少子高齢化に伴って労働力の減少が問題となっており、より一層多くの人々が働くことが望まれています。どういった環境が整えばより多くの人が働きたいと思い、働き続けられるのでしょうか。育児や介護といった多様なライフステージにおいても安心して仕事ができる職場であるために、環境や習慣の見直しも必要と思われます。国も働き方改革の実現に動いている中、実際に働く人々はどのような考えを持っているのでしょうか。今回は快適な職場環境について尋ねてみました。
職場にあればよい(あったら嬉しい)と思うサービス
多くの時間を過ごす職場において、気分転換や空腹をちょっと満たすことは仕事の効率を考えても必要なことと言えるでしょう。そこで職場にあれば良い(あったら嬉しい)と思うサービスを聞いてみました。
もっとも多くの人が求めているのはドリンクサーバーでした。仕事の途中、ちょっと一息入れたいときにカップ一杯の温かい飲み物や冷たい飲み物は嬉しいものです。同じ理由で小腹が空いたときに置き型のお菓子販売サービスやオフィスコンビニが同じフロアにあったら便利ですよね。この2つのサービスに2割の人があったら良いと回答しました。
レンタル傘サービス(無料)にも2割弱の人があれば良い(嬉しい)と回答しました。ビルのオフィスでは外の天気がわかりにくいまま時間を過ごすこともあるかもしれません。外出するときや帰宅する時にいざ出ようと思ったら雨が降っていた、なんていうこともよくありますね。レンタル傘のサービスはビルなどで貸出をしているところもあるようですので、職場ではあまり用意されていないかもしれませんが、需要はあるようです。
次は同じ質問に対する回答の職種別ランキング上位の回答を示してみました。会社員・各種職員・公務員や専門職ではドリンクサーバー、置き型の食事販売サービスの順位が高かった一方、経営者・役員ではドリンクサーバーをはじめ、お菓子販売サービス、オフィスコンビニ等への回答はなく、回答があったのはレンタル傘のみでした。また専門職では置き型の食事販売サービスや置き型の日用品販売サービスへの希望も多く、研究者やクリエーターなどはオフィスで長時間集中する仕事をすることが多いのでしょう、手近にこのようなサービスがあったら嬉しいと思う人が多いようです。対して経営者や役員は外出が多く、オフィスで長時間過ごすことが少ないことが考えられます。こういったことからも希望するものに違いが出てくるのでしょうね。
快適な職場に必要だと思うもの、あれば良いと思うもの
それでは快適な職場に必要だ(あれば良い)と思うものについてはどうでしょうか。もっとも多かったのはWi-Fi環境で半数の人が回答しています。日々のやり取りや情報収集には通信が欠かせません。スムーズな通信環境は必須条件だと思われる人も多いのではないでしょうか。次に多かったのは一人で集中できるスペースで40%の人が必要だと答えました。他のメンバーから声がかかったり、電話が良くかかってきたりする自分の席では集中できる環境にない場合も多いのかもしれません。そういった人には切実な課題と言えるでしょう。最近では1人で集中して作業できるようなオフィス家具を導入している企業も出てきているようです。また、仮眠が取れるスペースや荷物を置くのに十分な個人専用のスペースも30%の人が必要だと回答しました。「公」の中での「個のスペース確保」について多くの人が重要に思っているようです。
一方で「個のスペース」そのものについても考え方が変わって来ている企業も出始めています。その日その日で自由な席に座ったり、日ごとに座席を割り当てたりするフリースペース制をとっている企業もあります。常時100%の人員がオフィスにいるわけではありません。常に一定数が外出しているようであれば座席数を減らすことでコスト削減が可能になりますし、毎日席が変わることによって様々な部署の人とコミュニケーションができ、職場の活性化にもつながることもあるようです。しかし、浸透するには多少時間がかかるのでしょうか、「自分専用の席(が必要だ、あれば良いと思う)」と答えた27%に対して「フリーアドレス制(が必要だ、あれば良いと思う)」と回答した人は7%にとどまりました。
続いて職種別の上位の回答を見てみましょう。全体の回答でもっとも多かった「Wi-Fi環境」はどの職種においても順位が高くなりました。「一人で集中できるスペース」は特に会社員・各種職員・公務員等や専門職で必要とされているようです。また、専門職の回答では「一人で集中できるスペース」に加え、「自分専用の席」、さらには「空気清浄・加湿・天然アロマの香り」や「心地よい、リラックスできる音楽」など五感全てにおいて集中できる最適な状況を求めている様子が窺えます。一方で経営者・役員では他の職種に比べ「荷物を置くのに十分な個人専用のスペース」や「自分専用の席」といった専用スペースの確保に必要性を感じていることがわかりました。また「遠隔会議が可能な環境(Web会議など)」の支持も高かったことから社内はもとより社外や遠隔地とのコミュニケーションの機会が多いことが見て取れます。いずれも個人の意見としてだけではなく、その立場からも企業全体として必要性を感じての回答かもしれません。
コクヨやPLUSなどが展開するオフィス家具メーカーではより働きやすいオフィスデザインに関する提案を社員自らが実際に働くライブオフィスやショールームで見ることができるようです。これまでのオフィスの常識にはとらわれない働きやすさ、快適性、そして効果をもたらす職場のモデルを見てみるのも楽しいかもしれません。
職場に求める条件や環境
職場に求める条件や環境はどういったものなのでしょうか。「休暇や早退などが認められやすい」、「長期休暇を取りやすい」がそれぞれ半数を超えました。ワークライフバランス(仕事と生活の調和)がとれる暮らしはやはり何物にも変えがたいもののようです。「自宅やカフェ、貸しオフィス等好きな場所で仕事ができる」、「就業時間内にも仮眠が取りやすい」の回答も多く、最大限のパフォーマンスが出せるように移動時間や自分のコンディションを調整できる権利を求める人が多くなってきていると言えるようです。
さらには「副業が認められる」も大きな支持を集めました。「副業元年」とも言われる昨今、コニカミノルタやソフトバンクなどが副業を認め始め、カゴメは副業容認を検討しているそうです。しかし、現状では積極的に副業容認をしているのは一部の企業に限られるようです。副業を通して磨いた能力を本業に活かしてほしいという考えと副業することで本業がおろそかになるという考えのいずれも存在しているのでしょう。うまくいけば企業としては採用の強化や人件費の抑制、離職の防止、働く人にとっては収入源の増加、自分の能力をさらに磨く機会の創出などメリットも大きいといえます。ただ現時点では業種や企業の風土、またトップの考え方によって企業ごとの判断にとどまっているようです。
職種別順位はどうでしょう。休暇や早退、長期休暇、副業については各職種で高くなりました。経営者・役員では自宅やカフェ、貸しオフィスなど好きな場所で仕事をしたいという回答も上位になっています。外部とのやり取りも多く、外出の機会も多いのでしょう。また社内からの報告も多々上がってくるはずです。移動中にメールを確認したいといった思いも強くなるのかもしれません。また働き方改革を考え、このような働き方を社内に導入する目線での回答になっていることも考えられるでしょう。
一方で専門職では産業医やカウンセラーに相談できる環境を求める割合も高くなりました。労働者が50人以上いる職場では産業医を選任しなければなりません。従業員自らが不調に気付くようストレスチェックの制度も実施されています。国際競争化や職場環境の変化、人員削減等による負担の増大など様々な労働環境変化により心身ともに不調を訴える人が出てくる中、国主導の対策も取られていますが、各職場においてはしかるべきタイミングで相談できる環境が必要と言えるでしょう。
企業の形態や職種によっても働きやすいと感じる環境は異なってきます。雇用する側もされる側もお互いに認識を共にして真剣に働きやすい職場を作っていくことが重要だと言えるでしょう。今回のアンケートの結果を参考に、自社の職場の快適な環境について考えてみてはいかがでしょうか。
調査概要
東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県在住22~59歳のインターネットユーザーから回答を得た。
サンプル数 | 100 |
---|---|
調査期間 | 2018年2月5日~2月6日 |
調査方法・内容 | 快適な職場環境について(1.職場にあればよい(あったら嬉しい)と思うサービス(基本的には有料、個人負担)(「オフィス置き型のお菓子販売サービス」/「オフィス置き型の食事販売サービス」/「オフィス置き型の日用品販売サービス」/「ドリンクサーバー」/「オフィスコンビニ」/「レンタル傘サービス(無料)」/「当てはまるものはない」)、2. 快適な職場に必要だと思うもの、あれば良いと思うもの(「Wi-Fi環境」/「遠隔会議が可能な環境(Web会議など)」/「フリーアドレス制(個々に机を持たないオフィススタイル)」/「自分専用の席」/「一人で集中できるスペース」/「リラックスしてミーティングできるスペース」/「スタンディングデスク(立って仕事ができる)」/「仕事やミーティングをしながら軽食・飲食ができるカフェスペース」/「簡単なストレッチなどができるスペース」/「仮眠が取れるスペース」/「荷物を置くのに十分な個人専用のスペース」/「心地よい、リラックスできる音楽」/「空気清浄・加湿・天然アロマの香り」/「当てはまるものはない」)、3.職場に求める条件や環境(「長期休暇を取りやすい」/「休暇や早退などが認められやすい」/「副業が認められる」/「自宅やカフェ、貸しオフィス等好きな場所で仕事ができる」/「社内サークル活動や交流会の支援してくれる」/「必要なときに産業医やカウンセラーに相談できる」/「就業時間内にも仮眠が取りやすい」/「当てはまるものはない」)より複数一回答にて回答を得た。 |