企業イメージ調査によく用いられる方法として、企業名に併せてロゴを提示するという方法があります。ロゴのついたアンケート用紙は単に文字情報として企業名を提示するよりも格段にビジュアルが向上するため、調査形式として好む担当者は少なくありません。
しかし、ロゴが調査結果をゆがめるバイアスとなってしまっては元も子もありません。今回はロゴの有無が調査結果に及ぼす影響について考えて見たいと思います。
調査票の設計
今回はシンプルに複数の企業ブランドを提示してその中から任意に好きなものをいくつでも選んでもらう形式とします。企業好感度はその企業を選んだ人の割合とします。調査は2パターンあり、一方は企業名を文字情報によって提示するもの、もう一方は企業名にロゴを添えて提示するものです。2つの調査の違いはロゴの有無だけです。企業の知名度が低すぎると有効なサンプルが得られないので、調査対象企業には一般消費者の知名度が高く、同時に、ロゴも見た記憶がある人が多いようなところを選びます。
5社中4社はロゴ併用の方が企業名単独より好感度大
「企業名+ロゴ」の場合の方が「企業名のみ」の場合より好感度が高かった企業は調査した5社のうち4社に達しました。
これら4社のロゴは、企業のシンボルとして自社と他社と区別するという基本的な部分に加え、企業好感度を向上させるというプラスアルファの役割を果たしていることが分かります。
特に、ロゴなしでは好感度が5社中2位だったナイキは、ロゴありではトップとなり、ブランドを高める上でロゴが非常に効果を発揮している状況が窺えます。JTB、キッコーマン、アップルの3社もナイキほどではありませんがロゴの併用により好感度がかなりアップしています。このうちキッコーマンは2008年にロゴを変更してからまだ歴史は浅くどれだけ定着したかが気になるところでしたが、どうやら新しいロゴはキッコーマンブランドにとってプラスに作用しているようです。ブランドとロゴの相性やデザインのクオリティ、ロゴを変更した場合の新しいロゴの定着度などの問題があって例外はありますが、おおむねロゴを併用すると企業好感度は高くなる傾向があるようです。
ロゴあり調査は実質的にロゴのイメージ調査
2つの調査結果を見比べると、ロゴがある場合とない場合ではかなり好感度が違うことが分かります。今回調べた範囲ではロゴありとなしでは同じ結果が得られた企業はありませんでした。既述のように好感度は上がるケースが多いのですが上がり方は一様ではありません。また、割合は少ないのですが下がる場合もあります。
このように、企業イメージを調べるためにロゴを併用すると、その影響度は無視できないほど大きなものとなります。実質的には純然たる企業イメージではなく、ロゴのイメージを含んでいると考えた方が良いでしょう。しかし、好感度の順位についてはロゴがある場合と無い場合で、例外はありますが似たような傾向が見られます。ロゴのイメージを企業イメージから切り離し、純粋なデザイン性だけを調べるのも容易でないことが窺えます。
企業の知名度が低い場合はロゴ併用も正当化される(?)
それでも敢えて企業ブランド調査にロゴを使用する場合には、それなりの理由が求められます。
一つは、企業の知名度が低いため、企業名のみの提示では企業認知者のサンプル数が十分に集められない場合が挙げられます。こうした状況では、企業名はよく覚えていないがロゴは見たことがあるという人まで含めるとまとまった人数が確保できることがあります。このように、企業の知名度が低い状況への対応として、ロゴの認知度で補うというケースが想定されます。
また、コミュニケーション方法として企業名ではなくロゴを中心に行っている場合もロゴを併用した提示があり得るでしょう。この場合はロゴ単独での使用もあるかも知れません。ただし、業界すべてがロゴのみでコミュニケーションを行っているという特殊な場合を除き、競合との比較には支障が出るものと考えられます。単にコミュニケーションにロゴを併用しているというだけなら、ほとんどの企業がそうであると想定されますので、バイアスがかかってでもあえて採用する十分な理由にはならないと考えられます。
調査概要
全国のインターネットユーザー(20歳以上/男女)から回答を得た
サンプル数 | 100s |
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調査期間 | 2011年01月05日(水) |
調査対象 |
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