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第102回:大阪・関西万博について

2024年1月25日現在、大阪・関西万博が開催されるまで残り500日を切っています。最近では、資材価格の高騰や人件費の上昇、工期の遅れといった課題が頻繁に報じられていますが、気になる展示やイベントについてはあまり伝えられていないのではないでしょうか。今回は大阪・関西万博のテーマや展示内容、認知および興味・関心を近畿在住の方、関東在住の方にそれぞれ尋ねてみました。

大阪・関西万博への印象

下図は、大阪・関西万博への印象を「とても当てはまる~全く当てはまらない」の5段階で尋ね、関東在住者、近畿在住者それぞれの回答割合を示したものです【図1】。

いずれの項目も「当てはまる(とても当てはまる+まあ当てはまる)」と回答した人の割合は近畿在住者が関東在住者を大きく上回り、それぞれ2倍近くとなっています。自分たちの暮らす街が世界的なイベントの中心になり国際的にも大きな注目を浴びることに期待を持つ人が多いのではないでしょうか。

一方で、近畿在住者も「興味がある」の割合が4割程度に止まるなど、万博への関心は必ずしも高くないようです。これは多くの人に万博の魅力が周知されていないことを示唆しているのではないでしょうか。

それでは、ここから回答者に万博公式サイトを閲覧してもらい、コンセプトや展示内容を参照してもらった感想について見ていきましょう。

万博のコンセプトについて

下図は大阪・関西万博の公式サイトで万博のコンセプト(公式サイト「開催目的」のページが新しいタブで開きます)を確認してもらい、意見を尋ねた結果です【図2】。なお、青色のマーキングは各項目で評価が高い2つの年代(同率含む)を示しています。

大阪・関西万博の開催目的は、2020年の東京オリンピック・パラリンピック後の大阪・関西、そして日本の成長を牽引する起爆剤になることです。万博は世界中の知恵を結集し、地球規模の課題に取り組む場となります。2025年の大阪・関西万博は、SDGs達成やSociety 5.0の具現化に向けたプラットフォームとなるとされています。最先端技術の創造発信や国内外からの投資拡大、交流活性化など、様々な面でのイノベーションを促し、約2兆円の経済波及効果が期待されています。大阪・関西が世界に誇るライフサイエンス、バイオメディカルの集積が、万博のテーマに沿った新たなイノベーションでさらに発展することにも言及されています。

「開催目的に共感できた」「何を実現させようとしているか伝わった」「日本、大阪で開催する意義が伝わった」のいずれも20代以下と60代の数値が高くなっています。 20代以下の若年層はデジタルネイティブで情報感度が高く、新しい技術に対する期待や関心が高いのかもしれません。また、VUCA時代といわれ久しい昨今、社会的な課題に対する共感性も高く、持続可能な開発目標(SDGs)といった概念をじぶんごととして捉えている世代といえるかもしれません。 一方、60代は高度経済成長期に開催された大阪万博(EXPO’70)を経験している世代です。小中高生、大学生だった頃、万博に訪れ感銘を受けた人も多いことでしょう。発展の象徴だった万博。今回も日本の新たなポテンシャルを感じられる場として、期待する人が多いのかもしれません。

中核事業「シグネチャープロジェクト」について

続いて大阪・関西万博の中核事業の一つ「シグネチャープロジェクト」(公式サイト「テーマ事業『シグネチャープロジェクト』」のページが新しいタブで開きます)の内容を確認してもらい、意見を尋ねてみました【図3】。先ほどと同様、青色のマーキングは各項目で評価が高い2つの年代(同率含む)を示しています。

「シグネチャープロジェクト」は、大学教授やアニメーション監督、映画作家、生物学者など8人のプロデューサーによる展示パビリオンとイベントが、リアルとバーチャルで展開されます。 「シグネチャープロジェクト」では「いのちを響き合わせる」「いのちを拡げる」「いのちを高める」「いのちを磨く」「いのちを知る」「いのちを育む」「いのちをつむぐ」「いのちを守る」の8つのテーマで、「いのち」を感じさせる体験を提供します。これにより、いのちの意味や価値について考えるきっかけを与え、人々の創造的な行動を促し、「ともにいのち輝く未来社会をデザインすること」がコンセプトとなります。

「『いのちの輝きプロジェクト』の目的が理解できた」「『いのちの輝きプロジェクト』に共感できた」 「『シグネチャーパビリオン』に興味が持てた」「『シグネチャーパビリオン』は社会にとって意義のあるものだと感じた」「『シグネチャーパビリオン』を実際の会場で見てみたい」に対する評価では10~20代が高い共感を示し、特に20代は『シグネチャーパビリオン』の社会的意義に高い関心を寄せています。 国連総会で持続可能な開発目標が採択されたのは2015年。「持続可能」や「SDGs」という言葉を耳にするようになったのもこの頃からです。この影響を受け、20代以下の世代では、学校など教育機関において、こうしたテーマに接する機会が増えていきました。このため、プロジェクトのテーマが受け入れやすかったのかもしれません。また、40代以降の評価も高くなっています。子供が一定の年齢になり、子育ての現場でこうした話題に接する機会が増え、次世代の未来について考えるようになるのかもしれません。

「テーマウィーク」で取りあげられるテーマについて

万博では世界中の国々が半年間にわたり共に学び、対話し、地球的な課題の解決に取り組むプログラム「テーマウィーク」が開催されます。異なる8つのテーマごとに公式参加国、日本国政府・自治体や産業界等が横断的に参加し、対話型プログラムや展示型プログラム、交流を通じて未来社会を創造することを目的とした取り組みです。 下図はこの「テーマウィーク」で取りあげられるテーマ領域への興味度を尋ねた結果です。

人生100年時代と言われる昨今、健康と幸福は人々にとって重要な関心事です。新型コロナで世界が激変したのもついこの間のこと、「健康とウェルビーイング」への興味度が最も高くなりました。また、地球温暖化の問題はもはや未来のことではありません。昨今の異常気象は身をもって感じている人が多いことでしょう。「地球の未来と生物多様性」も高くなりました。またマンガ・アニメ、eスポーツ、観光などクールジャパン戦略として政府が推し進めている分野やフードロスや食育、サステナブルファッションなど暮らしと食の未来に興味をもつ人も多くなりました。とはいえいずれも僅差であり、どの項目にも関心が寄せられていると言えそうです。

 

公式サイト閲覧による印象の変化

ここまで大阪・関西万博の公式サイトを参照いただき、質問に答えてもらいました。大阪・関西万博の情報にアクセスしたことで、大阪・関西万博に対する印象に変化はあったでしょうか。 下図は大阪・関西万博公式サイト閲覧後の意識の変化を示したものです【図5】。

大阪・関西万博への興味が「深まった(とても深まった+まあ深まった)」と答えた人が32.8%をはじめ「開催は世の中に良い影響をもたらす」が30.0%、「参加したいという気持ち」が27.0%など、およそ3割の人の印象が良い方向に変化しました。今回公式サイト上のコンテンツを2つご覧いただきましたが、開催内容を知ることは、興味、理解、参加意欲に一定の影響を及ぼすようです。

大阪・関西万博についての自由意見

最後に大阪・関西万博についての自由意見を見てみましょう。まずは関東在住者の意見です。工期や費用の面の懸念、透明化を求める声がある一方、開催に意義を感じている人、楽しみにしている人の声が多く聞かれました。

続いて近畿在住者の意見を見てみましょう。「参加してみたい」「大阪や日本を知る機会にしてほしい」「学べる場になるとよい」など万博開催への期待の声が多く聞かれました。また、報道などネガティブな情報が目立つ中、成功に向け、より積極的なアピールを望む声が聞かれています。

アンケートの結果を見てみると、現状では大阪・関西万博についてその意義や開催目的が広く浸透しているとは言えないようです。公式サイトでは大阪・関西万博は世界80億人がアイデアを交換し、未来社会を「共創」する場、世界中の課題やソリューションを共有できるオンラインプラットフォームを立ち上げ、人類共通の課題解決に向け、先端技術など世界の英知を集め、新たなアイデアを創造・発信する場、-People’s Living Lab- 未来社会の実験場となるとされています。 万博の意義や開催の目的、開催によりどのようなことが実現されるのか、地元大阪や関西、ひいては日本にどのような効果がもたらされるのか、こうしたことを広く伝播することで、応援する声が広まり、人々の熱気が高まり、大阪・関西万博の成功につながるのではないでしょうか。

調査概要

関東(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)、近畿(三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)在住の18~69歳 男女のインターネットユーザーから回答を得た。

サンプル数 330
調査期間 2023年12月22日~12月23日
調査方法・内容 内容: 大阪・関西万博について、1.現在の考え(大阪・関西万博に興味がある/大阪・関西万博のことを家族や友人・知人と話題にすることがある/大阪・関西万博開催は世の中に良い影響をもたらすと思う/大阪・関西万博に参加したい)についてそれぞれ(「とても当てはまる」~「全く当てはまらない」の)5段階にて回答、2. 大阪・関西万博の公式サイトの「開催目的」コンテンツを見てもらい大阪・関西万博の開催目的について(開催目的に共感できたか/何を実現させようとしているか伝わったか/日本、大阪で開催する意義が伝わったか)それぞれ(「とてもそう思う」~「全くそう思わない」の)5段階にて回答、3.引き続き大阪・関西万博の公式サイトの「展示・イベント『シグネチャープロジェクト』の実施案内コンテンツ」を見てもらい『シグネチャープロジェクト』についての意見(「いのちの輝きプロジェクト」の目的が理解できたか/「いのちの輝きプロジェクト」に共感できたか/「シグネチャーパビリオン」に興味が持てたか/「シグネチャーパビリオン」は社会にとって意義のあるものだと感じたか/「シグネチャーパビリオン」を実際の会場で見てみたいと思ったか)についてそれぞれ(「とてもそう思う」~「全くそう思わない」の)5段階にて回答、4. 「大阪・関西万博で実施される「地球的規模の課題」をテーマに、解決策を話し合う「対話プログラム」と、具体的な行動に向けた「ビジネス交流」が行われる「テーマウィーク」の分野テーマ(「未来への文化共創」/「未来のコミュニティとモビリティ」/「食と暮らしの未来」/「健康とウェルビーイング」/「学びと遊び」/「平和と人権」/「地球の未来と生物多様性」/「SDGs+Beyond いのち輝く未来社会」)についての興味度をそれぞれ(「とても興味が持てる」~「全く興味が持てない」の)5段階にて回答、5.公式サイトで上記(2.3.の)コンテンツを閲覧した後での大阪・関西万博についての印象(大阪・関西万博への興味/周りの誰かに大阪・関西万博について伝えたいという気持ち/大阪・関西万博開催が世の中に良い影響をもたらすという考え/大阪・関西万博に参加したいという気持ち)の変化についてそれぞれ(「とても深まった」~「全く深まらなかった」の)5段階にて回答、6. 大阪・関西万博に対する自身の考えについて自由回答にて回答を得た。。
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