今回は、牛乳のブランドイメージにスポットを当ててみました。まず、牛乳メーカー各社のイメージ9項目を消費者アンケートで把握しました。次に、コレスポンデンス分析を用いてこれらのイメージを3つに分類したところ、下記の表のような結果となりました(単位:ポイント)。グループ分けの方法については後述の調査概要をご参照下さい。
【表1】牛乳のブランドイメージ
健康志向は農協がいちばん
【表2】健康志向ランキング
「健康志向」というイメージは「新鮮」「安全」「ヘルシーだ」「ナチュラルだ」の4つのイメージからなります。ここでのトップは農協となりました。特に、「安全」に関しては37ポイントという高い数字で、メーカー別でも、カテゴリーの中でもトップの値となりました。「安全」のイメージは次いで明治が34ポイントと高く、それに森永の28ポイントが続きます。あいにく、雪印は最下位となりました。人々からまだ事件の記憶が消えていないのでしょうか。農協は、「新鮮」「ヘルシーだ」「ナチュラルだ」の項目でも高い数値で、食の安全性が注目を集めている昨今、消費者の心をつかむキーワードをしっかり押えていると言えるでしょう。
高級志向なら小岩井
【表3】高級志向ランキング
「高級志向」のイメージは「味が濃い」「高級」のイメージからなります。このカテゴリーで、他のメーカーを大きく引き離しトップに立ったのは小岩井です。「高級」では47ポイントと高く、「味が濃い」でも25ポイントを獲得しています。合計点では他社を50ポイント以上も引き離す圧勝ぶりです。小岩井は明治時代に鉄道庁長官の井上勝、三菱社社長の岩崎彌之助、日本鉄道会社副社長の小野義真が共同で作った牧場が始まりです。こうした由来が商品作りの伝統となって受け継がれているのかもしれません。価格の面でも小岩井の商品は200円台後半で販売しているケースが多く、スーパーで販売している牛乳の中では高級な部類に入るのではないでしょうか。
明治は庶民派
【表4】庶民派ランキング
「庶民派」イメージは「パッケージが良い」「おいしい」「リーズナブル」といった主に「親しみやすさ」に関わるイメージからなります。ここでのトップは明治でした。特に「おいしい」では、46ポイントと高得点。森永も36ポイントと1位の明治を10ポイントほど下回るものの、健闘しています。両メーカーとも、「おいしい牛乳」という商品を出していることも影響しているのかもしれません。だとすれば、非常に良いネーミングだったと言えそうです。「おいしい」は次いで小岩井の27ポイント。また、「リーズナブル」では森永が首位で20ポイント、農協、雪印が19ポイントで同位、明治は17ポイントでした。また、「パッケージが良い」はおしなべて低い値になっており、消費者の関心は低いのかもしれません。数年前、グラフィックデザイナーの佐藤卓氏が明治の「おいしい牛乳」のパッケージをスタイリッシュに仕上げ、牛乳といえば牧場を背景に牛がのん気そうに寝そべっているパッケージというイメージに革新の一石を投じたこともあったのですが……。
成分、味、パッケージの形状、どれも似たような牛乳。他社との派手な差別化は不可能ですが、今回のアンケートから、消費者は、各メーカーに対する明確なイメージを持っているということがわかりました。各メーカーのブランディングへの地道な努力は成功していると言えるのではないでしょうか。
調査概要と結果
全国のインターネットユーザーから回答を得た
サンプル数 | 100 |
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調査期間 | 2007年8月10日(金)〜8月11日(土) |
調査対象 | 明治、森永、雪印、農協、小岩井 |
調査項目 (イメージ) |
新鮮、安全、高級、リーズナブル、おいしい、味が濃い、ヘルシーだ、ナチュラルだ、パッケージが良い |
イメージの分類と ランキング方法 |
各社ごとのイメージをコレスポンデンス分析により3グループに分類。グループに適した名前をつけ、イメージ(%)を合計して高い方から順位を付けた。イメージのグルーピング結果は以下のようになった。距離が近いほどイメージが似ていることを意味する。 |
【図5】牛乳のブランドイメージのグルーピング結果
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