店頭に並ぶ鶏肉には「国産」や「○○産」の表示のものと「○○鶏」、「○○どり」とブランド名が記されているものがあります。スーパーなどでは容器も違い、ブランド名がある方にはオリジナルラベルが貼られているものも多いようです。この「○○鶏」や「○○どり」と書かれたものは地鶏・銘柄鶏と分類されます。今回は5種の地鶏、4種の銘柄鶏について女性のみなさんにイメージを尋ねてみました。
まずは知っている地鶏、銘柄鶏についてです。もっとも多かったのは「名古屋コーチン」で70%の人が知っていると答えました。明治時代初期、尾張藩では士族の転業で養鶏家になる人が多くいたとのことです。名古屋コーチンもこの旧士族の養鶏家により作出され、尾張より京都、大阪を中心に広まり、明治38年には日本家禽協会から国産実用品種第一号の鶏として認定されました。その後、外国鶏が養鶏されるようになり絶滅の危機がありましたが、昭和40年代ごろには県を上げて復活の取り組みがなされました。普及協会も設立され各種イベントにて知名度が高められ、2005年の愛知万博の県のパビリオンでの活動により知名度も一段と高いものとなりました。
次いで多かったのは秋田の「比内地鶏」で62%の人が知っていると答えました。原種の比内鶏は江戸時代にすでに飼育され、年貢として納められるほど美味しいものだったそうです。昭和17年には学術的な価値を認められ天然記念物にも指定されました。その後、商品化に向けて他種と交配し品種改良がなされ比内地鶏が誕生しています。平成20年には生産者、加工事業者を対象に県が認証する認定制度が創設され、認証状況は県の公式WEBサイトにアップされています。現在は英語や中国語、韓国語のパンフレットも作成され、さらなる普及が図られています。
ところで地鶏と銘柄鶏はどう違うのでしょうか。地鶏は日本農林規格(JAS)に定められたものになります。在来種の純系によるもの、または在来種を素びなの生産の両親か片方の親に使ったもので、ふ化からの飼育期間が80日以上、ふ化後の28日以降は平飼いで1m²当たり10羽以下の環境で育てられたものです。一方、銘柄鶏には地鶏のような厳密な規定はありませんが、飼育期間を長くしたり、飼料を工夫したりして味の良い鶏肉に仕上げられたものになります。今回取り上げた名古屋コーチン、比内地鶏、さつま地鶏、阿波尾鶏、青森シャモロックは地鶏、南部どり、地養鶏、大山どり、伊勢赤どりは銘柄鶏となります。
それではテレビや雑誌、お店などで名前を目にする地鶏・銘柄鶏は何でしょうか。知名度の高い「名古屋コーチン」、「比内地鶏」はそれぞれ57%、48%と他の銘柄を引き離しました。この2銘柄に続いたのは徳島の「阿波尾鶏」です。昭和50年代に元々徳島県にて継承されてきた赤笹軍鶏などがふ化後90日前後で味が良くなることに注目し、開発が始まりました。すでに「名古屋コーチン」や「比内地鶏」が全国的に認知されたこともあり、開発の時点からマーケティングが意識されていました。そして開発は、マーケット調査の上で先ず他に負けない販売価格を設定し、進められたそうです。その結果、ふ化後80~85日と先行の地鶏より早い飼育日数で出荷できる鶏が仕上がりました。販売促進のためにはインパクトの強い名前も必要、と徳島県のエネルギッシュな踊り「阿波踊り」とかけて「阿波尾鶏」と命名されました。平成10年には地鶏の中での生産量が全国で1位となり、平成13年には全国に先駆けて地鶏JASマーク認定を受け、現在に至ります。
実際に食べたことがある、地鶏・銘柄鶏についてはどうでしょうか。結果を見ると、概ね知名度と似た順位になっていることがわかります。しかし、「大山どり」は「知っている」人に対する「食べたことがある」割合が他より高くなっています。こちらは鳥取県の大山の銘柄鶏です。平飼いにて58~60日と通常より1週間程度長く飼育されているそうで一般の鶏よりものびのびと育っています。また出荷前の処理では空気で冷却することによって、鶏肉が水を吸収しないため栄養分やおいしさが流れ出ることなく出荷できるそうです。主な出荷先は関東圏約60%、関西圏約40%とのことなのでこの地域の方は口に入りやすいかもしれません。
しかし、全体的に見ると「食べたことがある」はそれぞれ「知っている」の半数程度です。多くの人に食べてもらうためにもまずは多くの人に知ってもらうことが重要だと言えそうです。
そもそも身近なところでこれらの鶏肉は手(口)に入るのでしょうか。実際に店頭でよく見かける地鶏・銘柄鶏について尋ねてみると「名古屋コーチン」、「比内地鶏」は一定数の回答があったものの、そのほかは非常に少なくなっています。知ってはいるが、なかなか手に入る状況にないのかもしれません。
最後に食べたい・食べてみたい地鶏・銘柄鶏です。ここで注目したいのは「名古屋コーチン」、「比内地鶏」に続いて支持を集めた「青森シャモロック」です。「青森シャモロック」は父親が「横斑シャモ」、母親が「速羽性横斑プリマスロック」です。それで「シャモロック」なのですね。名前にもインパクトがあります。この「青森シャモロック」は平成2年に開発されました。テレビの料理対決番組で優勝した経歴をもち、宮内庁管轄の御料牧場へ出荷される唯一の地鶏とのことです。ECサイトからは購入できるようですが一部の飲食店を除くと店頭ではなかなか手に入らないようです。先の質問「店頭でよくみかける地鶏・銘柄鶏」での回答は0%でした。希少価値が高いということでより食べてみたくなるのかもしれません。
以前より手が届きやすくなった印象のある地鶏や銘柄鶏ですが、実際にはまだまだ簡単に食卓に上る状況にはないようです。希少性はどうなるかわかりませんが、もっと知名度が上がって入手もしやすくなるとうれしいですね。
調査概要
30~60代女性のインターネットユーザーから回答を得た。
サンプル数 | 100 |
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調査期間 | 調査期間:2016年10月3日~10月4日 |
調査方法・内容 | 地鶏・銘柄鶏について(「知っているもの」/「食べたことがあるもの」/「テレビや雑誌、お店などで名前を目にするもの」/「店頭でよく見かけるもの」/「食べたい、食べてみたいもの」)を(「青森シャモロック」/「阿波尾鶏 」/「伊勢赤どり」/「さつま地鶏」/「地養鶏」/「大山どり」/「名古屋コーチン」/「南部どり」/「比内地鶏」/「当てはまるものはない」)の中から選んでもらい複数回答にて回答を得た。 |