監査法人の公認会計士や大手証券会社社員、報道関係者によるインサイダー取引が世間を騒がせています。証券取引等監視委員会へのインサイダー取引の情報提供件数は、2003事務年度(03年7月〜04年6月)に282件だったのが、翌04事務年度には510件と大幅に増加、07事務年度も3月までで418件と高めで推移しています。(※事務年度とは、監視委が事務処理のために設定した期間)
不正が目立つ中、個人投資家の創出や育成が課題となっている証券会社や業界に対する、世間の印象は非常に気になるところです。そこで、なんでもランキングでは、一般人の心の内を調査してみました。
インサイダー取引は企業・業界ぐるみ?
【図1】インサイダー取引(単数回答)
まず、「証券会社のインサイダー取引(会社の内部情報を知ったものが、その情報が公開される前にこの会社の株式などを売買すること、金融商品取引法(金商法)で禁止されている)への関与」について聞いたところ、「行っていない」と回答した人は10%。反面何らかの形で「行っている」と考えている人は65%にものぼりました【図1】。
そのうち、「一部の個人が行っている」と答えた人は26%、「一部の企業」「業界全体」で「行っている」と回答した人は、それぞれ18%、21%となりました。約4割の人が会社ぐるみ、業界ぐるみの問題と捉えていることがわかります。インサイダー取引が表面化すると、会社は「個人に限ったこと」と火消しに躍起になりますが、そういった対応に対して一般人の多くが疑いの目で見ていることが伺えます。
過半数が「損失補てんは行っている」
【図2】損失補てん(単数回答)
また、「証券会社の損失補てん(株売買で生じた投資家の損失を証券会社が穴埋めをする行為。金商法により禁止されている)への関与」を尋ねたところ、「行っていない」という回答は14%にとどまり、過半数を超える人が「行っている」と考えていることがわかりました【図2】。「個人」(9%)よりも「企業」(22%)や「業界」(20%)で「行っている」という回答が多く、合わせて4割を超えています。90年代に損失補てんが発覚し、証券各社は再発防止を約束しました。しかし世間の目は10年経った今でも厳しいようです。
「大口優遇」、「我田引水」は業界の体質
【図3】特定の顧客(大口など)にだけ有利な情報を流す(単数回答)
【図4】顧客に特定の銘柄を推奨して、自社が儲ける(単数回答)
一方「特定の顧客(大口など)だけに有利な情報を流すこと」「顧客に特定の銘柄を推奨して自社が儲けること」については、「行っていない」は両項目ともわずかに8%。それに対し、「業界全体で行っている」は、それぞれ32%、36%と高い数値となっています【図3】【図4】。「手数料が稼げる大口機関投資家の優遇」さらには「情報を悪用して自社の利益確保に走ること」は業界の体質であり、「個人投資家はないがしろにされている」と考える一般人が少なくない様子が読み取れます。
約7割が「強引な勧誘はある」
【図5】証券売買を(訪問・電話等で)しつこく勧誘する(単数回答)
「証券売買を(訪問・電話等で)しつこく勧誘すること」について尋ねました。これについては実に7割の人が「行っている」という印象を持っています【図5】。特に「一部の企業で行っている」という回答が約4割となっていることが特徴的といえます。会社によってはいまだに訪問や電話による強引なセールスで客引きをしていると見る人が少なくないようです。
日本の個人金融資産は1400兆円。証券界でもこの活用がよく話題に上ります。それにはまず一般人の株売買に対する不信感を払拭することが必要かもしれません。
調査概要と結果
全国の10代〜50代のインターネットユーザーから回答を得た
サンプル数 | 100 |
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調査期間 | 2008年5月15日〜5月16日 |
調査項目 | 証券会社は以下の行為について、どの程度のレベルで行っていると思いますか Q1損失補てん/Q2インサイダー取引/Q3特定の顧客(大口など)にだけ有利な情報を流す/Q4顧客に特定の銘柄を推奨して、自社が儲ける/Q5証券売買を(訪問・電話等で)しつこく勧誘する |