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第34回:企業のCSR活動事例に対するイメージ調査(2)

企業の社会的責任、CSR(Corporate Social Responsibility)という言葉は徐々に定着してきました。最近では「義務」としての側面から「期待に応える」社会的責任に変化しているといわれています。こういった中、自社の利益追求だけを求めるのではなく、社会との調和を通じて企業価値の向上を目指す企業もあります。今回はこうした企業の取り組みが、消費者にどのように受け止められているのかを調査してみました。(各社のCSRに対する取り組みは【表1】をご覧ください。)

CSR活動事例(企業名) 活動内容
体験型交通安全イベント(トヨタ自動車) 地域に根ざした心の通う安全啓発を目指し、全国の大型商業施設等において交通安全イベントを開催。【出所:トヨタ自動車 CSR・環境・社会貢献  交通安全への取り組みhttp://www.toyota.co.jp/jp/safety_activities/index.html】
ひろえば街が好きになる運動(JT) 喫煙者、非喫煙者の協調ある共存社会が望ましいとの考えの下、喫煙者に喫煙マナーの向上を訴え、喫煙をめぐる環境改善に向け取り組む。喫煙マナー向上の取り組みでは、市民参加型の清掃活動「ひろえば街が好きになる運動」を展開。【出所:JT CSR報告書 たばこ事業におけるCSRの取り組みhttp://www.jti.co.jp/csr/report/2009/pdf/JTCSR_09_p25_32.pdf】
啓発教材ビデオ「未成年者とアルコール」 〜成長期の脳への影響〜製作・配布(キリンビール) アルコールが特に未成年者の脳に与える影響を中心に解説し、アルコールに対する正しい知識の習得を促す。 (日・英・中国語字幕入りDVDあり。)【出所:キリンビール 知る・楽しむお酒と健康 啓発教材のご案内 http://www.kirin.co.jp/about/knowledge/pamphlet.html】
小・中学校の食育授業をサポート(日本マクドナルド) 子どもたちにバランスのとれた食事の重要性や、食事を楽しむことの大切さを知ってもらうことを目的として「食育の時間」DVD付き授業指導案を希望者に無料で配布。【出所:日本マクドナルド 社会貢献活動 食育支援 食育の時間 http://www.chantotaberu.jp/support/】
金銭教育教材の制作(アコム*「日本消費者金融協会(JCFA)」や「消費者金融連絡会」を通じて) 子どものうちから健全な金銭感覚を身につけてもらうため、主に子どもを対象に絵本やマンガなどを用いた消費者教育教材の制作に取り組み、教育関係機関に無料で配布。【出所:アコム 社会貢献活動 消費者啓発・金銭教育支援活動 http://www.acom.co.jp/company/activity/philanthropy/education/index.html】
【表1】各社のCSRに対する取り組み

一人一人の安全意識を啓発(トヨタ自動車)

(単位:%)
n=100 トヨタ自動車
この取り組みに対して興味を持った 23
この取り組みの趣旨に共感できる 38
この取り組みに社会的意義を感じる 41
この取り組みと企業イメージが合致している 20
この企業に対して興味を持った 10
この企業の製品・サービスに興味を持った 7
この企業に対して好感を持った 34
この企業の今後に期待できる 21
この企業に対する信頼が増した 23
この企業の製品・サービスを利用しようと思う 7

まずは大型商業施設などで体験型交通安全イベントを行っているトヨタ自動車です。「インストラクターが運転する車両に同乗し、正しい運転姿勢の重要性やシートベルトの効果を体験するコーナーやチャイルドシートの取り付け方、クルマの視界を確認するコーナー、また飲酒運転防止を訴える疑似体験コーナーなどを設置」とショッピングセンターなどで気軽に体験することで交通安全に関して改めて意識できる催しです。

「この取り組みに社会的意義を感じる」(41%)、「この取り組みの趣旨に共感できる」(38%)、「この企業に対して好感を持った」(34%)と車社会をの健全な発展に対する草の根的な活動が支持を得ているようです。

喫煙マナーの向上で非喫煙者へのイメージ向上も(JT)

(単位:%)
n=100 JT
この取り組みに対して興味を持った 24
この取り組みの趣旨に共感できる 48
この取り組みに社会的意義を感じる 50
この取り組みと企業イメージが合致している 22
この企業に対して興味を持った 5
この企業の製品・サービスに興味を持った 5
この企業に対して好感を持った 27
この企業の今後に期待できる 17
この企業に対する信頼が増した 15
この企業の製品・サービスを利用しようと思う 6

次いで喫煙者と非喫煙者の共存を目指し、「ごみを『ひろう』という体験を通して、『すてない』気持ちを育てたい」という思いから展開した「ひろえば街が好きになる運動」を行っているJTです。お祭りなどの地域のイベントにて開催されており、当日に受付を行い清掃ツールを受け取ることで市民が気軽に参加できます。時には芸能人・著名人が参加するイベントもあるようです。

「この取り組みに社会的意義を感じる」(50%)、「この取り組みの趣旨に共感できる」(48%)などが高く、意義のある活動として捉えられているようです。たばこの害として、ポイ捨てなどによって街の美化が損なわれるという問題が挙げられますが、これは喫煙者の意識、マナー次第で改善できる問題です。利用者と非利用者がはっきりと分かれる製品なだけに、活動を通じて喫煙者の意識の変革に繋げ、非喫煙者からの理解や評価を得ることが、企業活動維持にとって重要なことと言えるのではないでしょうか。

問題飲酒への警告、毅然とした態度で信頼性向上(キリンビール)

(単位:%)
n=100 キリンビール
この取り組みに対して興味を持った 34
この取り組みの趣旨に共感できる 32
この取り組みに社会的意義を感じる 43
この取り組みと企業イメージが合致している 24
この企業に対して興味を持った 12
この企業の製品・サービスに興味を持った 11
この企業に対して好感を持った 28
この企業の今後に期待できる 21
この企業に対する信頼が増した 20
この企業の製品・サービスを利用しようと思う 6

たばこ同様健康との関係が深いお酒。中でも未成年者の飲酒は社会問題にもなっています。キリンビールでは「問題飲酒」として自社のサイトでも大きく扱い、数々の教材も製作・配布しています。中でもアルコールが特に未成年者の脳に与える影響を解説し、日・英・中国語字幕入りDVDも作成するなどしたビデオは財団法人 消費者教育支援センターの平成17年度(第5回)「消費者教育教材資料表彰」優秀賞を受賞しているそうです。

「この取り組みに社会的意義を感じる」(43%)、「この取り組みに対して興味を持った」(34%)、「この取り組みの趣旨に共感できる」(32%)とこちらも社会的意義を評価する結果が出ています。未成年の飲酒は脳や体の成長に著しい影響を及ぼすことから長年社会問題とされてきましたが、問題解決に当たっては周囲からのサポートや啓蒙活動がとても重要となります。地道ではありますが、社会的に重要な意義がある活動と言えるのではないでしょうか。

学校教材を通して食育支援(日本マクドナルド)

(単位:%)
n=100 日本マクドナルド
この取り組みに対して興味を持った 35
この取り組みの趣旨に共感できる 31
この取り組みに社会的意義を感じる 32
この取り組みと企業イメージが合致している 11
この企業に対して興味を持った 13
この企業の製品・サービスに興味を持った 10
この企業に対して好感を持った 25
この企業の今後に期待できる 15
この企業に対する信頼が増した 10
この企業の製品・サービスを利用しようと思う 9

続いては子どもたちにバランスのよい食生活の重要性をアニメやゲームを使いながら楽しく知ってもらう事を目的に開発された小・中学校のための食育教材、「食育の時間」です。NPO法人企業教育研究会の協力を得、株式会社NHKエデュケーショナルとともにコンテンツを作成するなど授業サポート教材として本格的な内容になっているようです。

「この取り組みに対して興味を持った」(35%)、「この取り組みに社会的意義を感じる」(32%)、「この取り組みの趣旨に共感できる」(31%)となっています。もともとこの取り組みは”Balanced, Active Lifestyles”の活動の一環として、バランスのとれた食生活と、運動することによる健康的な生活を応援するための活動とのこと。特にファーストフードには高カロリーメニュー、高塩分など子供の成長や味覚形成に問題があるというイメージがつきまといますが、生活全体という大きな枠を見直してもらうことで、自社商品を選択する機会も作ってもらおうという新たな戦略として捉えることができそうです。

「日本消費者金融協会(JCFA)」を通して消費者啓発・金銭教育支援活動(アコム)

(単位:%)
n=100 アコム
この取り組みに対して興味を持った 35
この取り組みの趣旨に共感できる 26
この取り組みに社会的意義を感じる 36
この取り組みと企業イメージが合致している 12
この企業に対して興味を持った 8
この企業の製品・サービスに興味を持った 3
この企業に対して好感を持った 19
この企業の今後に期待できる 15
この企業に対する信頼が増した 9
この企業の製品・サービスを利用しようと思う 0

最後はアコムの活動です。会社
創業者が発起人の一人として参画したという日本消費者金融協会(JCFA)を通し、「消費者の『保護』や『利益』を図り、消費者金融サービス市場の健全な発展を目的として消費者啓発・金銭教育支援活動の一環として金銭教育教材の製作をおこなっている」というものです。絵本やマンガを図書館などに配布しているということですのでどこかで目にしたことがあるかもしれません。

「この取り組みに社会的意義を感じる」(36%)、「この取り組みに対して興味を持った」(35%)の評価となっており、CSR活動として一定の評価を得ているようです。

CSRの取り組みはどの企業においても好感度、信頼度アップに一定の貢献をしていると言えます。一方で「この企業の製品・サービスを利用しようと思う」割合は低く、CSR活動は企業のイメージアップには貢献するが、必ずしも直接の宣伝効果があるものではないことも読み取れます。

いずれの活動も自社の売上重視、利益追求のみにとらわれることなく、社会と調和し、社会を良くする活動となっています。また各社ともウェブサイトを通じて自社の活動を詳しく紹介しています(JTやマクドナルドには単独サイトもあります)。事柄の性格上、大々的に宣伝するようなものではないかも知れませんが、企業の活動について知りたい人に情報を提供することも立派な社会活動と言えるでしょう。

飲酒、自動車運転、消費者金融など利用者、非利用者がはっきりと分かれている製品・サービスにおいては非利用者にも企業価値を認めてもらい、信頼関係をもつことで存在価値を維持することが重要になると考えられます。そういう意味では非利用者もある種のステークホルダーと言えるでしょう。新英和中辞典でCSR(Corporate Social Responsibility)のR=Responsibilityという単語を見てみると、「責任、責務」の後に「信頼性、確実度」と挙げられています。人々の「期待に応える」活動を行い、されにはそれを告知していく。そういった地道なCSR活動を積み重ねることで広義のステークホルダーと信頼関係を構築することができ、企業の存在価値、ブランド価値まで高めていくことが可能になると言えるのではないでしょうか。

調査概要

全国の20〜59歳男女のインターネットユーザーから回答を得た

サンプル数 100
調査期間 2009年10月27日〜10月28日
調査内容 5社のCSR(企業の社会的責任)に対する取り組みについてイメージを聞いた。
調査対象 5社のCSR(企業の社会的責任)に対する取り組み情報(体験型交通安全イベント(トヨタ自動車)/ひろえば街が好きになる運動(JT)/啓発教材ビデオ「未成年者とアルコール」〜成長期の脳への影響〜 製作・配布(キリンビール)/小・中学校の食育授業をサポート(日本マクドナルド)/金銭教育教材の制作(アコム*「日本消費者金融協会(JCFA)」を通じて)※取り組みの内容については前述の表1を参照)に対し、10のイメージ項目(この取り組みに対して興味を持った/この取り組みの趣旨に共感できる/この取り組みに社会的意義を感じる/この取り組みと企業イメージが合致している/この企業に対して興味を持った/この企業の製品・サービスに興味を持った/この企業に対して好感を持った/この企業の今後に期待できる/この企業に対する信頼が増した/この企業の製品・サービスを利用しようと思う)の中から複数回答式で回答を得た。
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