先般、松下電器産業株式会社は2008年10月をもって社名を「パナソニック株式会社」に変更することを発表しました。同時に、日本国内で、白物家電・住宅設備機器などの生活家電分野で長年使用してきた「National」ブランドの「Panasonic」への切り替えに着手することも発表しました。同社によれば、「National」は2009年度を目処に廃止される予定とのことです。今後は、AV機器など「黒物家電」の印象が強い「Panasonic」ブランドが生活家電分野でも使われることになります。
海外では既に2003年に「Panasonic」を統一ブランドとして展開が進められています。その流れを受けて内外のブランドの一本化図り、「Panasonic」ブランドに総力を結集するのが狙いのようです。
自動車業界では、日産自動車が、北米を中心とした海外での販売モデルで使用していた「ダットサン(DATSUN)」ブランドを、「ニッサン(NISSAN)」に統一しようと試み、定着するまで長い年月を要したという先例があります。
では、「Panasonic」というブランド名は従来と異なる分野で消費者に対しどのような印象を与え、どのような変遷を辿るのでしょうか。何でもランキングでは、各製品へのユーザーの馴染み度を、変更半年前、変更後に分けて調査し、その結果を分析。ユーザー心理の移り変わりとその背景を探ってみることにしました。今回の調査レポートはその第1回(変更半年前)となります。
対象製品は、カテゴリー別に以下のものを選出しました。
質問では、各製品の前に「Panasonicの」と付けたときの印象を、「非常に馴染める」場合を「5」、「全く馴染めない」場合を「−5」とし、10段階でそれぞれの馴染み度を答えてもらいました。集計した数値に対しては、5〜−5を重みとして加重平均し、スコアを算出しました。
馴染み度が最も高いのが「照明器具」、最も低いのが「洗濯機」
調査の結果、最も馴染み度が高いものは「Panasonicの照明器具」で、スコアは262ポイント(Pt)となりました。以下は、「Panasonicのエアコン」(171Pt)、「Panasonicのドライヤー」(165Pt)、「Panasonicの冷蔵庫」(133Pt)、「Panasonicの洗濯機」(117Pt)となっています【図1】。
スコアの低かった洗濯機や冷蔵庫に比べ、照明器具は高い数値となっています。
【図1】各製品に「Panasonic」と付けたときの馴染み度(スコア)
若い世代に「Panasonicの生活家電」に対する抵抗感
年代別でも検証してみました。20〜30代では、40〜50代に比べて、照明器具やドライヤーではスコアが高いものの、冷蔵庫、洗濯機では極端に低くなっています【グラフ2】。若い世代の間では、「Panasonic」がAV機器関連のブランドとして強くイメージ付けされ、生活家電に使用されることへの違和感が強いことがうかがえます。それに対し、40〜50代では生活家電でも比較的馴染み度が高い傾向となっています。中高年にとって、「National」は慣れ親しんだブランドであるはずです。しかし、調査では若者よりブランド名の変更に対して柔軟であることが垣間見え、これは意外な結果であるといえます。
【図2】年代別の馴染み度(スコア)
主な使い手となる女性の方が、馴染み度が低い傾向
男女別で見ると、女性の方が男性よりも、生活家電のPanasonicブランド化に対する違和感が高いことが伺えます【図3】。男女差が顕著に見られた製品が、エアコン、冷蔵庫、洗濯機。いずれも家電の代表選手として日本の家庭にあまねく普及してきた製品です。その主な使い手となる女性の馴染み度を向上させることが、当面の課題といえそうです。
【図3】男女別の馴染み度(スコア)
今回の調査からは、馴染みのブランドがなくなり別ブランドとなることに、戸惑いを覚える消費者は少なくないということが見えてきました。家事や調理といったカテゴリーの、日常生活で触れる機会が多いものほど、その傾向は強くなるようです。今後、メーカーの活動により、どのように消費者心理が変化するか、注目したいところです。
※スコアは5〜-5をそのまま重みとし、加重平均をポイントとして算出したもの
調査概要
サンプル数 | 100s |
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調査期間 | 2008年4月2日(水)〜4月3日(木) |
調査対象 | 全国のインターネットユーザー(20歳以上/男女)から回答を得た |
質問項目 |
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