代替品を用意する」(64%)という実用面、そして「経営者が謝罪する」(64%)、「現場責任者が謝罪する」(44%)の謝罪する姿勢、という順番でした。意外だったのは、企業側の悩みどころであろう、広告。「広告を自粛する」(28%)は10位だったことです。消費者は、企業側ほど広告について意識していないのかもしれません。
また、男女差では、女性の方が回答の割合が高い場合が多く、より事件・事故後の対処に注目している、と言えるでしょう。
そして年代差では、ここもまた、20代と50代以上、ふたつに分かれました。「状況の説明」「原因究明」など、事件・事故がなぜ起きたかについて、興味を持っている50代以上に対し、20代は「謝罪」「代替品の用意」など具体策を求めているようです。「状況の説明」に関しても、経営者ではなく現場の人間にして欲しい、という結果になったのも、体面よりも、より詳しい事情を知りたいと言う気持ちを反映しているのではないでしょうか。
ここまで述べてきただけでも、男女、年代で随分と感じ方が違うと言うことがわかりました。次回は、いったん失ってしまった信頼を回復するにはどうするのがベターかを考えていきます。
総合 | 男性 | 女性 | 差 : 男 性 女 性 |
20代 | 30代 | 40代 | 50代 以上 |
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---|---|---|---|---|---|---|---|---|
n | 200 | 100 | 100 | Pt | 35 | 82 | 45 | 38 |
商品の回収や使用禁止を呼びかける | 96 | 96 | 95 | 1.0 | 94 | 96 | 96 | 95 |
原因究明に努める | 86 | 87 | 85 | 2.0 | 89 | 80 | 87 | 95 |
速やかに関係省庁に報告し、指示を仰ぐ | 77 | 74 | 80 | -6.0 | 77 | 77 | 71 | 84 |
被害を被った人たちへの見舞いを行う | 75 | 73 | 76 | -3.0 | 83 | 71 | 73 | 76 |
経営者が状況を説明する | 68 | 62 | 73 | -11.0 | 71 | 66 | 58 | 79 |
現場責任者が状況を説明する | 67 | 59 | 75 | -16.0 | 80 | 65 | 67 | 61 |
事件・事故の対象になった商品や製品の代替品を用意する | 64 | 57 | 71 | -14.0 | 74 | 63 | 58 | 63 |
経営者が謝罪する | 64 | 56 | 71 | -15.0 | 80 | 59 | 62 | 61 |
現場責任者が謝罪する | 44 | 34 | 53 | -19.0 | 63 | 40 | 36 | 42 |
広告を自粛する | 28 | 25 | 31 | -6.0 | 34 | 22 | 33 | 29 |
【表3】企業の事故・事件が発覚したとき、企業が取るべきだと思う行動
※回答者の割合(%)、複数回答
※薄緑色は比率の高かった属性
※薄茶色は比率の低かった属性
調査概要と結果
サンプル数 | 200(男女同数) |
---|---|
調査期間 | 2008年2月29日(金)〜3月1日(土) |
調査対象 | 全国のインターネットユーザー(20歳以上/男女)から回答を得た |
設問 | Q1.以下のうち、あなたが許せないと思う事件・事故を選んでください(MA) /Q2企業の起こした事件・事故の公表について、以下のうちやむを得ないと思う状況を選んで下さい(MA)/Q3企業の事故・事件が発覚したとき、企業が取るべきだと思う行動は以下のうちのどれですか (MA)/Q4事件・事故を起こした後、企業の信頼回復にとって有効であると思う対応は以下のうちのどれですか (MA)/Q5事件・事故後の対応が評価できる企業や機関を以下よりお選び下さい(MA) |