MENU

Brand Strategy journal ブランド戦略通信

ブランドなんでもランキング

第103回:企業広告の印象について

「企業広告」とは、商品やサービスのプロモーションを目的とした商品広告とは異なり、企業への認知や理解、好感、信頼といったブランドイメージの向上を目的とした広告です。

多くが、企業の社会的な取り組みや、先進的な取り組みを印象的な画像、動画、メッセージで伝えるものとなっており、企業の考え方や社会的存在意義を端的に知ることができます。今回は国内5社の企業広告について、その印象を尋ねてみました。

評価対象とした企業広告について

今回評価対象とした企業広告は以下の通りです。(動画名をクリックすると新しいタブで動画をご覧いただけます。※音が出ますのでご注意ください。)

企業広告
「#素晴らしい過去になろう 愛鳥活動2024 篇」30秒(サントリー)
「世界は、ひとつずつ変えることができる。『内視鏡AI診断支援技術』篇」30秒(富士フイルム)
「できないことは、みんなでやろう。『紅丸』篇 」30秒(丸紅)
「未来へ。100年サステナビリティ。『安心・安全』篇」30秒(三菱電機)
「『壁がある。だから、行く。』Making a River. 篇」60秒(クボタ)

企業広告の認知度

認知状況について尋ねた結果です。(図1)

認知度が最も高かったのは「世界は、ひとつずつ変えることができる。」(富士フイルム)でした。この企業広告では、富士フイルムの研究員である社員が出演し、同社の研究実績を紹介しています。BGMやメッセージが印象的で、見た人の記憶に残りやすかったのかもしれません。

どこで企業広告を見たか

それでは、一般消費者は、これらの企業広告をどこで目にしたのでしょうか。

いずれの企業広告も「テレビCM」が最も多く、特に富士フイルムは66.7%の回答を得ました。
また、サントリーは29.7%の人が「企業のウェブサイト」で見たと回答しています。その他の企業が20%に満たない中、サントリーはウェブサイト自体良く見られている可能性があります。同社が「愛鳥活動」や「天然水の森」など環境問題に意欲的に取り組んでいることは有名ですが、企業サイトにおいてもその取り組みを積極的に発信しています。もともとサントリーの環境活動に関心を持っていた層が、企業サイトに訪問し、その際に企業広告を目にしたのかもしれません。

企業広告の評価

続いて、各社の企業広告の総合的な評価を見てみましょう。(図3)

「評価できる(とても+まあ)」と回答した人の割合が最も高かったのは富士フイルムの「世界は、ひとつずつ変えることができる。」でした。

次いで、クボタの「壁がある。だから、行く。」、サントリーの「#素晴らしい過去になろう 愛鳥活動2024」が高く、いずれも50%を超える人が「評価できる」と回答しています。

企業広告の印象

ここで、企業広告の印象を見てみましょう。(図4)

総合評価が高かった富士フイルム、クボタ、サントリーは「企業の理念・ビジョンが伝わった」「企業の取り組みへの理解が深まった」「企業に対し共感を覚えた」「企業への信頼が深まった」において、高い評価を得ました。

企業広告の評価の鍵は、企業への表面的な理解にとどまらず、その企業の取り組みを通じて、理念やビジョンなど基本的な考え方・将来像が伝わる、さらに取り組みの内容や考え方・将来像に共感できる、といったところにあるのかもしれません。

企業広告への感想、印象に残った点、良かった点

それでは最後に企業広告の感想、印象に残った点、良かった点について自由回答の結果を見てみましょう。

「#素晴らしい過去になろう 愛鳥活動2024」篇(サントリー)

「未来のために今何ができるか」」で始まる同社の企業広告。「私たちの答えは生物が多様に生きる健康な森を未来に届けることでした」と続き、「ずっと水と生きていけますように」と締めくくられています。

自由回答では「企業の環境の取り組みに好感が持てる・共感できる」という声が多く聞かれました。また、映像や音楽など動画全体の雰囲気がよい、とする人も多く見られました。

「世界は、ひとつずつ変えることができる。『内視鏡AI診断支援技術』篇」(富士フイルム)

独自の先進技術で社会ニーズ・課題解決に取り組む富士フイルムの姿を映す「世界は、ひとつずつ変えることができる。」広告シリーズ。内視鏡検査中にAIがリアルタイムで画像解析を行い、がんの疑いを検出し、医師の診断をサポートする内視鏡AI診断支援技術を紹介しています。

自由回答では、最先端の医療技術に期待を持ったひと、企業に対し真面目で誠実な印象を受ける人が多かったようです。また、音楽とナレーションに対する声も複数聞かれました。

「できないことは、みんなでやろう。『紅丸』篇 」(丸紅)

一人でできることは小さくても、世界中の仲間と力を合わせればどんな課題でもきっと解決できるはず。そんな想いが込められた企業広告動画です。

モンゴルの大草原、出演俳優の堺雅人さん、キングギドラなど、強く印象に残っている人が多くいたようです。「はじめは意見が異なっていても、一緒にやっていく中、チームワークで大きなことを成し遂げる」といったメッセージを受け取る人が多い一方で、インパクトが大きすぎるが故か、何が言いたいかよくわからなかったという声も一部で聞かれました。

「未来へ。100年サステナビリティ。『安心・安全』篇」(三菱電機)

こちらの企業広告では、自然災害に対し、三菱電機グループのさまざまな製品や技術を組み合わせることで、減災に貢献しようとする同社の挑戦を紹介しています。

最新の技術で自然災害の被害を減らす、という同社の取り組みに期待・意義を感じる人が多かったようです。また出演の鈴木亮平さんについて「誠実そうでよい人選だ」といった声が複数聞かれました。

「『壁がある。だから、行く。』Making a River. 篇」(クボタ)

同社の取り組みや企業姿勢を伝える「壁がある。だから、行く。」シリーズ。同社は水の循環に関わる様々なソリューションの開発・提供により、世界の水環境問題に取り組んでいます。今回の企業広告は、砂漠の国、中東カタールで、世界中から集まった技術者と共に安心・安全な水を届けるプロジェクトを紹介したものです。

具体的なプロジェクトを題材とすることで、グローバルに社会課題解決に貢献する同社の姿がうまく伝わったのではないでしょうか。「大きな仕事に使命感を持って取り組んでいることが伝わる」など、企業への好意的な声が多く聞かれました。

今回調査では、各社の企業広告について回答者の5割前後が「評価できる」と答えました。また、自由回答においてもさまざまな好意的な意見が聞かれており、ステークホルダーの意識変容に一定の効果を持つことが明らかになったといえそうです。

調査概要

全国18歳~59歳 男女のインターネットユーザーから回答を得た。

サンプル数 220
調査期間 2024年6 月20 日~6 月21日
調査方法・内容 次の5つの企業広告(「#素晴らしい過去になろう 愛鳥活動2024」篇 (サントリー)/「世界は、ひとつずつ変えることができる。『内視鏡AI診断支援技術』篇」(富士フイルム)/「できないことは、みんなでやろう。『紅丸』篇 」(丸紅)/「未来へ。100年サステナビリティ。『安心・安全』篇」(三菱電機)/「『壁がある。だから、行く。』Making a River. 篇」(クボタ))の1. 認知についてそれぞれ(「見たことがあり内容も覚えている/見たことがあるが内容は思い出せない/見たような気がする/見たことがない)より単一回答にて、2. 1.で((「見たことがあり内容も覚えている/見たことがあるが内容は思い出せない/見たような気がする」)と答えた人に、閲覧した媒体について(テレビCM/企業のウェブサイト/交通広告(電車内のデジタルサイネージなど)/動画サイト(You Tubeなど)/SNS(Facebook、Instagram、X、TikTokなど)/その他/覚えていない(排他))より複数回答にて、3. 当該企業広告動画を観てもらいその印象についてそれぞれ(内容が分かりやすい/企業の理念・ビジョンが伝わった/企業の社風が伝わった/企業の取り組みへの理解が深まった/企業への理解が深まった/企業への興味・関心が深まった/企業への好感が深まった/企業に対し共感を覚えた/企業への信頼が深まった/当てはまるものはない)より複数回答にて、4. それぞれの企業広告動画の総合的評価について(「とても評価できる」~「評価できない」の5段階)より単一回答にて、5.~9. 各企業広告動画についての感想、印象に残った点、良かった点などについて自由回答にて、回答を得た。
印刷する 印刷する