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第96回:世代別言葉の利用について

リモートワークやオンラインミーティング、大学などのリモート授業はやや減りつつあるものの、コロナ問題発生後「リモート」は新しい生活様式として定着しました。
そんな中、日常での雑談、特に世代を超えたたわいもない会話の機会は減ってしまったのではないでしょうか。今回は世代による比較が楽しい言葉をいくつか選び、15~64歳のみなさんに使用や認知についてたずねてみました。

認知の壁は20代

まず、年齢と共に認知が上がった言葉について見てみましょう。

アベック(avec-)は本来「と一緒に」を意味するフランス語ですが、日本では恋人や一組の男女を指す言葉として広く使われていたことがありました。大正時代末期、昭和初期には使われ出していたようです。最近は耳にすることもあまりありませんが、認知の壁は20代以下のY世代後半~Z世代にあり、それより上の世代とくらべがくんと落ちていることが分かります。

続いては「イタ飯」です。イタリア料理を指す言葉ですが、1980年代後半のバブル時代にブームがあったと言われています。フランス料理に比べてカジュアルに楽しめる印象を持っている人も多いでしょう。大人数で楽しむバブル期のシーンにも合っていたのかもしれません。字面からも意味は想像できそうなものですが、10代の認知率は3割、20代でも5割を割り込んでいます。明確な世代差が見られる結果となりました。

「アベック」「イタ飯」は年代があがるごとに認知率が上がる言葉で、30代以上とそれ以下とでは30%程度の開きがあるようです。これらの言葉はY世代後半-Z世代(現在20代以下の若者)には通じにくいのかもしれませんね。

若者の使用が圧倒的に多い言葉

続いて若い人ほど使用している言葉を見ていきましょう。
まずは会話やSNSにおいて相手の発言に相槌を打つときに使われる言葉「それな」です。

「そうそう!」「それそれ!」「その通り!」といった意味で短いフレーズでテンポよく相手に同意することで会話も弾みます。10代の使用が他の年代よりも圧倒的に多くなりました。

続いて「ワンチャン」についても見てみましょう。

元々は英語の「one chance」が省略されたもので、「(4枚中同じ数牌が3枚見えていて)1枚だけ逆転される可能性がある」という意味の麻雀用語です。その後、格闘ゲームなどでは「劣勢ではあるが、まだ勝つ可能性はある」という意味で使われるようになり、最近では「もしかして」「ひょっとして」「可能性がある」などの意味で麻雀やゲーム以外のシーンで使われることが多いようです。こちらも10代の使用が圧倒的に多くなっています。

知らなければ解読不可能?

続いて50代以上ではあまり認知されていない言葉を挙げてみます。

まずは「了解」を意味する「り」です。10代の認知は高いものの年代があがるごとに認知度が下がり50-60代では5割を割り込んでいます。この「り」はLINEなどのメッセージのやりとりでよく使われています。メッセージアプリでテンポよく会話するには「了解」と打つ時間ももどかしいのでしょう。日常の会話では聞き取れないこともあるかもしれませんが、文字で「り」のみ返ってきたら、スタンプに慣れている人たちには抵抗がないのかもしれません。

同じくメッセージアプリのやりとりで利用されている言葉、「そマ?」についてです。

知らなければ意味を予想すらできないかもしれません。ヒントは「マ」がカタカナなことと「?」が入っていること。なんだかなぞなぞのようですね。「それマジ?」のことで現実の会話ではほぼ使われることはないため、知らない人も多いかもしれません。こちらも年代があがるほど認知が下がり、50代での認知者は16%と非常に低くなっています。

これらの言葉はいずれもメッセージアプリの普及とともに生まれ定着した言葉です。現代の10代、20代の若者はデジタルネイティブともいわれ、小さな頃からスマートフォンでSNSやアプリを使いこなしている世代です。オンライン上でのコミュニケーションが当たり前の環境の中、若者言葉もリアルとオンラインとさらに多様になってきているようです。

他の特徴がある言葉

最後に、また少し違った特徴が見られた言葉について見てみましょう。

一つ目は「なるはや」です。「なるべく早く」という意味で、ビジネス現場でフランクに使われることが多かった言葉です。10年ほど前に話題にされることが多かったようで、年齢層が高い人が、当時使っていた印象がありましたが、今回調査では意外にも10代、20代での使用率が高く、しかもかなりの認知がありました。若い人に使っても問題ない言葉のようです。一方50代以上では認知も使用も他年代より低くなっています。年齢層が高めの方に使用する場合は、使用者が思っている以上に失礼と受け取られる可能性もあるかもしれません。

二つ目は「カキコ」です。インターネット上の電子掲示板やブログのコメント欄などに書き込むことを意味しています。SNSが一般化する以前、オンライン上のコミュニケーションとして電子掲示板(BBS: Bulletin Board System)に書き込むことが主流となっていた時代がありました。日本最大級の電子掲示板サイト5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)が開設されたのは1999年とのこと、2000年代前半は現在40歳の人が20歳前後だった頃です。30-40代の認知が際立って高いのはそのせいかもしれません。

「流行語」と言われるように、いつの時代も新しい言葉が生まれ、そしてあるものは定着し、あるものは消えて行きます。
また「アベック」と「カップル」のように同じ意味を示す言葉が時代とともに変遷することもあります。
そして「若者言葉」と言われるように、いつの時代も若者は自由に使いやすいように言葉を作り、使い、コミュニケーションを楽しんでいる様子がうかがえます。
時代によって移り変わる言葉。世代を超えて話題にすると思わぬ発見があり、くすっと笑える楽しいコミュニケーションが生まれるかもしれません。

調査概要

全国の15歳~64歳男女のインターネットユーザーから回答を得た。

サンプル数 500
調査期間 2022年9月16日~9月17日
調査方法・内容 内容:1.以下の言葉(アベック/イケイケ/イタ飯/クリソツ/なるはや/おこ/それな/無理ゲー/やばい(いい意味で)/ワンチャン)の認知について(知っており、使うことがある/知っているが、使うことはない/この言葉を知らない)よりそれぞれ単一回答、2.以下の言葉(ズボン/ジーパン/スパッツ/ランニング(袖のないTシャツ)/〇〇(ペア/へそ出しなど)ルック/オーバーオール)の認知と会話やSNSにおけるコミュニケーションでの使用について(知っており、使うことがある/知っているが、使うことはない/この言葉を知らない)よりそれぞれ単一回答、3.以下の言葉( パンツ(ズボンの意味で)/デニム(デニム生地のパンツのこと)/レギンス/タンクトップ/コーデ、〇〇(ふたご/きれいめ など)コーデ/サロペット)の認知と会話やSNSにおけるコミュニケーションでの使用について(知っており、使うことがある/知っているが、使うことはない/この言葉を知らない)よりそれぞれ単一回答、4.以下の言葉(カキコ/ググる/ケータイ(スマホのことも)/写メ(写真データそのもののこと)/ネットサーフィン/プロフ/そマ?/り(了解の意味)/投げ銭(オンラインのライブ配信者に対して視聴者がお金を送付すること)/ライバー)の認知と会話やSNSにおけるコミュニケーションでの使用についてについて(知っており、使うことがある/知っているが、使うことはない/この言葉を知らない)よりそれぞれ単一回答にて回答を得た。
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