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第101回:企業コーポレートサイトの特集コンテンツの印象について

企業のコーポレートサイトには、会社案内や事業紹介、投資家情報(IR)やサステナビリティ、採用コンテンツなどが掲載されています。企業概要や事業内容、代表者の挨拶、沿革などをご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか。また、最近では企業風土や、企業の想いを分かりやすく伝えるため、その企業で働く人々の姿を通し、事業内容やサステナビリティ等非財務の取り組みを伝える特集コンテンツが多く見られます。今回は国内5社の特集コンテンツについて印象を尋ねてみました。

対象企業コンテンツについて

今回対象のコンテンツは以下の通りです。(コンテンツ名をクリックすると新しいタブでコンテンツをご覧いただけます。)

コンテンツ名概要
Shiseido Talks
(資生堂)
企業理念「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」実現のため資生堂が発信している取り組みの背景にある、ストーリー・想いを社員自身が語るページとなっています。
より良い未来
(DNP(大日本印刷))
一人ひとりが心身ともに快適でわくわくできる未来の実現を目指し、「未来のあたりまえ」をつくるDNP。より良い未来に向けた事業活動に挑戦する社員の思いに触れることができます。
JAL Group Spirit
(JAL(日本航空))
毎日のフライトや、想いを込めて取り組んでいるひとつひとつの仕事について、JALグループが発表した取り組みに関するその後の話や舞台裏が、社員の想いとともに短い動画で紹介されています。
サステナビリティ ストーリーズ
(サントリー)
サントリーグループのサステナビリティに関するさまざまな取り組みが、社員のみなさんにより紹介されています。
360° business innovation
(三井物産)
三井物産の「ビジネス」と、そこで活躍する「人」、ビジネスが生まれる「場」をさまざまな切り口で紹介する「360° business innovation」。その中の「People」では、社員一人ひとりが業務を通じ、世界に生み出す新たな価値を紹介しています。

各社のコンテンツの印象

下表は、各社のコンテンツの印象について、各項目を「とてもそう思う~そう思わない」の5段階で尋ね、そう思う(「とてもそう思う」+「まあそう思う」)と答えた人の割合です。
なお、青色のマーキングは各項目で最も評価が高いコンテンツを示します。

全体的に「企業の取り組みが理解できた」「社会に貢献している企業だと感じた」「企業の社風が伝わった」の評価が高くなりました。その企業で働く人の顔が見えることで企業の取り組みや、社会に貢献の側面が身近に感じられるのかもしれません。
また、「文章が読みやすい」の合計値も高くなっており、人の顔が見えるコンテンツは語り手や筆者がイメージしやすくなり「読みやすい」と感じることもあるのかもしれません。

なお、今回は各コンテンツの感想、印象に残った点、良かった点などについて自由回答でお尋ねしています。コンテンツごとの回答を見てみましょう。

Shiseido Talks(資生堂)

Shiseido Talks(資生堂)では商品開発秘話や社内事業におけるサステナビリティ活動などについて携わる社員へのインタビュー形式でつづられています。

「企業を長く存続させるためには、社会貢献が必要不可欠なことなんだと思った」「資生堂が製品を作る上での配慮や社会貢献への取り組みがわかりやすかった」といった資生堂が行っている社会貢献活動に対する好意的なコメントが多く寄せられました。
このようなコメントが寄せられたのは、「社員自身の意見が反映されている会社であること」「社員の言葉で語られているところがよかった」「様々な立場からのインタビューで社員皆から愛されている商品を提供していると感じた」といった意見からもわかるように、社員自身の声により一人ひとりの想いが伝わった結果と言えそうです。

より良い未来(DNP(大日本印刷))

企業理念に「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」ことを掲げるDNPでは、事業を通じて「“持続可能なより良い社会&心豊かな暮らし”の実現」を目指しています。特集コンテンツ「より良い未来」では「未来のあたりまえをつくる」のブランドステートメントを掲げ、社員へのインタビュー記事も交えながら「教育」「産業」「健康」の分野での取り組みについて紹介しています。

「色々な分野に挑戦しているという印象を持ちました」「医療のサポートやメタバースへの取り組みなど、印刷業一色ではない点(が印象に残った)」「いろいろ手広くやっていると思った」とBtoB企業としてこれまであまり接点がなかった企業の事業について知る機会になったようです。
また「イラスト/絵/デザインが良い、かわいい、親しみやすい」とデザインに対しては多くのコメントが寄せられました。「伝えたいことを端的にキャッチーにイラストを交えて伝えてくれているので見やすい。動画などで伝えてくれるのでわかりやすい」といった声も聞かれ、かわいらしいイラストや動画で最新技術などの難しい内容が親しみやすく感じられた、という人が多いようです。

JAL Group Spirit(JAL(日本航空))

JAL Group Spirit(JAL(日本航空))は、毎日のフライトやJAL従業員の一つ一つの仕事について、その舞台裏を短い動画で紹介するコンテンツです。最近では、ボーイング777-200ER型機の退役にあたり企画された「退役チャーターツアー」の様子をチームの想いと共に紹介するなど、ファンには嬉しい動画が掲載されています。また、「#かくれナビリティ」シリーズでは、持続可能な航空燃料や、使い捨てプラスチックの削減、食ロス削減対策など自社のサステナビリティへの取り組みを社員の声で伝えています。

「意外な仕事内容もあるのだと思った」「人や物だけを運んでいるのではないことが知れた。」といった事業内容に対する理解に加え「サステナビリティへの取り組みが素晴らしいと思った」「航空会社という印象しかなかったのですが、サステナビリティを意識した活動をしていて感心しました」「機内食において食品破棄をなくすべき努力している。」といったサステナビリティに関する取り組みが印象に残った人が多くいたようです。
また、「文章でなく動画で話しているから、飽きずに内容を理解できた」と社員自身が動画で語ることでより興味を持って見ることができるコンテンツになっているといえそうです。

サステナビリティ ストーリーズ(サントリー)

続いてサステナビリティ ストーリーズ(サントリー)です。「生物多様性」「健康」「人権」「原料」「CO2」。そして有名なコーポレートメッセージ「水と生きるSUNTORY」にもあるように「水」。自社のサステナビリティ上の重点課題についての取り組みが社員の言葉で綴られています。

「サントリーのSDGSへの取り組みがよくわかり良かったと思います」のように持続可能な活動そのものへの理解が深まると同時に、「サントリーさんの商品がどんな風に決まって、作られているかがわかり、とても丁寧で素晴らしいと思いました。」「サントリーの商品を購入したい気持ちになった」「非常に印象が良くなった」などの声が多く聞かれ、企業についての理解が深まり、企業に好印象を持ち、その商品について購入したい気持ちになる人がいることもわかります。

360° business innovation(三井物産)

総合商社である三井物産では同社のさまざまな事業に携わる社員にフォーカスし、彼らの言葉を通じて、自社の事業内容を伝えます。

一般消費者にはあまり馴染みのない総合商社の事業内容ですが、そこで働く社員の目、言葉を通して商社の事業を知ることができることに「わかりやすい」「社員の考え、いろいろな取り組みがわかり、良かったと感じた」「いろんな人のメッセージが聞けて良かった」といった声が聞かれました。規模が大きく分かりにくい商社の事業も、社員の生の声といったアプローチを取ることで、少し身近に感じられるのかもしれません。

事業内容、サステナビリティの取り組みはコーポレートサイトでも多くの企業が発信しています。今回調査では、社員などその取り組みに関わる人の言葉で、活動内容、想いを伝えることが、企業に対する理解の進めやすさや、好感度の醸成につながることがわかりました。
コーポレートサイトを通じたブランディングを行ううえで、社員の声を通じ、その企業の社風、想いを伝えるという取り組みには一定の効果がありそうです。

調査概要

全国18歳~59歳 男女 有職者・学生のインターネットユーザーから回答を得た。

サンプル数 200
調査期間 2023年11月2日~11月3日
調査方法・内容 次の各企業のそれぞれの企業情報やサステナビリティコンテンツ(Shiseido Talks(資生堂)、より良い未来(DNP(大日本印刷))、JAL Group Spirit(JAL(日本航空))、サステナビリティ ストーリーズ(サントリー)、360° business innovation(三井物産))についてコンテンツを見てもらい、1.(企業の取り組みが理解できた/社会に貢献している企業だと感じた/企業の社風が伝わった/企業の社風に共感できた/企業への理解が深まった/企業への好感が深まった/企業への信頼が深まった/文章が読みやすい/画像や図表がわかりやすい/内容がわかりやすい)についてそれぞれ(「とてもそう思う」~「そう思わない」の5段階)にて回答、2. 当該コンテンツについての感想、印象に残った点、良かった点などについて自由回答にて回答を得た。
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