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第98回:お金の支払い方法について

政府は今後の労働力不足の解消、また現金決済にかかるインフラコストの削減、さらにインバウンド需要の拡大のためキャッシュレス決済を推し進めています。マイナンバーカードの新規作成や健康保険証の利用登録、また公金受取口座の登録などを促進するマイナポイント事業でも、ポイント受取りにキャッシュレス決済サービスの登録が必須になっています。また、今年の4月からはデジタル給与払いも解禁になります。
こうした流れの中、電子マネーも徐々に普及が進み、決済方法の選択肢も増えました。今回はお金の支払い方法について各手段の利用状況やその意識についてたずねました。

利用状況について

下記の【図1】~【図3】は各種決済手段についての利用状況と利用理由についてたずねた結果です。

「現金」を利用している人がもっとも多いですが、「クレジットカード」も75%の人が利用しており、「銀行引落し」「電子マネー(プリペイド)」「銀行振込」も約半数の人が利用しています。

年代別に見ると「クレジットカード」「銀行振込」の利用率は40~50代が高く、「銀行引落し」は50~60代が他の年代に比べて高くなっているようです。一方、20代の若年層は「電子マネー(プリペイド・後払い)」や「デビットカード」などのキャッシュレス決済の利用が活発なようで、現金の利用率も9割を切っています。

多くの決済手段で利用する理由としては「この支払い方法に慣れているから」と答える人が多くなりましたが、「クレジットカード」「電子マネー」についてはポイント還元などお得さが大きな理由となっていることがわかります。また「現金」「銀行引落し」「銀行振込」については「この方法でしか支払えない店舗/請求元があるから」の数値が高く、一定数の人が「他の決済方法があればそちらのほうがよい」と考えている可能性があります。

よく利用している電子マネー

それでは最近普及の進んでいる電子マネー利用者はどういった電子マネーを利用しているのでしょうか。【図4】は電子マネー利用者によく利用している電子マネーを複数回答にてたずね、利用延べ人数を100%として利用割合を出したものです。

いずれの年代でも利用率が高かったのは「QRコード決済系(PayPay、d払い、au PAYなど)」でした。また、20代以外では「流通系(nanaco、楽天Edy、WAONなど)」の利用率も高くなっています。
一方、20代では「クレジットカード系(iD、QUICPayなど)」、「交通系(Suica 、 PASMOなど)」が他の年代と比較して高く、また「その他」の割合が約2割と他の年代に比べて高いことも特徴で、多様な決済方法を利用している状況がうかがえます。

個人間のお金のやりとりについて

街中の店舗やオンラインショッピング、ネット決済では多様な支払い方法が一般化してきましたが、個人間でのお金の支払いについてはどうでしょうか。【図5】は各個人間のお金の支払いでよく利用する手段です。

個人間では多くの場合、現金でのやりとりが行われているようですが、それでも「習い事の月謝(個人教室)」は「銀行振込」が22.7%、「仲間内での割り勘精算(後日)」の場合は「電子マネー」が11.3%と一定数の利用が見られます。

では、個人間のお金のやりとりにおける電子マネーの利用について年代別に違いはあるでしょうか。【図6】は各支払い機会における電子マネー利用率を年代別に示したものです。

20代では他の年代に比べて多くの場面で利用している人が多いことがわかります。中でも「習い事月謝(個人教室)」は30.8%、「仲間内での割り勘精算(後日)」は25.0%、「イベント会費やプレゼントなどをとりまとめる幹事への精算」は20.0%など、後日精算をとりまとめるようなシーンでの利用率が高くなっています。さらにお小遣いやお年玉といった家族・親族間のお金のやりとりにも電子マネーを利用する人が一定割合いるようです。

また、30代、40代でも「仲間内での割り勘精算(後日)」などで、10%を超える人が電子マネーを利用していることがわかります。

一方、50代では個人間の支払いに電子マネーを利用する人は減り、さらに60代ではほとんどの用途で電子マネーの利用はありませんでした。

個人間の支払いにおける「銀行振込」と「電子マネー利用」についての意識

それでは、個人間の支払いにおいて「銀行振込」および「電子マネー」の利用について抵抗を感じるという人はどれくらいいるのでしょうか。下図はそれぞれ【図7】個人間での支払いに銀行振込を利用することについて、【図8】電子マネーを利用することについて意識をたずねた結果です。

「習い事(個人教室)」では抵抗がない人が多いものの、その他の多くの場面で抵抗を感じる人が多いようです。ケースにもよりますが、「習い事」は月に1度など回数が決まっていることが多いですが、そのほかのシーンでは、頻度も回数も変則的なことにくわえ銀行振込に手数料が掛かることなども関係しているのかもしれません。

一方、電子マネーでの支払いに抵抗を感じている人が多かったのは「お小遣い(子供)」「親戚へのお年玉」「親戚へのお祝い」でした。子供との金銭のやりとりや、お祝い事については「直接会って現金で」と考える人が多いのかもしれません。

それでは、電子マネーでの支払いについて、年代別に意識の違いがあるでしょうか。【図9】は「抵抗がある(やや+非常に)」と回答した割合を年代別にまとめたものです。

全体的に「抵抗がある」人の割合は、年齢が高くなるにつれ高くなっており、特に60代では「習い事月謝(個人教室)」「夫婦など家族(大人)間での金銭のやりとり」を除く多く場面で5割を超えました。中でも「親戚へのお年玉」や「親戚へのお祝い」については7割を超えています。

一方、20代、30代は40~60代に比べ、抵抗を感じる人の割合が低くなっています。特に20代ではすべての項目で4割を切っており、若年層のお金に対する価値観の違いがうかがえる結果となっています。

電子マネーの個人間送金は、同じアプリやサービスを利用しているユーザー同士であれば、多くのキャッシュレス決済サービスで利用できます。現金を用意する必要がないこと、また、時間・場所を気にする必要がないことが最大のメリットといえるでしょう。

一方で、現時点では、同じアプリやサービスを利用していなければ、お金のやりとりができないというデメリットもあります。また「お年玉」や「お祝い」など、送り手の気持ちを伝えたいシーンにおいては、消費者の心理として「抵抗感」のハードルもあるようです。

決済サービス横断でのやりとりが可能になること。また、例えば送付時にお祝いの気持ちを表すような特別な画像がつけられるなど「ギフト」としての送付が浸透すれば、割り勘など日常使いはもとより、お祝いなどでも「電子マネーがあたりまえの選択肢のひとつ」となる日がくるのかもしれません。

調査概要

全国の20歳~69歳男女のインターネットユーザーから回答を得た。

サンプル数 400
調査期間 2023年1月5日~1月6日
調査方法・内容 内容:1.次(現金/クレジットカード/デビットカード/電子マネー(プリペイド)/電子マネー(後払い)/銀行振込/銀行引落し)のような決済手段を利用することがあるか(ある場合はその理由)について(セキュリティ面で安心だから/この支払方法に慣れているから/現金を持ち歩きたくないから/ポイントが還元されるなどお得だから/利用可能な店舗・請求元が多いから/この方法でしか支払えない店舗・請求元があるから/その他/この決済手段はあまり利用しない・利用することはない(排他))より複数回答、2. 1.の電子マネー利用者がよく利用している電子マネーについて(QRコード決済系(PayPay、d払い、au PAYなど)/流通系(nanaco、楽天Edy、WAONなど)/交通系(Suica、PASMOなど)/クレジットカード系(iD、QUICPayなど)/その他)より複数回答、3.次(仲間内での割り勘精算(当日その場で)/仲間内での割り勘精算(後日)/イベント会費やプレゼントなどをとりまとめる幹事への精算/習い事月謝(個人教室)/お小遣い(子供)/親戚へのお年玉/親戚へのお祝い(誕生日・入学・就職・結婚・出産祝いなど)/夫婦など家族(大人)間での金銭のやりとり)のような個人間のお金のやりとりについてよく利用する手段を(現金/銀行振込/電子マネー/その他/このような経験はない(排他))より複数回答、4. 個人間で次(仲間での割り勘精算(当日その場で)/仲間内での割り勘精算(後日)/イベント会費やプレゼントなどをとりまとめる幹事への精算/習い事月謝(個人教室)/お小遣い(子供)/親戚へのお年玉/親戚へのお祝い(誕生日・入学・就職・結婚・出産祝いなど)/夫婦など家族(大人)間での金銭のやりとり)のようなお金のやりとりをする際に「銀行振込」を利用することの意識について(「全く抵抗はない」~「非常に抵抗がある」の5段階)よりそれぞれ単独回答、5. 個人間で次(仲間での割り勘精算(当日その場で)/仲間内での割り勘精算(後日)/イベント会費やプレゼントなどをとりまとめる幹事への精算/習い事月謝(個人教室)/お小遣い(子供)/親戚へのお年玉/親戚へのお祝い(誕生日・入学・就職・結婚・出産祝いなど)/夫婦など家族(大人)間での金銭のやりとり)のようなお金のやりとりをする際に「電子マネー」を利用することの意識について(「全く抵抗はない」~「非常に抵抗がある」の5段階)よりそれぞれ単独回答にて回答を得た。
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