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第85回:牛肉について

暑い季節にはビールに焼肉、寒い日には日本酒にすき焼きと牛肉のメニューに幸せを感じる人も多いですね。店頭には和牛、国産牛、輸入牛と様々な牛肉が並んでいます。今回はそんな牛肉について全国各地の方に出身地と共にたずねてみました。

食べたいと思うブランド牛

日本の在来種をもとに交配を繰り返し改良されてきた和牛。その和牛ブランドから食べたいと思うブランド牛を3つまで選んで答えてもらいました(図①)。

また、各出身地方別の結果は下記のようになっています(表①)。

最も多かったのは松坂牛(三重)(63.0%)で出身地に関係なく全国的に食べたいと思う人が多くなりました。松坂牛は「まつさかうし」、または「まつさかぎゅう」と読み、黒毛和種、未経産の雌牛、生後12か月齢までに松坂牛生産区域に導入され、肥育期間が最長・最終であることなどと定義されています。豊富に含まれる不飽和脂肪酸は融点が飽和脂肪酸に比べ低いので口の中で脂が解けて口当たりがよくなるそうです。また不飽和脂肪酸は抗酸化作用があり適度な摂取は望ましいとのこと、牛肉好きには嬉しいですね。

次いで多かったのは米沢牛(山形)(38.0%)です。こちらも出身地は北から南まで多くの支持を得ています。米沢牛は霜降りのまろやかさに定評があります。米沢市をはじめとした三市五町の認定牛舎での飼育が最長・最終であること、黒毛和種の未経産雌牛、生後月齢32ヶ月以上のもので公益社団法人日本食肉格付協会が定める3等級以上、放射性物質が「不検出」であるものなどのほか、米沢牛枝肉市場若しくは東京食肉中央卸売市場に上場されたもの、あるいは米沢市食肉センターで、と畜され公益社団法人日本食肉格付協会の格付けを受けた枝肉という定義があります。

また神戸ビーフ(兵庫)(28.0%)は近畿をはじめ、九州、東海、中国出身者と、特に関東以西での支持が高くなりました。健康的に手間暇かけて育てられた但馬牛(兵庫)の中から特に未経産牛・去勢牛で霜降りの度合い、可食部分の割合(歩留等級)、枝肉重量などの厳しい条件に該当するものだけが神戸ビーフと呼ばれるそうです。オバマ前大統領が来日時にオーダーしたという話は有名で、海外でも人気があるようです。

続いて飛騨牛(岐阜)(25.5%)、近江牛(滋賀)(22.5%)、前沢牛(岩手)(17.5%)に回答が集まりました。飛騨牛は主に東海、前沢牛は関東、東北出身者からの支持が高く、近江牛は近畿をはじめ、北海道や四国などで支持されました。

好きな牛肉のメニュー

好きな牛肉のメニューについてたずねてみました。1人2つまでの回答ということでステーキ、焼肉、すき焼きの順に回答が集まりましたが、次点のしゃぶしゃぶまで一定の差が付いており、特にステーキと焼肉の人気が伺える結果となりました(図➁)。

牛肉を買う際に頻度が高いもの

次に牛肉を買う際に頻度が高いものについて2つまで答えてもらいました。最も多かったのは国産牛51.0%で、和牛34.0%、輸入牛(オーストラリア)30.0%、輸入牛(アメリカ)21.0%と続きました(図③)。

和牛は日本在来種の黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種の4種のみとなります。国産牛は和牛以外の牛で日本で飼育された期間がもっとも長く、日本国内で食肉用に加工されたものになります。

また輸入牛は近年オーストラリア、アメリカ、カナダ、ニュージーランドなどから多く輸入されており価格も手頃です。牧草を餌としていて脂が少なく赤身が多いオーストラリア産牛肉、穀物を餌としておりコクがあって柔らかいアメリカ産牛肉、それぞれに特徴がありメニューによって使い分けるのも良さそうです。

料理に使う肉について

いくつかのメニューについて主に何の肉を使うかについてたずねてみました(回答は1つ)。最も牛肉を使うと答えた人が多かったのはすき焼き(83.5%)でした。次いで多かったのは焼肉(76.0%)です。焼肉はすき焼きに比べて一度に数種類の肉を焼くことも多いかと思いますが、それでも主に使うお肉は牛肉が多いようです。肉じゃが(42.5%)、しゃぶしゃぶ(41.5%)、カレー(33.5%)について、牛肉派は半数を切り、カレーは1/3程度となっています(図④)。

ここで「何の肉を使うか」話題になることが多い肉じゃがとカレーについて出身地域ごとに見てみましょう。肉じゃがは近畿、中国、九州出身者で牛肉と答えた人が多い一方、北海道、東北、関東、東海出身者では豚肉と答えた人の割合の方が多くなりました。特に北海道出身者は9割を超える人が豚肉と答えています(図⑤)。肉じゃがは西では牛肉、東では豚肉、という話もあります。その境目は近畿と東海の間にあると言えるかもしれません。

カレーはどうでしょう。全体では牛肉は3割程度で豚肉の4割を下回りましたが、近畿出身者の7割、九州の5割と牛肉派も優勢です。一方で北海道出身者は9割を超える人が豚肉と答え、東海、関東でも豚肉派が牛肉派を上回りました。カレーについても西は牛、東は豚と言えそうです。そのほか、東北、九州出身者からは鶏肉にも多くの回答が集まりました(図⑥)。

今回は甲信越、北陸、沖縄地方出身の回答者が少なく特徴を捉えることができませんでしたがメニューにおける地域の特徴も垣間見え興味深い結果となりました。

牛肉は和牛、国産牛、輸入牛と、予算やメニューに合わせて豊富な選択肢があります。生産者の団体が任意に基準を設定するブランド牛はその数が200を超えるとも言われており、海外からの人気も高いですね。恵まれた自然、その地域の食文化、さらに流通の進歩に伴い魅力あるブランド牛として日々進化し続けているようです。

「ブランド」という言葉は自分の家畜とよその家畜を間違えないよう焼印を押して区別したことから「焼印(brander)」を語源としています。和牛はもとより国産牛、輸入牛など様々なブランドの牛肉が今後も私たちの食卓を楽しませてくれることでしょう。

調査概要

全国各地の30~69歳(男女・既婚)のインターネットユーザーから回答を得た。

サンプル数 200
調査期間 2019年2019年8月2日~8月3日
調査方法・内容 牛肉について1. 食べたいと思うブランド牛について(前沢牛(岩手)/山形牛(山形)/米沢牛(山形)/仙台牛(宮城)/常陸牛(茨城)/飛騨牛(岐阜)/松坂牛(三重)/近江牛(滋賀)/但馬牛(兵庫)/神戸ビーフ(兵庫)/宮崎牛(宮崎)/佐賀牛(佐賀)/石垣牛(沖縄)/当てはまるものはない より)3つまで回答、2. 好きな牛肉のメニューについて(ステーキ/しゃぶしゃぶ/すき焼き/焼肉/ハンバーグ/ローストビーフ/カツ/洋風煮込み料理(カレー、ビーフシチュー、ハッシュドビーフ、ビーフストロガノフ等を含む)/肉丼ぶり/肉じゃが/肉炒め/当てはまるものはない より)2つまで回答、3. ふだん牛肉を買う際に頻度が高いものについて(和牛/国産牛/輸入牛(アメリカ)/輸入牛(カナダ)/ 輸入牛(オーストラリア)/輸入牛(ニュージーランド)/当てはまるものはない より)2つまで回答、4. メニュー(焼肉、しゃぶしゃぶ、すき焼き、カレー、肉じゃが)を提示し、それぞれ主に何の肉を使うかについて、(牛肉/豚肉/鶏肉/羊肉/当てはまるものはない より)単一回答、5. 出身地について(北海道地方/東北地方(青森・秋田・岩手・山形・宮城・福島)/関東地方(栃木・群馬・茨城・千葉・埼玉・東京・神奈川)/甲信越地方(山梨・長野・新潟)/北陸地方(富山・石川・福井)/東海地方(静岡・愛知・岐阜・三重)/近畿地方(滋賀・京都・奈良・大阪・ 和歌山・兵庫)/中国地方(鳥取・岡山・広島・島根・ 山口)/四国地方(高知・徳島・香川・愛媛)/九州地方(福岡・大分・佐賀・熊本・長崎・宮崎・鹿児島)/沖縄地方/当てはまるものはない より)単一回答にて回答を得た。
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