企業の社会的責任が重要になっている現在、所属する社員の不祥事についても一個人の問題では済まされなくなってきています。一旦社員が不祥事を起こすとその悪印象は所属する企業にまで及び、その責任まで問われるケースが出てきています。企業は社員一人ひとりの意識を把握し、不正や不祥事が起こらない体制をとることが求められているとも言えるかもしれません。
それでは実際消費者は企業の社員による不祥事についてどのような意識をもっているのでしょうか。今回は社員が不祥事を起こした場合、企業に対してどのような意識をもつのか聞いてみました。
企業への印象が悪くなるのは避けられない
まずは「社員の不祥事についてあなたはどのように思いますか」の問いに答えてもらいました。最も多かったのは「基本的には個人の問題であると知りつつ、所属する企業の印象が悪くなるのは避けられない」(78%)でした。逆に、「基本的には個人の問題であり、企業の印象には影響しない。」と答えた人はわずか5%でした。次いで「業務との関連があれば企業にもある程度の責任がある」(52%)となっています。所属する企業に絶対的な責任を求めないまでも状況により一定の責任があること、また、それが悪印象につながるというのは多くの人が共通して感じているところです。
一方ここで気になるのは「企業の対応如何によっては企業を好評価することもありうる」と42%の人が答えていることです。悪印象から好印象へ消費者イメージを逆転できることは容易でないかもしれませんが対応のされ方はそれなりに評価されるようです。
最も問題があるのは「事実を公表しない」
続いての質問は「社員の不祥事のうち、企業側に問題があると思うものを選んでください」です。「事実を公表しない」(84%)、「企業として事実確認をしない」(79%)となっています。過去の企業の不祥事例から考えると「正直ものが損をする」という思考で都合の悪いことは「言ってしまわない」、「明らかにしない」のが得策という企業姿勢に対しては厳しい社会的反発を招くことがあります。それは企業そのものでなく、一所属社員個人のものであっても基本的には変わらないようです。
また、たとえ個人の不祥事とはいえ、企業に責任がないことを強調したり、謝罪しないことも反感を買いやすいことのようです。
企業が取るべき行動は「事実関係の調査」
それでは具体的には社員が不祥事を起こしてしまったら企業はどういった行動を取ればよいのでしょうか。第一に「事実関係を調査する」(93%)、次いで「調査結果を公表する」(84%)となっています。ここでも8割以上の人が事実関係の確認とその公表が重要と答えています。
さらには「社内に事実を告知し再発防止を呼びかける」(69%)、「不祥事を起こした社員を処分する」(65%)、「講じた処分内容や再発防止策について公表する」(61%)、「従業員教育を行う」(54%)、「再発を防ぐために職場の組織改革を行う」(53%)など当該社員に対する処分はもとより再発防止に向けた社内教育の徹底が求められていることがわかります。
特に許せないのは企業の社会的責任と相反する不正
続いて企業の印象が悪くなった事例について聞きました。最も印象が悪くなった事例は「野村證券でインサイダー取引(内部情報を基として市場に上場している会社の株式を購入)容疑で中国人社員ら3人逮捕。(2008年4月)」(74%)でした。事件報道直後、就任直後の渡部社長が容疑者個人の犯罪であることを強調していた会見も印象を悪くした原因の一つかもしれません。続いて「佐川急便社員が勤務中、同僚が担当する荷物から配送予定のDSゲームソフト60本(19万7千円相当)を盗んだ容疑で逮捕。(2009年11月)」(71%)と供に7割を超える人が企業に対する印象が悪くなったと答えています。証券会社社員にしても宅配業者社員にしても当企業の社員が果たすべき職責に対する重大な侵害行為と思われたのではないでしょうか。続いてNEC子会社と富士通子会社の架空取引への関与ですが、NECの事例が金額が大きいだけにやや印象が悪いようです。
一方「吉野家のアルバイト店員2名が、店舗とみられる場所で豚丼を山盛りした「テラ豚丼」を作った様子を撮影、動画投稿サイトに投稿。ネット上で「不衛生だ」などと騒動になった。(2007年12月)」は44%と最も低い値になっています。こちらはアルバイト店員だったこと、冷静に見れば犯罪にはほど遠い「悪ふざけ」に過ぎないものであったことから他の不祥事ほど企業イメージへの悪影響は大きくないようです。
評価できるのは踏み込んだ企業対応
最後に社員不祥事後の企業の対応についての評価を聞きました。最も評価が高かったのは「NECエンジニアリング(株)社員の架空取引逮捕について」の対応でした。懲戒解雇処分、刑事告訴といった断固とした対応と組織的対応が評価されたものと思われます。容疑者逮捕に関する情報も企業サイトプレスリリースにて公表するなどNECブランドを守るべき親会社自らが率先して徹底した対応を取っている印象があります。
ついで評価が高かったのは「吉野家、アルバイト店員「テラ豚丼」動画騒動」の対応でした。「弊社商品を悪用した動画『テラ豚丼』がWeb上に投稿され、お客様には大変不安・不快な思いをさせてしまったことを、心よりお詫び申し上げます」と謝罪し、関与したとされるアルバイト2人を特定して処分したと発表しました。もともと事例そのものに対して企業への悪印象の度合いは低かったこと(Q4参照)、また消費者に直接被害が及ぶような事例でなかったこともあるかもしれませんがイメージが会社の業績を左右する外食産業業界なだけにこの対応は重要だったといえるのではないでしょうか。
一方評価が低かったのは「通信機器販売会社のNAJ、富士通の子会社を巻き込み架空循環取引」、「東芝社員ダビング10解除で逮捕」に対する企業の対応です。どちらも「今後詳しく確認し厳格に対応していく」、「全力で改善に努める」としているものの報道の時点では具体的な対応がなされておらず、対応として不完全な印象が免れません。事件と報道の時期の問題、また事件の大きさによっても対応の公表に時間がかかることは仕方がないと言えますが、全容が明確になった時点で企業の対応についてきちんと公表することが重要だと言えそうです。
今回の調査から、所属社員の不祥事を一律に企業の責任と決めつける人が必ずしも多いわけではないものの、感情の問題として印象が悪くなるのは避けられないということがわかりました。しかし消費者のイメージ低下を恐れて公表しないようではさらに印象が悪くなるのは避けられません。そうは言っても不十分な事実確認のままでは消費者の理解は得にくいでしょう。
不祥事の程度によるとはいえ、企業の社会的責任を揺るがすようなものはたとえ一個人の問題でもかなり厳しい目で見られるのは間違いなさそうです。
調査概要
全国の20〜59歳男女のインターネットユーザーから回答を得た
サンプル数 | 100 |
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調査期間 | 2010年1月29日~1月30日 |
調査内容 | 企業社員による不祥事に対するイメージを聞いた |
調査対象 | Q1. 社員の不祥事についてあなたはどのように思いますか(MA) /Q2社員の不祥事のうち、企業側に問題があると思うものを選んでください(MA)/Q3社員の不祥事が発覚したとき、企業が取るべきと思う行動を選んでください(MA)/Q4社員の不祥事が発覚したとき、企業が取るべきと思う行動を選んでください(MA)/Q5以下の事例のうち、企業の印象が悪くなったものを選んでください(MA) |