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第87回:新型コロナウイルス感染症拡大における企業の取り組みについて

新型コロナウイルスが初めて報道されたのは2019年12月31日のことでした。人々が強く意識するところとなったのは翌1月の中旬以降だったのではなかったかと思われます。そしてダイヤモンドプリンセス号が横浜港に入港したのは2月3日。毎日のこの報道を気にされた人も多かったでしょう。ただまだこの時点ではこの感染症がこれほど拡大し、自分たちの生活も変えてしまうと想像する人はそれほど多くなかったかもしれません。

三密を避けるため学校は休校措置を余儀なくされ、不要不急の外出は控えることとなり、街の様子も変わりました。経済活動が縮小し、観光や外食産業、エンターテイメントを始め、多くの業界に大打撃を与えています。資材が不足する中、感染の恐怖と戦いながら懸命に対応する医療従事者の姿に胸を痛めた人も多かったのではないでしょうか。ワクチンが供給されるようになるまでは第2波、第3波も懸念されています。

そんな中、企業においては社会における役割を考え様々な取り組みが発表されています。今回は今なお続くコロナ禍において発表されたシャープ(マスク生産)、トヨタ(医療用マスク生産とグループにおける自社用マスク生産および軽症感染者の移送支援)、東芝(在宅勤務/週休3日/コア無しフレックスタイム制導入)、サントリー(「さきめし」連動プロジェクト)の取り組みについてたずねてみました。

取り組みの認知について

今回挙げた企業の取り組みの中で認知度が最も高かったのはシャープのマスク生産です。政府からの要請に基づき新型コロナウイルス感染症によるマスクの品薄状態解消のため、2月28日に生産を決定が発表され、3月24日より生産を開始しました。医療機関に向けた販売に続き、専用サイトを通じ個人向けにも抽選販売がされています。その後数多くの企業がマスクの生産を始めましたが、異業種ながらいち早くこの決断をしたことはニュースにも取り上げられ印象に残った人も多かったようです。

次いで多くの人に認知されていたのはトヨタの取り組みでした。4月7日、医療用フェイスシールド(防護マスク)や医療機器を生産・増産する企業に対しトヨタ生産方式(TPS)のノウハウ活用によって工程改善を支援する取り組み、またJPN TAXIをベースとして感染者移送用車両を開発する取り組みなど医療現場への様々な支援の決定が発表されました。この発表ではトヨタグループ内部で必要とされるマスク確保のためグループ会社施設内でのマスク生産についても言及されています。その後4月21日には千葉県と東京都内に軽症患者移送用の車両が提供されたことも発表されています。

6月24日の調査時点ではこの2社の取り組みへの認知度が高い結果となりました。

各企業の取り組みに対する印象

次に各社の取り組み(取り組みの内容と発表日明記)に対する印象について、8項目を提示し「非常にそう思う~全くそうは思わない」の5段階で答えてもらいました。各回答に「非常にそう思う」2点・1点・0点・-1点・-2点「全くそうは思わない」の重み付けをし加重平均で算出したスコアが以下のグラフとなります。

どの取り組みも「社会的に意義のある取り組みだと感じた」が最も高く、中でもシャープとトヨタの取り組みについては非常に高いポイントとなりました。

これまで経験したことのないマスク不足は人々に大きな衝撃を与えました。2月中にマスク生産の意向を発表したシャープの対応には「非常事態における対応能力の高さを感じた」の評価が高く、「企業に対する信頼が増した」「企業に対する好感が増した」の評価にもつながったようです。

トヨタの支援は感染拡大の抑制から医療現場への支援と多くの視点をもって進められています。軽傷感染者の移送に関するサポートはまさに多くの人が懸念する大きな課題だと思われます。トヨタの対応は非常に迅速で、まさに社長の言葉にある「私たちにできることを即断、即決、即実行していく」が実践されているケースだといえるでしょう。「非常事態における対応能力の高さを感じた」「企業に対する信頼が増した」「企業に対する関心が増した」の評価も高くなりました。

シャープの取り組みと共に「企業に対する好感が増した」「この企業の製品・サービスを利用したいと思った」が高かったのはサントリーグループの取り組みでした。外出自粛などで今は行けないお気に入りの飲食店に食事代を先払いし落ち着いた時期に食べに行こうというGigi株式会社が運営する「さきめし」プロジェクトを支援する活動です。先払いする際にかかる10%の手数料と寄付金を合わせて1億円を拠出するとともに「さきめし」をサポートすることで継続的に飲食店を応援するものとなっています。外出自粛要請は緩和されつつありますが感染者数の推移によっては今後が見通しづらい状況でもあり、そんな中で「好きなお店を応援したい」という消費者の気持ちを後押しするこのプロジェクトは多くの人の共感を呼んだのではないでしょうか。

従業員数12万人超を抱える東芝グループの取り組みは「この企業で働いてみたい(あるいは就職先として薦めたい)」の評価が高くなりました。コロナ後も月の労働時間を変えずに週5日出社を週4日出社とすることで週休3日制を実現し、継続して出社率削減を目指すと発表しました。フレックスタイム制からコアタイムをなくし、接触機会を削減するなど各職場において最も効果的と考えられる施策につい導入を検討・実施するとのことです。在宅勤務が可能な業務に従事する従業員は原則として在宅勤務を行うことを継続しています。週休3日とすることは出社日の勤務時間が長くなることでもあり従業員それぞれの置かれている状況によって、また取引先等対外的な観点からも賛否両論あるようです。同社の決断は他の多くの企業の「働き方」にも影響を与えることになるかもしれません。東芝グループでは現場の声に耳を傾けながら慎重に検討をすすめているとのことですが、今後の行方が気になるところです。

東芝もサントリーも取り組みの発表が5月に入ってからのことであり、今回の調査時点までの時間が浸透には短かったのかもしれません。しかし長期戦が強いられるコロナ禍では折々で発生する社会課題に対してその時々で社内のリソースを活用し、社会的影響を鑑み、スピード感をもって対応する企業の姿勢は多くの人の記憶に残ることでしょう。

このような状況下だからこそ、多くの人が企業の社会的役割をこれまで以上に意識し、企業そのものや製品・サービスに対する認識にまでも影響を及ぼすと考えられます。
経験したことがない緊急時にあり、企業には今起こっている社会課題を迅速に、的確に把握し柔軟に対応していくことが一層求められるようになるのかもしれません。

調査概要

全国20~59歳のインターネットユーザーから回答を得た。

サンプル数 200
調査期間 2020年6月24日~6月25日
調査方法・内容 新型コロナウイルス感染拡大に対する企業の取り組みについて1. 各社の取り組みについて知っているか(「シャープのマスク生産」「サントリーの『さきめし』連動プロジェクト」「トヨタの医療用マスク生産とグループにおける自社用マスク生産および軽症感染者の移送支援」「東芝の在宅勤務/週休3日/コア無しフレックスタイム制導入」)について(知っている/聞いたことはあるがよくは知らない/知らない より)それぞれ単一回答、2. シャープのマスク生産、3. サントリーの「さきめし」連動プロジェクト、4. トヨタの医療用マスク生産とグループにおける自社用マスク生産および軽症感染者の移送支援、5. 東芝の在宅勤務/週休3日/コア無しフレックスタイム制導入、について項目(社会的に意義のある取組みだと感じた/非常事態における対応能力の高さを感じた/企業に対する関心が増した/企業に対する好感が増した/企業に対する信頼が増した/この企業で働いてみたい(あるいは就職先として奨めたい)と思った/この企業の製品・サービスを利用したいと思った/この企業の製品・サービスを誰かに奨めたいと思った)それぞれについて(非常にそう思う/そう思う/どちらでもない/あまりそう思わない/全くそう思わない より)単一回答にて回答を得た。
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