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Brand Strategy journal ブランド戦略通信

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第76回:企業のタグラインのイメージ調査(2回目)

企業のコンセプトや理念を世間や消費者に対してわかりやすく表現し、企業のロゴマークなどに隣接して書かれている言葉のことを「タグライン」といいます。テレビやCMで流れることも多く、誰でも一つや二つ思い浮かぶものがあるのではないでしょうか。今回はそのタグラインのイメージについて聞いてみました。今回調査対象としたタグラインは以下の通りです。

・やがて、いのちに変わるもの。(ミツカン)
・今日を愛する。(ライオン)
・Small Gift Big Smile(サンリオ)
・感動のそばに、いつも。(JTB)
・Link to Good Living(LIXIL)

「個性的である」、「インパクトがある」、「分かりやすい」、「覚えやすい」、「センスがよい」、「語感がよい」、「企業の姿勢が伝わる」、「企業のイメージに合っている」、「好感が持てる」の9項目に、「イメージがわかない/当てはまるものはない」を加えた10項目をたずね、それぞれのタグラインについて当てはまるものを複数回答で答えてもらいました。結果は下記の通りです。

タグライングラフ

これらの項目を【認知性に関する項目】「わかりやすい/覚えやすい/語感がよい」、【共感性に関する項目】「企業の姿勢が伝わる/企業のイメージに合っている/好感が持てる」、【独創性に関する項目】「個性的である/インパクトがある/センスがよい」とし、それぞれの項目ごとに合計しランキングしてみました。

認知性に関する項目

認知性に関する項目についてのランキングです。

認知性

もっとも高かったのは「今日を愛する。」(ライオン)でした。これは20行を超えるコーポレートメッセージを企業スローガンとして一言で表現したもので「生活者が愛する大切な“今日”という日々のくらしを、私たちも愛し、そこに貢献していく、という決意」が表されています。「覚えやすい」、「わかりやすい」が共に20%以上の支持を受け、特に「覚えやすい」は27%で2位の「感動のそばに、いつも。」(JTB)に10%の差をつける高評価を得ています。

一方で共に英語表記の「Small Gift Big Smile」(サンリオ)、「Link to Good Living」(LIXIL)は認知性という観点では評価が高いとは言えませんでした。とりわけ「覚えやすい」といった要素は「Small Gift Big Smile」が9%、「Link to Good Living」は2%にとどまっています。さらに「Small Gift Big Smile」に関しては「語感がよい」も9%と振るいませんでした。またこの2つのタグラインに関しては「イメージがわかない/当てはまるものはない」がもっとも高くなっています。

これら認知性に関する項目は合計が24Pt.から59Pt.と企業間に大きなばらつきが見られました。

共感性に関する項目

共感性に関する項目はどうでしょうか。

共感性

もっとも評価が高かったのは「やがて、いのちに変わるもの。」(ミツカン)です。グループビジョン・スローガンには「人のいのちの源である食品をつくっているという、誇りと責任。『やがて、いのちに変わるもの。』は、そんな私たちの想いから生まれたことばです。」とあり、また「『お客様に提供していく価値』の”宣言”」とも記されています。いのちのもとをつくって提供しているという食品メーカーの誇りと信念がうまく人々に伝わっているようです。

さらに同数で1位となった「感動のそばに、いつも。」(JTB)は「JTBグループ26,000名の全社員が、胸に刻んでいるブランドスローガン」とのことです。「お客様に、感動を提供するため、近しい存在であり続けること」 、「お客様が、感動で満ち足りたとき、その傍らには私たちがいること」という決意が首尾よく集約されているようです。

これらのタグラインは「企業の姿勢が伝わる」が他のタグラインより高く、いずれも2割の人に評価されています。どちらも短い一文に乗せた企業の思いが届いているのでしょう。ところで「やがて、いのちに変わるもの。」(ミツカン)は体言止め、「感動のそばに、いつも。」(JTB)は倒置法という表現技法が使われています。体言止めは余韻を残す効果があり、倒置法は目的の言葉を強調するそうです。こういった表現技法も効果的に作用しているかもしれません。

続いて3位には「Small Gift Big Smile」(サンリオ)が入りました。企業理念には「ほんの小さな贈り物が大きな友情を育てます SOCIAL COMMUNICATIONのサンリオ」と続きます。「ひとと理解しあい、仲よくしていくために大切なのは、まず自分から相手を信じ、尊敬し、愛すること。そして、そうした気持ちを表現すること」がサンリオのソーシャル・コミュニケーションの考え方だそうです。小さな贈り物で笑顔になった経験のある人がこのタグラインに共感しているのかもしれませんね。

独創性に関する項目

独創性

独創性に関する項目は「個性的である」、「インパクトがある」、「センスが良い」を要素としています。共感性に関する項目でも評価が高かった「やがて、いのちに変わるもの。」(ミツカン)が他に大差をつけ1位となりました。「いのち」という言葉を使うのはともすれば大袈裟に受け取られる可能性もありますがが、その意味をうまく伝えることができれば大きなインパクトを与えることができるのでしょう。3つの要素の中でも「インパクトがある」の28%、「個性的である」の20%は5つのタグラインの中でもっとも高くなっています。

2位は同じく共感性に関する項目でも上位であった「感動のそばに、いつも。」(JTB)が、3位には「Link to Good Living」(LIXIL)が僅差で続きました。LIXILグループの企業理念には「私たちは、優れた製品とサービスを通じて、世界中の人びとの豊かで快適な住生活の未来に貢献します。」とあります。タグラインも国内のみならず、世界に向けての宣言なのでしょう。3つの要素の中では「インパクトがある」16%、「センスが良い」15%が高く評価されています。これらの評価が高いのは英語表記であることも関係しているかもしれません。

認知性、共感性、独創性の項目はそれぞれ使われた言葉や言語、表現技法によっても人々に与える印象や効果に特徴があるようです。メディアやWebサイト、印刷物などユーザーが目にする機会の多いタグラインは企業の思いを伝えるのに大きな役割を果たしているといえます。そのため今回の調査のような認知性や共感性、独創性などの視点を入れることで、「伝えたい思いを言葉にする」だけではなく、「思いが伝わりやすい」タグラインにすることが重要だといえるでしょう。

調査概要

全国の20代~50代のインターネットユーザーから回答を得た。

サンプル数 100
調査期間 調査期間:2017年3月29日~3月30日
調査方法・内容 5社のタグライン(やがて、いのちに変わるもの。(ミツカン)/今日を愛する。(ライオン)/Small Gift Big Smile(サンリオ)/、感動のそばに、いつも。(JTB)、/Link to Good Living(LIXIL))に対し、10のイメージ項目(個性的である/インパクトがある/わかりやすい/覚えやすい/センスが良い/語感がよい/企業の姿勢が伝わる/企業のイメージに合っている/好感が持てる/イメージがわかない・当てはまるものはない)の中から複数回答式で回答を得た。
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