多様化するブランドイメージ戦略の一環として、近年多くの企業がタグラインの制定・導入を行っています。このようなタグラインについては、一つのものが全世界に向けて発信されている場合もあれば、事業を展開する地域毎に異なるものが定められている場合もあるなど企業によって様々ですが、広告やテレビコマーシャルなどで触れる機会が多く、今や私たちにとって身近な存在となっています。今回は、そんなタグラインやブランドに関するアンケートを通じて、質問の仕方によってその回答がどのように変化するかを調査してみました。
タグラインは企業名の提示による影響が大
今回の調査では、タグラインのみを示した場合と、タグラインに加えて企業名を示した場合とで、それぞれ良いと思う企業メッセージについて尋ねました。その差が顕著に現れたのは、「ideas for life」(パナソニック)、「make. believe」(ソニー)、「Leading Innovation」(東芝)の三つです。
パナソニックの「ideas for life」は、タグラインのみを示して尋ねた場合でも高い水準で支持を得ていますが、「Changes for the Better」(三菱電機)、「Inspire the Next」(日立製作所)、「Drive Your Dreams」(トヨタ)にはあともう一歩届かないという位置にありました。しかしながら、タグラインに加えて企業名を提示して尋ねた場合には、他の企業メッセージを大きく引き離して最も高い支持を得るという結果になりました。
また、ソニーの「make. believe」と東芝の「Leading Innovation」は、タグラインのみを提示した場合の結果はあまり振るわなかったものの、企業名を同時に提示して尋ねた場合には、先の「ideas for life」(パナソニック)と「Drive Your Dreams」(トヨタ)に次いで高い支持を得ました。
そして、9社中7社でタグラインの単独提示より企業名とタグラインの同時提示の方が支持されるという結果となりました。
このように、「企業メッセージ」に対する評価の調査を行う場合であっても、それだけを示して尋ねるのか、あるいは企業名を併記して尋ねるのかという質問方法の違いによって、回答はこのように大きく異なっています。そこには、回答者の企業自体に対する評価が影響しています。
今回の調査結果を見る限り、一部の例外を除き、タグラインは企業名と同時に提示することによってその意味が強化され、伝わりやすくなるようですが、企業名を同時に提示することによる強化の度合いは、企業ブランドの強さや、企業ブランドとタグラインの適合性によって大きく左右されるようです。
商品ブランドの場合の企業名提示の影響は商品ブランドの自立性に依存
次に、好きな商品について、商品名のみを示した場合と商品名に加えて企業名を示した場合の支持状況を調べてみました。
飲料の「ジョージア」、「午後の紅茶」、「スーパードライ」はいずれも企業名を同時に提示した場合も企業名なしの場合も変わらず大きな支持を集めています。同様に、「なっちゃん」や「プリウス」の場合も企業名がなくても企業名があるときと変わらない支持があります。
これらは認知度が高く、企業ブランドがあってもなくても消費者の判断には影響がない、自立性の高い商品ブランドであるといえそうです。
一方、キヤノンの「EOS」では大きな差が生じています。これは、一眼レフという商品の特性上、食品よりもターゲットが狭い商品であるということが反映されているものと思われます。しかし、それ以上に、「キヤノン」という強い企業ブランドと組み合わさることにより、支持者が大幅に増加したものと考えられます。このように、商品ジャンルによっては企業ブランドによる支援が商品ブランドにとって非常に有効な場合があるようです
以上、二つのアンケート調査の結果を見てきましたが、質問の仕方による回答への影響も、調査を行う対象によって異なってくるということがご理解いただけたかと思います。
アンケート調査の結果を見る場合、すぐに結果だけを見てしまうのではなく、その結果を導くに至る質問の仕方にも注目するとより一層理解が深まるのではないでしょうか。
調査概要
全国のインターネットユーザー(20歳以上/男女)から回答を得た
サンプル数 | 100s |
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調査期間 | 2011年01月05日(水) |
調査対象 |
Changes for the Better(三菱電機) ジョージア(日本コカ・コーラ)/午後の紅茶(キリンビバレッジ)/なっちゃん(サントリー)/スーパードライ(アサヒビール)/桃の天然水(JT)/バーモントカレー(ハウス食品)/たけのこの里(明治製菓)/プリウス(トヨタ自動車)/EOS(キヤノン)/BRAVIA(ソニー) |